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日立マクセル vs ペヤング
初回、マクセルが高崎のタイムリーで先制!
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日立マクセル vs ペヤング
2回裏、マクセルが2点目を挙げる
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日立マクセル vs ペヤング
リーグ加盟1年目で「旋風」を巻き起こした
ペヤング。敗れはしたが見事な戦いだった
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靜甲 vs ドリーム・ワールド
序盤は靜甲が積極的に攻め、有利に試合を進めた
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靜甲 vs ドリーム・ワールド
ドリーム・ワールドは4回裏、谷口のタイムリーで
2−2の同点に追いつき、試合を振り出しに戻した
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靜甲 vs ドリーム・ワールド
試合終了の瞬間、大事な一戦に勝利し、喜ぶ
靜甲・鈴木麻美(左)、計盛志津子(右)
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準決勝 日立マクセル vs ドリーム・ワールド
序盤はマクセルが攻勢に出て、有利に試合を進めた
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準決勝 日立マクセル vs ドリーム・ワールド
土壇場の7回表、ドリーム・ワールドは谷口が同点の
ソロホームランを放ち、延長タイブレーカーに突入!
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準決勝 日立マクセル vs ドリーム・ワールド
延長8回裏、マクセルは一死二・三塁からサードゴロで
三塁走者が本塁突入。送球が走者に当たり、サヨナラ
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決勝 靜甲 vs 日立マクセル
マクセルのエース・呂は3試合・22イニングを
すべて一人で投げ抜き、409球を投じる力投
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決勝 靜甲 vs 日立マクセル
先制のタイムリーをはなった靜甲・萩藤。
キャプテンの「意地」が勝利を呼び込んだ
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決勝 靜甲 vs 日立マクセル
「1部昇格」ではなく「1部復帰」と書いた靜甲。
その意気やよし! 1部に「新風」を吹き込め!!
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初の順位決定プレイオフを制し、靜甲が1部昇格
準優勝の日立マクセルが入替戦へ
初の試みとなる「第43回日本女子ソフトボール2部リーグ順位決定プレイオフ」が、10月23日(土)・24日(日)の両日、静岡県伊豆市・天城ドームで開催された(順位決定プレイオフの組み合わせ・試合結果はこちら)。
2部リーグは、今シーズンから、アドバンスセクション、ホープセクションの2セクション制・セクション内2回総当たりの試合方式を新たに採用。最終順位の決定も両セクションの上位2チーム・計4チームによる「順位決定プレイオフ」によって決定することになった。この「順位決定プレイオフ」は1部リーグの決勝トーナメントと同じ「ページシステム」(敗者復活戦を含むトーナメント)を採用。両セクションの1位のチームには最初の試合に敗れても「敗者復活戦」に回る権利が与えられ、2位のチームは文字通り「負ければ終わり」という崖っぷちの状態でトーナメントに臨むことになる。
アドバンスセクション1位のドリーム・ワールド、2位のペヤング、ホープセクション1位の靜甲、2位の日立マクセルの4チームが、「1部昇格」をかけた「最後の決戦」に臨んだ。
■第1日(10月23日/土)
第1試合
日立マクセル(ホープセクション2位) 4−0 ペヤング(アドバンスセクション2位)
日立マクセルが「中国代表」のエースでもあり、チームの「大黒柱」である呂偉を先発に立てたのに対し、ペヤングはレギュラーシーズンで7勝を挙げた小長井美希ではなく、左腕の小澤麻美が先発。その小澤麻美の立ち上がりに日立マクセルが襲いかかった。
後攻の日立マクセルは初回、先頭の阿部環がワンボール・ツーストライクと追い込まれながら、死球で出塁。2番・加藤愛が確実に送り、3番・小林朝子のライトフライの間に三塁へ進塁。ここで4番・高崎千恵がしぶとく一・二塁間を破るタイムリー。大事な試合の先取点を奪った。これで試合の流れをつかんだ日立マクセルは、続く2回裏、この回先頭の6番・中村祥子がライト線へスリーベースを放ち、チャンスをつかむと、一死後、8番・田中涼子のツーボール・ワンストライクからの4球目にヒットエンドランを敢行。これが見事に決まり、1点を追加。3回裏にも、この回先頭の2番・加藤愛が右中間へツーベースを放ち、二死後、5番・和田祐美が二遊間を破るタイムリー。3点目を挙げると、終盤6回裏には、一死から5番・和田祐美、6番・中村祥子の長短打でダメ押しの1点を追加。ペヤングの息の根を止めた。
今シーズン、リーグ新加入ながら、アドバンスセクションで快進撃を見せ、「旋風」を巻き起こしてきたペヤングは、日立マクセル・呂偉の前に打線が沈黙。散発4安打に抑えられ、最終回、代打攻勢で一死一・三塁と攻め立てたが、ここでも「あと一本」が出ず、無念の完封負け。リーグ加盟1年目での「1部昇格」という快挙はならなかった。しかし、敗れたとはいえ、リーグ加盟1年目でここまでの戦いを見せ、リーグを大いに盛り上げた功績は称賛に値するものであった。
勝った日立マクセルは準決勝進出。アドバンスセクション1位のドリーム・ワールド、ホープセクション1位の靜甲の対戦の敗者と「決勝進出」をかけ、戦うことになった。
第2試合
靜甲(ホープセクション1位) 4−2 ドリーム・ワールド(アドバンスセクション1位)
勝てば決勝進出と同時に、2位以上が確定。少なくとも1部リーグ11位・伊予銀行との入替戦に進む権利を得ることができる「大一番」は、先攻の靜甲が先手を取った。
靜甲は初回、1番・植松尚子が四球を選ぶと、2番・白井加奈絵がバントの構えで相手守備陣を引きつけ、強攻。三遊間に叩きつけ、内野安打。いきなり無死一・二塁の絶好機をつかんだ。しかし、3番・鈴木優子の2球目にダブルスチールを敢行。二塁走者が三塁タッチアウトとなり、強引な攻めでチャンスを潰したかと思われたが、「勝負強さ」が光る4番・原田真由美が一・二塁間を破り、1点を先制した。2回表には、8番・松井志帆実がレフト前ヒットを放つと、緩慢な返球を見逃さず、二塁を陥れ、次打者のピッチャーゴロの間に三塁へ進塁。1番・植松尚子がヒットエンドランに失敗し、三塁走者が挟殺されたものの、その植松尚子がライト線へスリーベース。再びチャンスを作り直すと、2番・白井加奈絵のサードへの痛烈な当たりが失策を誘い、2点目。有利に試合を進めるかと思われた。
しかし、ドリーム・ワールドも黙ってはいない。2点をリードされた2回裏、5番・小野奈津子がレフト線を鋭く破るツーベースを放ち、無死二塁。次打者の送りバントで三塁へ進み、二死後、敵失で1点を返すと、4回裏には5番・小野奈津子の死球、6番・宮野祐子のライト前ヒットで一死一・三塁のチャンスを作ると、7番・谷口敏子がしぶとく二遊間を破るタイムリー。同点に追いつき、試合を振り出しに戻した。
2−2の同点に追いつかれた靜甲は6回表、この回先頭の5番・計盛志津子が左中間を破るツーベース。「ムードメーカー」が膠着状態を打ち破る一打を放つと、一死後、代打・菊地美咲が巧みな流し打ちでレフト前ヒット。一・三塁とチャンスを広げると、すかさず盗塁。8番・松井志帆実のところで、またしてもヒットエンドランを試みるが、レフトフライとなり、二死。チャンスを逃したかと思われたが、9番・尾方栄里が「職人芸」ともいうべき、カットの技術でファウルを打ち続け、粘って四球を選び、満塁とすると、ここで1番・植松尚子が一・二塁間を破り、二者生還。2点を勝ち越し、勝負を決めた。
初回の無死一・二塁からダブルスチール失敗、2回表の一死三塁からのヒットエンドラン失敗と、序盤のチャンスでは無謀ともいえる強引な攻めが目立ち、チャンスを生かしきれない場面が目立った靜甲。しかし、過去「大事な試合」になると、良く言えば慎重、悪く言えば消極的な試合展開に終始していた靜甲が、とにかく「アグレッシブ」に動き、送りバントを一切せず、攻めまくる姿勢には好感が持てた。もちろん粗さが目立ち、強引な攻めの失敗が自らを苦しい試合展開に追い込み、「空回り」していた感は否めないが、それでも鬼気迫る形相でバットを振り、懸命に全力疾走を続ける姿には、過去の忌まわしい記憶を振り払い、「あと一歩」で逃し続けてきた「1部昇格」を絶対に勝ち取るのだという「執念」が感じられた。また、「過去の呪縛」から逃れるためには、ある種「無茶苦茶」なまでのガムシャラさ、徹底して攻める姿勢が必要だったのかもしれない。
その「必死の靜甲」を一度は押し返したドリーム・ワールドも、やはり「1部リーグの強豪」であったレオパレス21に在籍していた選手が多数移籍し、チームの「核」となっているチームだけに、アドバンスセクション1位にふさわしい力を有したチームだった。しかし、この試合にかける「思いの大きさ・重さ」という面で、わずかに靜甲が上回り、いつも後ろ髪ばかりを追いかけていた「勝利の女神」が微笑んでくれたのではないだろうか。
これで靜甲は決勝進出、2位以上が確定。1部昇格へ「王手」をかけた。敗れたドリーム・ワールドは「敗者復活」に望みをかけ、準決勝で日立マクセルと対戦。靜甲への「挑戦権」をかけて戦うことになった。
■第2日(10月24日/日)
第1試合/準決勝
日立マクセル 3−2 ドリーム・ワールド
ドリーム・ワールドはレギュラーシーズンでアドバンスセクショントップの10勝を挙げた松村綾菜が満を持して先発。日立マクセルも「エース」呂偉が連投。「負ければ終わり」の後がない一戦だけに、両チーム「エース」を先発に立て、「必勝」を期した。
しかし、その松村綾菜の立ち上がりを日立マクセル打線が攻めた。後攻の日立マクセルは初回、先頭打者・阿部環がいきなりレフトフェンス直撃のツーベース。あわやホームランかという大きな当たりで強烈な「先制パンチ」を食らわせると、2番・加藤愛の送りバントは失敗に終わったものの、3番・小林朝子のセンターフライで三塁へ進み、4番・高崎千恵がレフト前にタイムリー。先取点を挙げると、2回裏にも、この回先頭の6番・中村祥子がライトオーバーのツーベース。今度は7番・林杏奈がキッチリ送り、一死三塁。8番・田中涼子の何でもないピッチャーゴロが一塁への悪送球を誘い、2点目。早くも松村綾菜をKOし、試合の主導権を握った。
このまま試合は日立マクセルのペースで進むかと思われたが、2回途中からリリーフしたドリーム・ワールドの2番手・陳彦君が好投。試合の流れを引き戻し、味方打線の反撃を待った。
ドリーム・ワールドは6回表、死球、安打、敵失などで二死満塁の反撃機をつかみ、5番・宮野祐子が押し出しの四球を選び、1点差。7回表には、この回先頭の7番・谷口敏子がライトスタンドへ同点のソロホームラン。起死回生の一発を放ち、土壇場で試合を振り出しに戻し、2−2の同点のまま、延長タイブレーカーに突入した。
これで試合の流れがドリーム・ワールドに傾くかと思われたが、8回表は二死二・三塁と攻め立てながら、「あと一本」が出ず、無得点。その裏、日立マクセルは、タイブレーカーの走者を二塁に置き、2番・加藤愛が敬遠気味の四球で無死一・二塁。3番・小林朝子のピッチャーゴロの間に二・三塁とし、4番・高崎千恵の打球はサードゴロ。三塁走者が果敢に本塁突入を試みると、本塁への送球が三塁走者の身体に当たり、サヨナラのホームイン(記録は内野安打)。劇的なサヨナラで熱戦に終止符を打ち、粘るドリーム・ワールドを振り切り、決勝進出を決めた。
リーグ加盟1年目でペヤングとともに2部リーグ・アドバンスセクションに「旋風」を巻き起こしたドリーム・ワールド。ペヤングとはチーム事情が異なり、「1部リーグの強豪」レオパレス21から多くの選手が移籍してきたチームだけに、戦前から「優勝候補」に挙げる声は多かった。しかし、「優勝候補」に挙げられ、その通りの「結果」を出すことは決して簡単なことではない。この順位決定プレイオフでは敗れたとはいえ、リーグ加盟1年目でのこの結果は、高く評価されて然るべきものであろう。
ただ、このプレイオフに残った4チームの中では、他の3チームほど、「1部昇格」への「熱さ」は感じられなかった(もともと1部で活躍していた選手がチームの中核を占めていたからかもしれないが)。どこか「クール」で「冷めている」そんな印象すらあった。しかし、この試合の7回表、谷口敏子の同点ホームランが飛び出したときには、選手たちが我を忘れて喜びを爆発させる姿があった。もっと早く何振り構わず、無我夢中で戦う姿を見せてくれていたら、結果はまた違ったものになっていたかもしれない。
同点にはできても逆転できない。追いつけてもひっくり返せない。このプレイオフでの2試合の紙一重の差は、「勝ちたい」「1部へ上がりたい」という思いの強さ・大きさの差であったように思えてならない。
第2試合/決勝
靜甲 3−0 日立マクセル
勝てば無条件で1部昇格が決まる「大事な一戦」は、靜甲が昨日の試合で温存していた「二枚看板」の一人・河部祐里が先発。日立マクセルはこのプレイオフですでに2試合完投している「エース」呂偉が3連投。3回までは互角の試合展開で進んだが、4回表、靜甲打線が3連投の疲れの見える日立マクセル・呂偉に襲いかかった。
この回先頭の3番・鈴木優子がライト前ヒットで出塁。この試合の重さ、大切さを考えれば、当然送りバントの場面だが、「攻めの靜甲」はここでも4番・原田真由美に強攻策を指示。二遊間をしぶとく破り、無死一・二塁とすると、「攻めの靜甲」の象徴的存在である「ムードメーカー」計盛志津子が一転して確実に送りバントを決め、一死二・三塁。ここで昨日から「ここぞ」という場面で打順が回りながら、決定打を放つことができず、「ブレーキ」となっていたキャプテン・萩藤寛子のスリーボール・ワンストライクからの5球目、靜甲得意のヒットエンドランを敢行。外角高めのボールを体勢を崩しながらも食らいつき、打球はライト前へ。三塁走者に続いて、二塁走者も生還し、この回2点を先制した。
続く5回表には、この回先頭の9番・尾方栄里が絶妙なセーフティーバントで出塁すると、相手守備陣の一瞬のスキを突き、ディレードスチール。1番・植松尚子の内野安打で一・三塁とし、すかさず盗塁。一死後、3番・鈴木優子がまたしてもヒットエンドランを決め、決定的な3点目。悲願の「1部昇格」をグッとたぐり寄せた。
守っては、先発・河部祐里が日立マクセル打線をわずか4安打に抑え、完封。最後まで得点を許さず、1部昇格を決めた。
敗れた日立マクセルは、「エース」呂偉がフル回転。このプレイオフ3試合22イニングすべてを一人で投げ抜き、投球数は409球に及んだ。これだけの力投を続けた「エース」を責めるのはあまりに酷というものだろう。
計算できる「エース」「大黒柱」がいるだけに、後はそれをどう援護し、盛り立てていくのか。カギはこの1点に尽きる。入替戦では、この「エース」の力投に報いなければならない。
一方、このプレイオフを制し、優勝と1部昇格を決めた靜甲は、とにかく終始一貫して「攻め」の姿勢を崩さなかった。ときに「空回り」した感もあったが、ランナーが出れば走り、ヒットエンドランを仕掛け、スキあらば一つでも先の塁を奪おうとするアグレッシブな攻撃は迫力があった。まだまだ、その仕掛けのタイミング・精度に疑問や粗さがないでもないが、少なくともその終始一貫した攻めの姿勢は評価できる。
ただ、この「1部昇格」はスタートであって、決してゴールではない。1部でも、このプレイオフでの戦いのように、ガムシャラに攻め続ける姿勢を忘れることなく、仕掛け、動き、揺さぶりをかける試合を展開してほしいと思う。
多くのチームが1部昇格と同時に、「1部の流儀」に合わせようとし、結局は力負けして1シーズンで2部へ逆戻り……そんなシーンを何度も見てきた。「同じこと」をやっていたのでは勝てない。「普通のこと」をやっていたのでは生き残れない。同じ土俵で戦えば、地力のあるチームが勝つ。横綱との取り組みで胸を出し、ガップリ四つに組んでしまったら、結果は見るまでもないのである。「1部」だからといって、上品で、スマートな、「よそいき」ソフトボールをする必要はまったくないのだ。
むしろ、今の1部にはまったく存在しない「異質」なソフトボールをめざすべきではないか。盗塁、大いに結構。ディレードスチール、なお結構。単純な送りバントなんてつまらない。バントシフトの裏をかくプッシュバント、バスターも面白い。今、得意としているヒットエンドランにバスターを入れて、相手守備陣をさらに動かすことができるようバリエーションを増やしてみてもいいかもしれない。
もちろん、基礎・基本は大事である。地力をつけ、磨く努力を怠ってはならない。いつかは「王道」で勝てるチームにならなくてはならない。しかし……そのアプローチは一つではないはずだ。山頂は一つでも、登る道はたくさんあっていい。靜甲の1部昇格が「新風」を吹き込む契機となることを期待したい。
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