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第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技
日本代表候補選手(15名)の顔ぶれ

記者発表冒頭、挨拶に立つ日ソ協・三宅豊会長

矢端信介選手強化本部長が代表候補選手一人ひとりの名前を読み上げた

投手陣は五輪史上「初」の3人編成。「期待の大型左腕」後藤希友を「第3の投手」に指名

捕手も五輪史上「初」の3人体制。我妻悠香(奥)に加え、 北京五輪の「金」を知る峰幸代(手前)も選出された

強気なリードは持ち味の清原奈侑も選出。「左殺し」の役割も担う

内野手は渥美万奈(中央)、川畑瞳(左)、市口侑果(右)を 含む5名を選出。「鉄壁の守備」は日本の「伝統」であり、「生命線」だ

外野手はキャプテン・山田恵里を筆頭に、4名を選出。日本リーグMVPで首位打者・打点王の 山崎早紀、本塁打王・原田のどかに、「打撃の職人」森さやかを選出

「私の決断が選手の人生を左右したかもしれない」と責任の重さを吐露した 宇津木麗華ヘッドコーチ。「だからこそ……勝ちたい!」と決意も新た

 去る3月23日(火)、(公財)日本ソフトボール協会は、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」日本代表候補選手(※JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会の正式認定を受けるまでは「候補選手」の名称を用いる)15名を選出。オンラインによるリモート発表記者会見を行った。
 記者会見には、(公財)日本ソフトボール協会・三宅豊会長、同協会・矢端信介選手強化本部長、女子TOP日本代表・宇津木麗華ヘッドコーチが出席。代表選手、報道関係者・メディア各社をオンラインでつなぎ、リモートで選手発表を行った。

 記者会見冒頭、三宅会長が挨拶に立ち、「新型コロナウイルスの影響で大会が1年延期され、強化事業も延期・中止を余儀なくされ、見直しを迫られることとなり、海外遠征・国際大会への参加はできなくなってしまいましたが、その間、現在「世界ランキング1位」である男子ソフトボールの協力を得て、男子ピッチャーを「仮想・外国人投手」に見立て、強化を進め、3月の沖縄での第5次国内強化合宿を終了し、代表選手を決定。本日の発表に至りました。選手選考の経緯、チームの編成方針等は、この後、矢端選手強化本部長の方から説明し、選手名を発表させていただきますが、ソフトボールは今回のオリンピックの「トップバッター」として全競技に先駆け、福島で開幕を迎えます。幸先の良いスタートが切れますよう、ここからまた再び、協会一丸となってオリンピック『本番』へ進んでまいりますので、さらなるご支援・ご声援のほど、よろしくお願い致します」と、強化の概要に触れ、改めてオリンピックへ向けた意欲と決意のほどを滲ませた。

 続いて、矢端選手強化本部長が、選考の経緯・過程を説明。「ソフトボールは、東京五輪追加種目が決定される1年前、追加種目入りが『必ず実現する』と信じ、2015年4月にTAP(Target Age Project)をスタートさせました。オリンピック『本番』にピークを迎える年代の選手の重点的な強化に乗り出し、その対象となる選手の発掘・育成と選考の透明性・客観性を担保すべく、日本リーグ1部12チームの監督、大学関係者、オリンピアン、当時の強化委員ら18名からなるCOS(Conference Of the Selector/選考委員会議)を立ち上げ、そこで延べ450人の選手が推薦され、単年度編成の女子TOP日本代表の強化と並行し、TAP-A・Bの2チームを編成。2年にわたり重点的な強化を実施しました。2016年8月3日、ソフトボールの追加種目入りが正式に決定し、同年11月には宇津木麗華ヘッドコーチを招聘。その後は3年の月日をかけ、年間170日に及ぶ強化合宿・海外遠征・国際大会参加を繰り返し、強化に励んでまいりました。新型コロナウイルスの影響により、強化事業の中止・延期を余儀なくされた時期もありましたが、本年3月19日(金)に第5次国内強化合宿を打ち上げ、翌20日(土)にはオンラインによる強化委員会、SCOTT(Special Committee Twenty-Twenty/五輪特別委員会)での審議を経て、15名の選手を決定。21日(日)に臨時理事会を招集し、そこでその提案の最終的な審議・承認を得て、本日の選手発表に至りました」と選考経緯を説明した。

 この後、矢端選手強化本部長が選手一人ひとりの名前を読み上げ、投手3名、捕手3名、内野手5名、外野手4名、計15名の代表候補選手が発表された(「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」代表候補選手名簿はこちら

 代表候補選手の顔ぶれを見ていくと、投手は3名。北京オリンピックの金メダリストであり、世界選手権(現・ワールドカップ)でも二度(2012年・2014年)の優勝。言わずと知れた「ソフトボール界のレジェンド」上野由岐子。
 「投打二刀流」オリンピック出場の経験こそないものの、世界選手権では上野由岐子とともに二度「世界一」となり、前回大会(2018年)では投手として5試合・22回1/3を投げ、防御率1.25。打っては、決勝での2本塁打を含む5本塁打・9打点、打率3割1分3厘と投打に大活躍を見せた藤田倭。
 そして「第3の投手」には後藤希友を指名。2019年、女子GEM3(U19→現在はU18にカテゴリー変更)日本代表の「エース」として「U19ワールドカップ」で5試合に登板し、24イニングを投げ、2勝2敗。アメリカ戦2試合で負け投手となり、準優勝に甘んじたものの、防御率0.88、26奪三振の成績を残した。特に、ともに「決勝進出」を決めた後の対戦となった「スーパーラウンド」(予選2次ラウンド)のアメリカ戦は、決勝での対戦を見越し、変化球・チェンジアップをすべて封印。「真っすぐ一本」で勝負し、「ジュニア」とはいえ、アメリカ打線をわずか1安打に封じ込んだピッチングはまさに「圧巻」の一言で今も鮮烈な印象を残している。大きな可能性と底知れぬ将来性を感じさせた「大物」は、昨シーズン、日本リーグでも5勝を挙げ、防御率1.42の成績を残し、投手部門の「新人賞」を獲得。順調に成長を見せる「期待の大型左腕」がオリンピックの「大舞台」に立つことになる。
 過去、オリンピック4大会(1996アトランタ、2000シドニー、2004アテネ、2008北京)では、投手陣はいずれも「4人編成」。しかし、出場チームが8チームから6チームとなったこと、予選リーグの試合数が7試合から5試合に減ったこと、を考え併せると「絶対的」なエース・上野由岐子がおり、藤田倭も十分に完投能力があるという状況では、「投手は3人で十分」との結論に至ったようだ。
 選出の基準は、「球速があり、ボールに力があること」が条件として挙げられており、やはりパワーのある外国人打者、とりわけ金メダル争いの「最大のライバル」であるアメリカとの対戦を想定すると、ある程度の球威・球速がないと通用しない……という判断だろう。さらに上野、藤田は多彩な球種を自在に操ることができる。このあたりは若い後藤にとっては「課題」となる部分だが、後藤には「左腕」という他の二人にはない「武器」があり、球速という点においては「エース」上野に次ぐ球速をスピードガンで叩き出している。基本的には上野、藤田が中心となるだろうが、「大型左腕」後藤を加えた3人のタイプの異なる投手陣を宇津木麗華ヘッドコーチがどの試合に登板させ、どんな場面で起用していくのか……その手腕にも注目したいところだ。

 捕手は我妻悠香、清原奈侑、峰幸代の3名が選出された。これも過去4回のオリンピックはすべて2人体制で3人の捕手選手は「初」となる。我妻悠香はジュニア時代(2013年)にも「世界一」を経験しており、世界選手権に二度(2016年・2018年)出場。上野、藤田とバッテリーを組んだ回数・期間は一番多く長く、今回も「正捕手」としての働きが期待される。打撃面でも決してアベレージは高くはないが、2018年の世界選手権決勝での先制タイムリー、所属チーム(ビックカメラ高崎 BEE QUEEN)の日本リーグ連覇(2019年・2020年)における「ターニングポイント」となった「宿敵」トヨタ自動車 レッドテリアーズ戦で2019年はアメリカ代表の「エース」モニカ・アボットから、2020年は「日本代表」ではチームメイトでもある後藤から勝負を決める「一発」を放つ等、「意外性」のある打撃で「存在感」を見せている。
 清原は、強気でピッチャーをグイグイ引っ張っていくリードが持ち味。その意味では後藤とのバッテリーが面白い。宇津木麗華ヘッドコーチもメキシコとのテストマッチで後藤の持ち味を「ほぼ完璧」に引き出したリードを高く評価。そのあたりが今回の選出の理由にもなっているようだ。「若手投手を引っ張る」という役割を担うにはうってつけのキャッチャーだ。
 峰幸代は2008年の北京オリンピック金メダリスト。2012年・2014年の世界選手権「連覇」も経験している。上野由岐子、モニカ・アボットという日米を代表するピッチャーとバッテリーを組んだことがある、という稀有な存在でもある。好投手をソツなくリードし、どんな剛球も鋭い変化球も難なくさばくキャッチングの上手さには定評がある。まさに経験豊富、熟練の技術を誇るベテランキャッチャーだが、その一方で、2010年の世界選手権では「エース不在」のチームにあって、染谷美佳(当時・デンソー)の力を存分に引き出し、緩急自在のピッチングで「世界の強豪」を手玉に取った。優勝こそ逃したものの、チームを準優勝に導いた。ピッチャーの「潜在能力」を引き出し、「覚醒」させる巧みな配球・リードは、上野由岐子やモニカ・アボットと組んだときには見ることのない、キャッチャー・峰の「別の顔」を垣間見た気がする。あれから10年の月日が流れたが……舞台が大きくなればなるほどその力を発揮する選手であり、オリンピックという舞台で未だ見たことのない「新たな顔」を見せてくれるのでないか……と密かに期待している。
 清原、峰は「試合の流れを変えてほしい」局面での起用が想定され、これまでのデータを覆し、相手が予想もしないような配球・リードで「状況を一変させる」働きが求められる。
 また、2008年の北京オリンピックがそうであったように、大会前、用意周到・準備万端で臨んだはずの正捕手・乾絵美(当時・ルネサス高崎)が、初戦のオーストラリア戦を終えた時点で「何か違う」「しっくりこない」と当時・チーム最年少であった峰幸代に取って代わられた……等ということもバッテリー間では起こり得る。フィーリングや感性、独特の「肌感覚」を大切にする「投手」だけが持つ「第六感」に従えば、「突然の交代劇」はいつでも起こり得る。チームが勝つために「最優先」されるのは、誰が正捕手であるか……ではなく、いかにピッチャーを気持ちよく投げさせ、その力を引き出せるか、ということに力点が置かれる。その意味では「キャッチャーありき」ではなく、「ピッチャーありき」にならざるを得ず、その「組み合わせ」「選択肢」は多いに越したことはない。投手陣の力をフルに引き出せる者が「正捕手」となる、という図式が成立することになる。
 同時に、清原、峰にはアメリカが誇るキャット・オスターマン、モニカ・アボットの強力な左投手陣を打ち込む「左殺し」の役割も期待される。「代打の切り札」として、あるいは「DP」として、キャッチャーというポジションだからこそ培われ、積み上げてきた配球・リードを読み切った「渾身の一撃」が飛び出せば……それだけ日本の勝利が近づくことになる。

 内野手は、渥美万奈、市口侑果、川畑瞳、内藤実穂、山本優の5名が選ばれた。渥美は華麗なフィールディングが魅力の選手で、「世界一」と評される日本の内野守備の「要」となる守備の名手だ。市口はセカンドとショート、川畑はセカンドとサードと複数ポジションをこなすことができ、闘志満々のプレーが信条のファーストの内藤、野性味溢れるプレーを見せるサードの山本を含め、長く「世界一」と称賛と畏敬の念を集め続けている「日本伝統の内野守備」をしっかりと継承している。
 打撃面では、2018年の世界選手権で大会最多の6本塁打・17打点を叩き出し、世界を震撼させたスラッガー・山本が打線の中心。肩の故障から一度は「現役引退」を余儀なくされながら、「カムバック」を果たした「苦労人」がついにオリンピックの舞台に立つ。ジュニア時代から将来を嘱望され、2014年には「世界一」も経験。抜群のバットコントロールを誇る市口、シュアなバッティングが持ち味の川畑、地味ながらしっかりと「つなぎ役」をこなす渥美、パワフルで泥臭くもしぶとい打撃が売り物の内藤と、多士済々、個性的なメンツが揃う内野陣。その「鉄壁」と称される守備は、「日本の生命線」であり、打線においてもそれぞれが貴重な「アクセント」としてその存在感を発揮してくれることだろう。

 外野手は、原田のどか、森さやか、山崎早紀、山田恵里の4名。原田のどかは2020年日本リーグの「本塁打王」であり、当たりだしたら手がつけられない「固め打ち」が特徴。それだけにオリンピック「本番」にどうピークを持ってくるかがカギとなる。誰も打てないときに突然打つ、という「意外性」も持ち合わせている。山崎早紀は「首位打者」「打点王」の二冠に輝き、「MVP」を獲得する等、「乗りに乗っている」選手。ともに守備にも定評があり、その守備範囲の広さ、肩の強さ、スローイングの正確性は日本にとって大きな「武器」となるはずである。
 森さやかは2014年に「世界一」となったときのメンバーであり、ユニバーシアード、ワールドゲームズといった他の選手が経験していない国際舞台も経験している「変わり種」。モニカ・アボットをして「日本で一番恐い打者」と言わしめ、宇津木麗華ヘッドコーチも「打撃だけなら日本の4番」と常々口にしていた選手でもある。守備にはやや難があるものの、その「バッティング」が評価されての選出。他の選手とは一線を画す独特の色彩・世界観でオリンピックを「森ワールド」に染めてくれるはずである。
 山田恵里は2008年の北京オリンピック金メダリスト。2002年の日本リーグデビュー以来、数々のタイトルを手にし、日本リーグの打撃部門の記録のほとんどを塗り替えてきた「打のレジェンド」。その高い打撃技術はもはや「芸術」で他の追随を許さぬ「達人」の領域へ到達している。「ソフトボール界のイチロー」が「キャプテン」としてチームを引っ張り、二度目の「金メダル」に挑むことになる。

 選手発表を終え、宇津木麗華ヘッドコーチは、「私の選択が選手の人生を左右してしまったかもしれない」と、自らの選択の重さ、その決断の大きさを改めて吐露する場面があった。そして……だからこそ「勝ちたい」「金メダルを獲りたい」のだとも。
 そうなのだ……それほど重い選択と大きな決断の末に選び抜かれた15名だからこそ、オリンピックの舞台を夢に見、憧れ、めざした選手たちの想いの分まで戦わなければならない。志半ばで夢破れ、ここまで辿り着くことができなかった選手たちの想いを背負ってプレーすること、それこそが「選ばれた者たち」に課された使命となり、果たすべきミッションとなる。

 ソフトボールは2024年パリオリンピックでは行われないことが決定している。だからこそ……ソフトボールの「未来」のためにも、オリンピックの舞台でソフトボールという競技の魅力を、楽しさを、面白さを、世界中に伝えなくてはならない。

 ソフトボールの「夢」をつなぎ、「明日」を創るために……「金メダル」が必要だ!!

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