第16回アジア競技大会・2010広州

(2010.11.26)  

3大会連続での金メダル獲得へチャレンジ!

「世界一の投手」上野が久々に代表復帰

中国・広州の地で熱戦を展開した

アジアのライバルたちが全力で日本に挑んできた


勝負どころで快打を連発した「アジアの大砲」馬渕

もちろんチームは一丸となり、総力を結集し、戦ったが
多くの人々に支えられ、応援されての金メダルだった

3大会連続の金メダル獲得! 課せられた「使命」を
成し遂げ、ようやくスタッフ・選手に笑顔がはじけた

「勝って当たり前」「金メダルは確実」といわれる中、
見事に期待に応え、3大会連続で金メダルを手にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女子日本代表、3大会連続の金メダルを獲得!

 11月19日(金)〜26日(金)、中国・広州で開催された「第16回アジア競技大会・2010広州」女子ソフトボール競技(大会のオフィシャルウェブサイトはこちら)に出場していた女子日本代表(「第16回アジア競技大会・2010広州」出場選手・スタッフはこちら)が、見事3大会連続の金メダル獲得を果たした。

 「アジア競技大会」における女子ソフトボール競技は、1990年の第11回アジア競技大会(中国・北京)から正式種目となり、日本は同大会で銀メダルを獲得したのを皮切りに、1994年の第12回大会(日本・広島)、1998年の第13回大会(タイ・バンコク)まで3大会連続で銀メダル。2002年の第14回大会(韓国・釜山)で初の金メダルを獲得すると、2006年の第15回大会(カタール・ドーハ)では2大会連続の金メダルに輝き、今大会では第11回大会から3連覇を果たした中国と並ぶ、「3大会連続の金メダル獲得」の「偉業」達成に挑んでいた。

 今大会には、その日本をはじめ、ホスト国の中国、台湾、韓国、フィリピン、タイの6カ国が参加。まず全チームによるシングルラウンドロビン(1回戦総当たり)方式の予選リーグを行い、上位4チームが決勝トーナメントに進出。ソフトボール独特の「ページシステム」(敗者復活戦を含むトーナメント)による決勝トーナメントを行う試合方式で「アジアの盟主」の座が争われた(第16回アジア競技大会の予選リーグ試合結果、決勝トーナメント試合結果はこちら)。

 大会初日(11月19日/金)、日本は予選リーグの初戦でタイと対戦。立ち上がりから打線が爆発し、12安打を放ち、15−0の3回コールドで圧勝。投げては、大事な「開幕戦」の先発に指名された藤原麻起子(日立ソフトウェア)が1人の走者も許さぬパーフェクトピッチング。大会3連覇へ向け、好スタートを切った。
 試合後、斎藤春香ヘッドコーチ(日立ソフトウェア)は、「チーム全員が3連覇をするという強い気持ちを持っている。『一戦必勝』の気持ちで、一丸となって戦っていく」と、大勝にも気持ちを引き締めていた。

 大会2日目(11月20日/土)、予選リーグ第2戦は韓国と対戦。「世界一」と称される安定した守りが光り、3−0で快勝。2連勝を飾った。
 その「世界一の守備」の守りの要であり、キャプテンとしてチームを引っ張る松岡恵美(豊田自動織機)は「日本らしさが出せた。リズムの良い守りを打撃にもつなげたい」と語り、予選リーグの「最初のヤマ」である台湾戦に備えた。

 大会3日目(11月21日/日)、2008年8月の北京オリンピックで金メダルを獲得した決勝戦以来2年3カ月ぶりにエース・上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)が登板。その立ち上がり、初球にいきなり119km/hを記録。さらに5球目には「大台」に乗せる120 km/hを記録するなど、快調な滑り出しと思われたが、2番・陳妙怡にライト前に運ばれ、二死二塁となった後、4番・江慧娟にワンボール・ツーストライクからの4球目をレフトスタンドに叩き込まれ、まさかの2失点。思わぬ展開に焦りが生じたわけでもないだろうが、打線もつながらず、最終回に1点を返したのみ。1−2で敗れ、アジア大会では1998年の第13回バンコク大会の決勝で中国に敗れて以来の敗北を喫した。

 大会4日目(11月22日/月)、予選リーグ第4戦、日本はフィリピンと対戦。初回に2点を先制すると、3回表に1点、4回表に1点と着々と加点。河野美里(太陽誘電)、山田恵里(日立ソフトウェア)、馬渕智子(日立ソフトウェア)、松岡恵美(豊田自動織機)の4本の二塁打を含む11安打と打線も復調。守っては、先発・藤原麻起子(日立ソフトウェア)、山根佐由里(トヨタ自動車)の投手リレーでフィリピン打線を1安打に抑え、4−0で快勝。通算成績を3勝1敗とした。 

 大会5日目(11月23日/火)、予選リーグ最終戦で地元・中国と対戦。ともに台湾に敗れ、ここまで3勝1敗で並ぶ、「当面のライバル」と対戦した。
 先攻の日本は初回、1番・狩野亜由美(豊田自動織機)がレフト前ヒットで出塁。2番・西山麗(日立ソフトウェア)がスリーバント失敗で送れず、3番・山田恵里(日立ソフトウェア)もショートゴロに倒れ、一塁走者が二塁フォースアウト。チャンスを生かせず、嫌な雰囲気になりかけたが、一塁走者がすかさず盗塁。チャンスを作り直すと、4番・馬渕智子(日立ソフトウェア)がセンター前へ先制のタイムリー。大事な試合で先手を取った。
 日本はその裏、先発・上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)が1点を失い、すぐに同点とされたが、4回表、5番・坂元令奈(トヨタ自動車)がレフト前ヒットで出塁。6番・松岡恵美(豊田自動織機)が手堅く送り、7番・峰幸代(ルネサスエレクトロニクス高崎)がセンター前へタイムリー。1点を勝ち越すと、立ち直ったエース・上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)が、2回以降は中国打線を1安打に抑え、僅差のゲームをモノにした。
 日本はこれで通算4勝1敗。台湾に敗れたのは誤算ではあったが、予選リーグ2位で決勝トーナメントへと駒を進めることになった。

 大会6日目(11月25日/木)、日本の決勝トーナメント初戦の相手は台湾。予選リーグで日本が「まさかの敗戦」を喫し、それで勢いづいたか中国も撃破。予選リーグ5戦全勝の1位と勢いに乗る台湾と決勝進出をかけ、再戦した。
 「リベンジ」を期し、先発したエース・上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)が、4回裏に予選リーグでも手痛い一発を浴びた台湾の「主砲」江慧娟に再びタイムリーを浴び、先取点を許すという「予想外の展開」。予選リーグの「悪夢」が一瞬頭をよぎったが、直後の5回表、一死から8番・濱本静代(日立ソフトウェア)が四球を選び、9番・河野美里(太陽誘電)、1番・狩野亜由美(豊田自動織機)の連打でまず同点。さらに一死二・三塁とチャンスが続き、2番・西山麗(日立ソフトウェア)のところでヒットエンドランを仕掛けると、この打球がレフト前に抜け、逆転。さらに3番・山田恵里(日立ソフトウェア)、4番・馬渕智子(日立ソフトウェア)に連続タイムリーが飛び出し、二死後、6番・松岡恵美(豊田自動織機)が台湾の息の根を止める左中間二塁打。怒涛の集中攻撃で、この回一挙5点を奪う猛攻。試合をひっくり返すと、エース・上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)が5回を3安打・1失点・5奪三振でまとめ、6回は藤原麻起子(日立ソフトウェア)、最終回は染谷美佳(デンソー)が台湾打線の反撃を抑え、5−2で快勝。予選リーグで敗れた「リベンジ」を果たし、決勝進出。3大会連続・3度目の金メダル獲得に「王手」をかけた。

 大会最終日(11月26日/金)、まず第1試合で予選リーグ4位の韓国を7−1で破った中国と、日本に5−2で敗れ、敗者復活戦に回った台湾が決勝進出をかけ、対戦。中国が2−1で台湾を破り、決勝進出を決めた。
 3大会連続・3度目の金メダル獲得に「王手」をかけ、決勝で待ち受けていた日本は、エース・上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)が先発。大事な試合になればなるほどその力を発揮する「世界一の投手」が、その実力を見せつけるかのように好投。中国打線をわずか1安打に抑え、8三振を奪う力投。「完全アウェー」の雰囲気の中で、段違いの実力でスタンドを黙らせると、打線もこれを援護。4回表、「アジアの大砲」4番・馬渕智子(日立ソフトウェア)の右中間二塁打からチャンスをつかみ、5番・坂元令奈(トヨタ自動車)がしっかりと送った後、「頼れるキャプテン」6番・松岡恵美(豊田自動織機)が初球を叩きつけ、ヒットエンドラン成功。待望の先取点を挙げると、6回表には、2番・西山麗(日立ソフトウェア)がライト線を鋭く破る二塁打。3番・山田恵里(日立ソフトウェア)の投ゴロの間に三塁へ進み、再び一死三塁のチャンスを作ると、4番・馬渕智子(日立ソフトウェア)がライト線へ火の出るような当たりのタイムリー。「主砲」の一振りで貴重な追加点を挙げ、勝負を決めた。

 3大会連続・3度目の金メダルへの道は決して楽なものではなかった。「勝つのが当たり前」「金メダルを獲って当然」と期待される中、その期待通りに勝って見せることは、傍で考えるほど、簡単なことではない。「世界一の投手」上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)が久々に代表復帰。まさに「盤石」の状態で大会に臨み、3大会連続・3度目の金メダル獲得に死角はないはずだった。
 コールド勝ちはわずか1試合。他を圧倒する「強さ」は最後まで感じられなかった。それでも台湾戦の敗北など、予想外の展開になっても慌てることなく、しっかりとチームを立て直し、最後は「至上命令」といわれた「金メダル」を勝ち取って見せた。
 どんな状況に追い込まれても、どんな状態にあっても、とにかく「勝つ」というメンタリティ。求められる「結果」を必ず出し続けていく「日本代表」というチームの「凄味」を改めて感じさせてくれた「3大会連続・3度目の金メダル」であった。