
男子U23日本代表「初の世界制覇」を振り返る
2017年/当時 ″中学3年生″ から日本代表入りし、
「成長の階段」を上がる永吉飛斗(左)、八木孔輝(右)。
豊富な国際経験を活かして、チームを「牽引」してくれた
名だたる世界一線級投手と対峙・対戦!
″元・男子TOP日本代表″ 中村健二ヘッドコーチにも
今大会の「収穫・課題」について、じっくり話を伺った
世界のトップを見据えたトレーニングを継続して!
打撃は、コンパクトなスイングで狙い球を仕留める
意識・技術をもっと向上させたい
ピッチングは、球速・球威を追い求めるだけでなく
制球力・投球術を確立する「原点」に立ち返って…
日本の強みである「スピード」「技術の高さ」を体現!
攻守で ″キーマン″ となり、躍進に貢献した安形恭悟
スタッフも一丸となり、全力で選手をサポートした
ここがゴールではない。まだまだ挑戦・進化を続けて!
「勝者のメンタリティ」で、次なるステージへ進もう !!
去る4月25日~5月3日、コロンビア・シンセレホを舞台に「WBSC第2回男子U23ワールドカップ」が開催され、男子U23日本代表チームが見事「初優勝」。
世界の名だたる好投手が揃う ″ハイレベル″ な激戦を勝ち抜き、頂点へ! その快挙、堂々たる戦いぶりは、まさに日本男子ソフトボールの「希望の光」となるものであった。
ここでは、男子U23日本代表「初の世界制覇」を振り返りながら、次の3つのキーワード/「近年見られるジュニア世代の躍進」「実体験の積み重ねこそ、重要」「さらなる高みをめざして」を重点的に総括・展望したい。
今大会には、各大陸予選を勝ち抜いた11チーム(アジア・オセアニア:日本、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド ヨーロッパ:チェコ、デンマーク 北中南米:ベネズエラ、アルゼンチン、カナダ、メキシコ アフリカ:南アフリカ)に開催国・コロンビアを加えた合計12チームが出場。
2023年の記念すべき第1回大会で惜しくも準優勝。 ″初の栄冠奪取″ に燃える男子U23日本代表は、オープニングラウンド(予選リーグ)グループAを4勝1敗(チェコに11-3、アルゼンチンに2-3、南アフリカに14-0、ニュージーランドに3-1、コロンビアに20-0)の1位通過。スーパーラウンド(2次リーグ)を4勝1敗(オーストラリアに5-6で敗れたが、ベネズエラに1-0、メキシコに2-1で勝利。オープニングラウンド同グループ・チェコ戦、ニュージーランド戦の勝利を持ち越し、4勝1敗)の2位で終え、最終日・ワールドチャンピオンシップファイナル(優勝決定戦)で「スーパーラウンド1位」オーストラリアと「再戦」。
チャンピオンシップファイナルでは、「世界No.1サウスポー」「難攻不落」のジャック・ベスグローブに打線が食らいつき、狙い球を絞る「コンパクトなスイング」で7安打! 4点を先行!! 最終スコア4-2で勝利をつかみ、見事リベンジ。「初の世界一」に輝いた!
なお、大会終了後の5月14日、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)が「男子ソフトボール」における「最新世界ランキング」を発表。
今回の「U23ワールドカップ初優勝」により、日本が世界ランキングポイントを大きく上積み。2位・ベネズエラに331ポイント差をつけ、「1位」の座を堅守する形となった。
U18からU23、そしてTOPへ
男子U23日本代表「初の快挙」を機に、日本男子ソフトボールの強化カテゴリー(U18・U23・TOP)全体を見渡してみると、近年の「ジュニア世代躍進」は文字通り「顕著」なものと言い表すことができる。
少しさかのぼりはするが、2016年第11回世界男子ジュニア選手権大会でのU19日本代表「35年ぶりの優勝・世界一」(※大会の詳細はこちら)が「転機」となり、続く2018世界ジュニア選手権は準優勝(※大会の詳細はこちら)。2020U18ワールドカップ(※U19世界選手権から年齢区分・大会名称を変更)では見事「全勝優勝」(※大会の詳細はこちら)を飾り、王座奪還! 2023U18ワールドカップも開催国・メキシコとの「激闘」「死闘」を制し、「連覇」達成(※大会の詳細はこちら)!! U19世界選手権の時代を含め、ジュニアカテゴリーではこれまで「4度」世界の頂点へ登り詰めている。
そこから「ステップアップ」した選手たちを主力とした「U23日本代表チーム」は、2023年アルゼンチン・パラナで開催された第1回U23ワールドカップに出場。オープニングラウンド(予選リーグ)・スーパーラウンド(2次リーグ)を通じて僅か1敗(スーパーラウンド3戦目/アルゼンチン戦に延長9回タイブレークの末、0-1で惜敗したのみ)と快進撃を見せ、決勝でオーストラリアと ″初代チャンピオン″ の座をかけ、激突。前年(2022年)TOPカテゴリーのワールドカップを制覇、弱冠19歳で優勝投手となり、世界一の称号を手にしていたジャック・ベスグローブに果敢に挑んだが……0-1の悔しい完封負け(※大会の詳細はこちら)。しかし、この「経験」が第2回大会で生き(選手・チームの成長とともにブラッシュアップされ)、最後「ジャック・ベスグローブとの2度目の対戦」で「世界を驚かす」大金星! U23カテゴリーにおける「ワールドカップ初優勝」の快挙へと結実した。
「第2回U23ワールドカップ優勝メンバー」にはU18カテゴリーから続けて日本代表入りした選手が8名(※阿曽慣太、高橋理央、八木孔輝、上野結来、永吉飛斗、山本陸人、大野流畏斗、津田龍輝)おり、U18ワールドカップ → U23ワールドカップと両大会で「世界一」に。この貴重な「国際経験」は彼らにとってまさに「財産」であり、日本男子ソフトボールの未来を照らす「希望の光」といえる(※『頼れるキャプテン』としてチームを牽引した永吉飛斗、初戦・チェコ戦で3打席連続ホームランを叩き込む離れ業をやってのけた『投打二刀流』八木孔輝は、2017年/中学3年生から日本代表に名を連ねており(2017年第6回アジア男子ジュニア選手権大会に臨むチーム編成で、日本ソフトボール協会選手強化本部会はその対象となるカテゴリー:U19ではなく、あえて一つ下のカテゴリーである中学3年生を対象に日本代表チームを結成。これまで中学生を対象とした国際大会が開催されていないこともあって、将来有望な中学生選手の新たな目標を創出するという狙いも含め、初の試みに踏み切った)、その後、2020U18ワールドカップで初の世界制覇/八木孔輝が優勝投手、永吉飛斗は大会MVPに輝く、2023U23ワールドカップでは惜しくも優勝を逃したが、八木孔輝が決勝戦の先発投手に起用される等、着実に『成長の階段』を上がり、今日に至っている)。
次なる目標は、この大きな成果を「TOPカテゴリー」につなげ、日本男子ソフトボールが未だ到達したことのない「真の世界一」(TOPカテゴリーでのワールドカップファイナル優勝)へ駆け上がること。
まだまだ成長・進化の途中……次代を担う若き才能の ″これから″ に期待したい。
″世界一線級″ との対峙・対戦。
「実体験」の積み重ねこそ、重要!
前述のように、ジュニア世代からの継続した選手強化が実を結び、勝ち得た「U23ワールドカップ初優勝」。強化の継続性に加えて「今後、日本男子ソフトボールに必要なもの」とは何か、改めて考えてみる。
まずもって重要になるのは、 ″世界のトップオブトップ″ と対峙・対戦した経験、走攻守すべてにおける「リアルな実体験」の積み重ねだ。
特に今回は、ジャック・ベスグローブ(オーストラリア代表/2022ワールドカップ・2023U23ワールドカップ優勝)、リアム・ポッツ(ニュージーランド代表/2025ワールドカップ準優勝・2025世界最優秀選手に選出)、カルロス・パラ(メキシコ代表/2023U18ワールドカップ準優勝)といった「名だたる世界一線級投手」が参戦。日本はオープニングラウンド4戦目でニュージーランド、スーパーラウンド最終戦でメキシコと対戦、オーストラリアとはスーパーラウンド初戦・優勝決定戦と二度相まみえ、その「大舞台における真剣勝負の数々」がチームのレベル(限界値)を引き上げてくれた。
打撃面は、世界トップレベルの投手が投げ込む「球速135㎞/h超」「切れ味・変化量抜群」のライズ・ドロップにどう対応するかがカギとされ、特に「前回優勝投手」「世界一の左腕」と評されるジャック・ベスグローブを攻略するための「対策」が大きな注目ポイントに。
投手陣も、「パワーソフトボール」(力勝負を重視するスタイル)を大の得意とする海外の強打者にいかにして挑むか!? 世界の頂点を競うレベルを勝ち抜いていける、真の「力量」「センス」が求められる大会となった。
日本に帰国した後、今回「男子U23日本代表チームが得た収穫・課題」について中村健二ヘッドコーチにロングインタビュー。
中村ヘッドコーチは「第一にジャック・ベスグローブやカルロス・パラ、リアム・ポッツといった『世界一線級の投手』を向こうに回し、『勝利した!』という事実、『経験』が非常に大きいですし、彼らの『財産』になったことと思います。直接肌で感じたリアルなトップレベル、世界のトップオブトップとの対峙・対戦の連続は、個人さらにはチーム全体の成長につながりましたし、今後、日本代表として世界に挑み続ける中で必ず活かされる! そう、強く感じます」とまず率直な想いをコメント。
「技術的な部分を言うなら、打撃では先に挙げた世界的ビッグネームと本気の勝負を重ねたことでシンプルに『意識・技術』が向上しました。特にジャック・ベスグローブのライズ、カルロス・パラのドロップ、言わば ″これぞ、世界トップレベル″ ″本物のライズ・ドロップ″ を体感し、その攻略に正面から向き合った。通常の感覚(日頃、日本人投手と対戦するイメージ)のまま挑んでも到底太刀打ちできないことを痛感したと思いますし、そういった中で自らが『やるべきこと・やらなければならないこと』を考え、理解し、体得していきました。真の意味での『世界基準』が選手たちに植え付けられ、『日本代表として、世界で勝つ!』ための指標が定まった。それこそが、一番の収穫ではないでしょうか」と続け、国際舞台で不可欠となる要素(国際大会仕様の打撃・ピッチング)についても言及。
「引き続き取り組むべき『課題』として、打撃(ライズ打ち)の再考・改善、投手における制球力・投球術の確立があります。それぞれ掘り下げるとするなら、世界一線級の投手を相手にしたときの『ライズ打ち』は ″ボールの上がり際をかちあげる″ ではなく、いかにボールの軌道にバットを入れ、インパクトで上手くヘッドをかぶせるか。 ″かちあげる″ とは逆に、ボールをはたくようなイメージ・技術が必要になります。これは実際打席に立ち、肌で『世界レベル』を体感しないとなかなか分かり得ない境地で、先に述べた『実体験の積み重ね』が重要になる。ジャック・ベスグローブのハイライズを想像してもらえればと思いますが、あの、顔のあたりまで吹き上がってくる切れ味・変化量抜群のライズを ″かちあげる″ ことなどできない。打てる(当たる)とすればローライズなのですが、そもそもレベルが違うので……初見での対応は厳しいものがあります。やはり『対戦経験』を増やし、目慣れすること、そして現実的な攻略法を身体で覚えていくしかありません。決勝戦前に行ったライズ限定の打ち込みでも徹底しましたが、自分がイメージするライズの軌道の『さらに上』を『叩く』もしくは『かぶせる』意識(ドロップ打ちは、逆に球が落ち切ったところをすくい上げるイメージ)で打ちにいくこと。それぐらい極端にいって、ようやく当たる『まさに、ハイレベル』ですから……世界のトップを見据えた打撃トレーニングを日本代表の強化として継続させなければなりません。また、投手における制球力・投球術の確立は、本来『日本の特徴・強み』だったはずで、私としては『原点回帰』を望みます。 ″日本男子ソフトボールの今″ に目を向けてみても、年々 ″力勝負重視″ の傾向にある。日本国内では球速120㎞/h後半~130㎞/h超で速い投手に分類されますが、世界の現状はそうではない。今や140㎞/h超の異次元の領域に突入しています。球速・球威で優位に立つ ″相手の土俵″ で勝負していては、どうしても分が悪い。海外の打者が嫌がることとは何かを……もう一度分析・整理する必要があると思っています。昨年TOPカテゴリーのワールドカップ・ワールドゲームズで池田空生投手が好投しましたが、彼は ″球のスピード″ で勝負していたわけではありませんでした。得意のライズボールで押しつつも、そのライズの高さから打者の膝元へ絶妙に落とすドロップを効果的に使い、上手く振らせていた(打者に的を絞らせなかった)。ライズボールに強い海外の打者の特徴を逆手にとる『クレバー』さ、確かな『制球力・投球術』を有していたことが上位進出につながったと私は見ています。今大会のアルゼンチン戦(高橋理央が7回表ツーアウト・あと一人のところで逆転ツーランを浴びた)がそうであったように、 ″力に頼った一本調子のピッチング″ はいずれつかまる。相手打者のしぐさや構え(フォーム)、スイング軌道をよく見て、何を狙っているのか『察知』『予測』すること。その上でこちらが先手を切る『駆け引き巧みなソフトボール』をもっと学び、磨いていかなければいけません」と要点を解説。
自らも「男子TOP日本代表」として、世界選手権(現・ワールドカップ)に2009年・2013年・2015年と3大会連続出場。「投打二刀流」でチャレンジし続けた中村健二ヘッドコーチならではの視点で、熱く語ってくれた。
現代においては、SNSを通じて ″世界のソフトボール″ を手軽に、身近に、感じることができるようになった。そこで見たトップ選手に憧れを抱き、プレーを真似たり(取り入れたり)、海外武者修行に出向く若者も少なくない。
「実体験の積み重ねこそ、重要!」そうテーマを掲げたように、まずは各々が身を持って「世界レベル・世界基準」を知り、「経験値」を増やしていくこと。トップオブトップとの対戦感覚を日常的にすることを最優先する考え方自体に、間違いはない。
だが、単純に ″慣れればいい″ (海外のスタイルをそのままコピーすれば勝てる)というわけではない「難しさ」も隣り合わせにあることを……心得ておいてほしい。
世界トップレベルで揉まれ、自らを磨き、高める、それを継続することにより、本当の意味でシビアな環境への対応力・適応力が身につく……これは確かである。しかし、「慣れること」と「勝つための戦術・采配」はまた別の話。中村ヘッドコーチがインタビューの後半で問題提起した「JAPANクオリティ・JAPANオリジナルの復活」を踏まえ、日本男子ソフトボールの今後の強化のあり方を再度じっくり議論してみてはどうだろうか。
U18、U23と若い世代が世界の舞台で輝かしい実績を積み上げてくれてはいるが、「日本はこうあるべき!」「こうすれば、世界で勝てる!!」という明確な答えには……まだ辿り着いていない。
選手たちのさらなる成長・進化を期待する一方で、我々も引き続き「長年の難題」と向き合っていく必要がある。
勝者のメンタリティを持って、未来へ !!
″日本が世界で勝つために何をすべきか″ 技術・方法論をクローズアップしてきたが、U23ワールドカップを制した彼らには、他の何にも代え難い強み = 「勝者のメンタリティ」が備わった。
ニュージーランドのリアム・ポッツ、メキシコのカルロス・パラ、オーストラリアのジャック・ベスグローブ。これら名だたる世界一線級投手をすべて打ち破ったのは、「U23日本代表チーム」だけである。
いくら知識、理屈を並べても……世界トップの境地は「実際、頂点を極めた者」にしか分からない。
TOP・U23両カテゴリーのワールドカップですでに世界一となっている、あのジャック・ベスグローブが ″攻略されることはない″ ″負けることなどありえない″ と予想される中で「勝利し、優勝をつかんでみせた!」のは「日本しかいない」のだ。
一つ目のキーワード/近年見られるジュニア世代の躍進で、U18ワールドカップ → U23ワールドカップと続けてチャンピオンになった8名(※阿曽慣太、高橋理央、八木孔輝、上野結来、永吉飛斗、山本陸人、大野流畏斗、津田龍輝)の名前を挙げたが、その道のりはまさしく「金メダルロード」。「ワールドカップ王者であり続ける」彼らは「唯一無二」の存在であり、日本男子ソフトボールの「宝」といっても過言ではないだろう。
本気のジャック・ベスグローブを倒し、世界の頂点に立った
この実体験をした選手たちが日本男子ソフトボールに存在しているということ。それはとてつもなく大きい。
「勝者のメンタリティ」を得た彼らが次のステージでも世界一となるために、何を、どう、プラスアルファしていくか。「TOPカテゴリーでワールドチャンピオンになる」その最終目標を日本男子ソフトボール(U18・U23・TOP)全体で「共有」し、方策を考え、語り合い、具体的なアクションに着手していけるかどうかが……勝負だ。
U18・U23に見る世界的躍進。今の日本男子ソフトボールには、こうして ″トップを獲るための土台″ がしっかりある。昨年TOP日本代表がワールドカップ4位・ワールドゲームズ優勝(※アメリカと同時優勝)の好成績を収めてくれたことを含め、悲願達成へ再び「チャンス」が到来しているといっていい。
その追い風を、千載一遇の機会を……今度は逃してはならない!
「U23ワールドカップ優勝」を「TOPカテゴリー初の世界制覇」(単独優勝)へ昇華させること。
2026男子U23日本代表チームが成し遂げた快挙を心から祝福し、 ″次なるミッション″ へと舵を切ろうではないか。
●文・写真
男子U23日本代表チーム
選手団広報/竹﨑 治(日本体育社)