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北京オリンピック 第10日
中国・北京/豊台ソフトボール場(2008.8.21)


日本、「史上最強」の王者・アメリカを倒す!
悲願のオリンピック金メダル獲得!!



 8月21日(木)、前日、実に21イニングにわたる激闘を勝ち抜き、ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)に辿り着いた日本は、世界選手権6連覇、オリンピック3大会連続の金メダルの「史上最強」の王者・アメリカと再戦した。


8月21日(木)/決勝トーナメント優勝決定戦(ゴールドメダルゲーム)

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日  本 0 0 1 1 0 0 1 3
 アメリカ 0 0 0 1 0 0 0 1





(日)○上野(7回)−峰(7回)
(ア)●オスターマン(5回)・アボット(2回)−ヌーベマン(7回)
〔本塁打〕山田(日)ブストス(ア)
〔二塁打〕三科(日)

 先攻の日本は初回、1番・狩野、2番・西山、3番・山田が三者連続三振。今まで何度も見せつけられてきたアメリカの「「エース」オスターマンの「奪三振ショー」で試合がはじまった。
 日本の先発は、こちらも「エース」上野。昨日のアメリカ戦、オーストラリア戦を連投。しかも延長9回、延長12回と2試合連続の延長戦、3試合分にあたる21イニングを投げ抜き、300球を超える「熱投」を続けた「エース」を、このファイナルでも3連投で起用した。
 さすがの上野も連投の疲れか、立ち上がりの球の走りは今一つ。1番・ワトリー、2番・ローの連続内野安打で無死一・二塁のピンチを招くと、3番・メンドーザは火の出るような当たりのショートゴロ。これを名手・西山が捌き、三塁フォースアウト。4番・ブストスはセカンドゴロに打ち取ったかに見えたが、セカンド・三科が間に合わない二塁へ送球し、オールセーフ。一死満塁の絶体絶命のピンチを迎えたが、ここで簡単に崩れないのが「世界一の投手」上野の真骨頂。5番・クレッチマンをセカンドゴロ、6番・デュランをキャッチャーファウルフライに打ち取り、ピンチを脱した。
 一方、日本はアメリカの「エース」オスターマンの前に、2回まで打者6人で5三振を奪われていたが、3回表、この回先頭の7番・三科がレフトフェンス直撃の二塁打。ここまで予選リーグ7試合、決勝トーナメント2試合の計9試合で21打数ノーヒットと不振を極めていた三科が、日本の「天敵」ともいうべき、オスターマン攻略の突破口を開いた。続く8番・峰はキッチリと送りバント。一死三塁とし、9番・藤本は三振に倒れたが、1番・狩野が三遊間へ高いバウンドのゴロを転がし、快足を飛ばして内野安打。日本が待望の先取点をもぎ取った。これで勢いに乗った日本は、続く4回表、この回先頭の3番・山田がセンタースタンドへ突き刺す、値千金のソロホームラン。貴重な追加点を挙げた。
 しかし、「史上最強」の王者・アメリカも黙ってはいない。今大会すでに5本のホームランを放っている「主砲」ブストスが右中間へソロホームラン。完全に泳がされ、アウトコースを片手で拾っただけのバッティングに見えたが、その驚異的なパワーでスタンド中段まで運び、反撃の狼煙を上げた。6回裏には、2番・ローが一・二塁間を破り、3番・メンドーザが手堅く送り、一死二塁。ここで日本ベンチは今大会当たりに当たっている4番・ブストスを故意四球(Intentional Walk)で歩かせ、一・二塁。5番・クレッチマンにも四球を与え、一死満塁のピンチを招いたが、6番・デュランをショートフライ、7番・ヌーベマンをセカンドフライに打ち取り、ピンチを切り抜けた。
 日本は7回表、6回からリリーフしたアボットを攻め、この回先頭の6番・廣瀬が三遊間を鋭く破る安打で出塁。7番・三科の送りバントは二塁フォースアウトかと思われたが、ショート・ワトリーがまさかの落球。8番・峰のバスターがアボットの足を直撃する当たりとなり、峰は一塁でアウトになったものの、それぞれ進塁し、二・三塁とチャンスを広げると、9番・藤本のところでヒットエンドランを敢行。藤本が倒れ込むような形で必死にバットに当て、三塁走者・廣瀬がホームイン。再び2点差にリードを広げた。
 王者・アメリカも最後まで粘る。その裏、代打・ガリンドーがセンター前にはじき返し、無死一塁。9番・フラワーズの三塁側のフェンスギリギリに上がったファウルフライをショート・西山が好捕すれば、1番・ワトリーの三塁線を襲う痛烈なライナーをサード・廣瀬が驚異的な反応でナイスキャッチ。最後は「エース」上野が最後の力を振り絞って、2番・ローをサードゴロに打ち取り、日本がアメリカのオリンピック4連覇を阻止し、悲願の「金メダル」を獲得した。
 金メダル獲得の立役者は何といっても、「世界一の投手」上野。特に決勝トーナメントの3試合すべてを一人で投げ抜いた「熱投」は観る者の心をも熱くした。この金メダルは、神様が彼女のあまりの頑張りを見て、プレゼントしてくれたものではないかとすら思えてくる。「まっすぐにこだわりたい」と言いながらも、ただひたすら自慢の快速球を投げ込むだけでなく、必要に応じて変化球も交え、緩急も使い、相手打線を抑え続けた。また、この試合では今大会当たりに当たっているアメリカの「主砲」ブストスとの勝負を避け、故意四球(Intentional Walk)で歩かせるなど、チームの勝利を優先させ、金メダル獲得のための最善策を選択する冷静さも見せた。
 また、決勝トーナメントの初戦では、「エース」上野の力投に応えられなかった打線も奮起。先制点はまさに「日本らしく」、三科の二塁打からつかんだ千歳一隅のチャンスを「足」を生かした攻撃でモノにした。2点目となった山田のホームランは、アメリカの「エース」オスターマンを徹底的に研究し、球種によって微妙に異なる投球時の癖、配球パターンなどを分析した結果を生かし、ライズを読み切っての「狙い撃ち」のホームランだった。3点目は相手のミスにもつけ込み、ヒットエランドランを決めるなど、「日本のらしく」得点を重ねた。
 守備でも、初回の無死一・二塁で3番・メンドーザが放った強烈なショートゴロが少しでもどちらかにズレていれば、簡単に先取点を奪われ、一方的な展開になっていた可能性もあったが、ショート・西山が身体を張った守備で三塁フォースアウト。最終回の一死一塁から1番・ワトリーが放った三塁線を襲う痛烈なライナーも、これが抜けていたら、逆転負けにつながる可能性もあったが、サード・廣瀬が驚異的な反応で好捕。まさに「日本のよさ」を生かし、「チーム一丸」となった戦いで勝ち取った「金メダル」であった。
 団体競技では、1976年のモントリオールオリンピックの女子バレー以来32年ぶりとなる金メダル。2012年のロンドンオリンピックでは実施競技から除外されることが決定しており、2016年の競技復活をめざして懸命の努力を続けてはいるが、現時点では「次」の機会がいつ与えられるのか約束されてはいない。それだけに……この北京では勝たなければならなかったし、「勝つこと」「金メダルを獲ること」だけにこだわった。
 しかし、結果的には、その「勝利へのこだわり」「金メダルへのこだわり」が勝負への「執念」を呼び、「絶対に負けない」という勝利への執着心が、数々の「ドラマ」を生むことになった。「エース」上野を中心としたその戦いは、観る者の心を揺り動かし、ソフトボールという競技が持つ「真の魅力」と「面白さ」を、日本中に、いや世界中に、発信してくれた。
 一つの「物語」のエンディングは、「金メダル獲得」という最高の形で幕を閉じた。しかし……これで「最後」にしていいはずがない。この「物語」の「続編」を必ずや紡いでいかなくてはならない。
 この北京オリンピックで見せた「女子日本代表」の戦いの日々。これを見てくれた人であれば、ソフトボールがオリンピックという舞台で行われるのにふさわしい競技であることをわかってくれたはずである。ソフトボールという競技が持つ魅力、面白さを再認識してくれたはずである。この「金メダル」を「オリンピック競技復活」の追い風にしなければならない。選手たちはグラウンド上で「最高の結果」を出した。今度は私たちがその「想い」に応えなければ……。「Back Softball」必ずやそれを成し遂げなければならない。

 
北京オリンピック  決勝トーナメント優勝決定戦(ゴールドメダルゲーム)
アメリカ戦スターティングラインアップ

1番・ライト    狩野亜由美(豊田自動織機)
2番・ショート   西山  麗(日立ソフトウェア)
3番・センター   山田 恵里(日立ソフトウェア)
4番・レフト    馬渕 智子(日立ソフトウェア)
5番・ファースト  佐藤 理恵(レオパレス21)
6番・サード    廣瀬  芽(太陽誘電)
7番・セカンド   三科 真澄(ルネサス高崎)
8番・キャッチャー 峰  幸代(ルネサス高崎)
9番・DP     藤本 索子(レオパレス21)
DEFO/ピッチャー 上野由岐子(ルネサス高崎)

※選手交代なし



第29回オリンピック競技大会(2008/北京) ソフトボール競技 予選リーグ戦績表

予選リーグ第7日終了現在
(戦績表はその日の最終試合が終了次第、更新します)

チーム名 日本 アメリカ オースト
ラリア
中国 カナダ ベネズエラ 台湾 オランダ 順位
日本 ── ●0─7 ○4─3 ○3─0 ○6─0 ○5─2 ○2─1 ○3─0 6 1 2
アメリカ ○7─0 ── ○3─0 ○9─0 ○8─1 ○11─0 ○7─0 ○8─0 7 0 1
オーストラリア ●3─4 ●0─3 ── ○3─1 ○4─0 ○9─2 ○3─1 ○8─0 5 2 3
中国 ●0─3 ●0─9 ●1─3 ── ●0─1 ○7─1 ●1─2 ○10─2 2 5 6
カナダ ●0─6 ●1─8 ●0─4 ○1─0 ── ●0─2 ○6─1 ○9─2 3 4 4
ベネズエラ ●2─5 ●0─11 ●2─9 ●1─7 ○2─0 ── ●0─3 ○8─0 2 5 7
台湾 ●1─2 ●0─7 ●1─3 ○2─1 ●1─6 ○3─0 ── ●2─4 2 5 5
オランダ ●0─3 ●0─8 ●0─8 ●2─10 ●2─9 ●0─8 ○4─2 ── 1 6 8

※5〜7位は同率チーム同士の勝敗で順位を決定(台湾2勝、中国1勝1敗、ベネズエラ2敗のため、5位・台湾、6位・中国、7位・ベネズエラとなる)


第29回オリンピック競技大会(2008/北京) ソフトボール競技 決勝トーナメント



金メダル  日本
銀メダル  アメリカ
銅メダル  オーストラリア





 
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