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●男子TOP日本代表レポート
「第15回世界男子ソフトボール選手権大会を振り返って」

「第15回世界男子選手権大会」に出場した男子TOP日本代表
ここではその戦いの軌跡を辿り、「今後、進むべき道」を考える

去る7月7日、世界男子選手権が開幕!
「幸運」にも予選リーグ初戦は不戦勝。予想外のスタートに……

投打が噛み合い、まずは開幕3連勝! 順調に白星を重ねた

予選リーグ第4戦で「世界ランキング1位」ニュージーランドと激突
しかし……「ソフトボール王国」の一発攻勢に屈し、完敗を喫してしまう

それでも、この後うまくチームを立て直し、「チーム一丸!!」予選2位通過

「勝負」をかけた決勝トーナメント! 「前回王者」にも全力で挑んだが……

最後はアルゼンチンに3-5で敗れ、無念の終戦……
またしても「5位の壁」を破ることができなかった

「最も安定感のあるピッチング」を見せ、チームを引っ張った高橋速水
「タイミングを外すローライズ」には、海外の強打者も手を焼いていた

大会はファイナルでニュージーランドが「劇的勝利」を収め、王座奪還
日本は、今後もこういった「強者」たちと戦っていかなければならない!

「本気」で「世界」で勝ちたいと思うなら……
その「覚悟」と「決意」を持って、再出発する必要がある!!

 去る7月7日(金)~16日(日)、カナダ・ホワイトホースにおいて開催された「第15回世界男子ソフトボール選手権大会(※大会結果はこちら)」。男子TOP日本代表は、今回、岡本友章ヘッドコーチの指揮のもと「果敢」に「世界の強豪」にチャレンジしたが……またしても「ベスト4の壁」に阻まれ、結果、「5大会連続の5位」という成績で大会を終えることとなった。ここでは、その男子TOP日本代表の10日間にわたった戦いの軌跡を辿るとともに、今後、男子TOP日本代表が進むべき道、そして「世界の舞台」で勝つために、何をしていかなければならないかを……考えてみたい。

【『まとまり』感じたチームの雰囲気! いざ、決戦の地へ!!】

 世界選手権「本番」を直前に控えた7月3日(月)、男子TOP日本代表選手団は羽田空港国際線ターミナルに集合。激励に駆けつけた関係の方々によって「結団式・壮行会」が催され、まず、チームを代表して高橋速水キャプテンが「チーム内では以前から繰り返し話をしてきましたが、とにかく『雰囲気の良い』チームを作り、私たち代表選手はもちろんのこと、スタッフの方々とも力を合わせ『一丸』となって戦いたいと思っています。『厳しい戦い』になることは覚悟の上ですが、チーム全員で力の限り『世界の強豪』にチャレンジし、今回はなんとしても『5位の壁』を破りたい! そして……笑って帰ってきたいと思います!!」と力強く決意表明。また、岡本友章ヘッドコーチも「自ら和やかな雰囲気作り」に努め、事前に準備した「オリジナルのコメント」で代表選手一人ひとりを紹介。そのヘッドコーチの投げかけに終始「笑顔」で応じる選手たちの姿からは、「雰囲気の良さ・チームの一体感」が感じ取れ、大会の開幕に向けて「期待」が膨らんだ。

【現地・カナダへ入り、いよいよ大会開幕!】

 日本を発ち、今大会の開催地となるカナダ・ホワイトホースに到着した男子TOP日本代表は、大会前に最終調整を兼ね、強豪・アルゼンチンと1試合のテストマッチを実施。「世界屈指の好投手」であり、アルゼンチンの「強力二枚看板」の一人でもあるロマン・ゴドイとの対戦も実現し、本番前に「MAX131km/h」の「ワールドレベルの快速球」を体感。最終的に5-5で引き分ける形となったが、海外のチームへの「対応力」という部分では良い手応えをつかみ、いよいよ「第15回世界男子ソフトボール選手権大会」の開幕を迎えることとなった。

【思わぬ『幸運』!? ニュージーランドに敗れはしたが、予選2位通過】

 7月7日(金)、「第15回世界男子ソフトボール選手権大会」が開幕。試合方式は参加16カ国(カナダ、オーストラリア、ドミニカ、アルゼンチン、アメリカ、南アフリカ、インド、香港、ニュージーランド、ベネズエラ、日本、チェコ、イギリス、デンマーク、ボツワナ、トルコ)を2つのPOOLに振り分け、まずシングルラウンドロビン(1回戦総当たり)の予選リーグを実施。予選リーグPOOLA、POOLBの上位4チームが決勝トーナメントへ進出し、決勝トーナメントはダブルページシステム(敗者復活戦を含むトーナメント)で覇が競われる形となり、「男子ソフトボール世界一」の座をかけた熱戦の火蓋が切られた。

 予選リーグPOOLB(ニュージーランド、ベネズエラ、チェコ、イギリス、デンマーク、ボツワナ、トルコと同グループ)に振り分けられた日本は、初戦で前回3位の「中南米の強豪」ベネズエラと対する予定であったが、その対戦相手・ベネズエラが「まさか!?」の「開催地到着遅れ」で試合に間に合わず……「不戦勝」となることが決定。大会規程によりスコア上7-0で日本の勝利となり、思わぬ展開で白星スタートを切ることになった。

 予選リーグ第2戦では、ボツワナと対戦。開幕戦(イギリス戦)で8回を投げ抜き、「ノーヒットピッチング」と快投したボツワナの「注目のエース」モガレ・ジョハネスが先発登板を回避したこともあって、初回にいきなり先制攻撃! 「主砲」松田光の「会心のツーランホームラン」で流れをつかむと、その後も片岡大洋のタイムリー、ソロホームラン等で着々と加点し、8-0(6回コールド)で快勝。第3戦・トルコ戦も前日に続き松田光の特大スリーランホームラン等で「先制攻撃」に成功し、その後も攻撃の手を緩めることなく、小見山敦吏のスリーラン、米良孝太のツーランホームランを含む「18安打」の猛攻で24-0と大勝。順調に開幕3連勝を飾った。

 第4戦では、「POOL内最大のライバル」「世界ランキング1位」のニュージーランドと激突。0-0で迎えた3回表、一死二塁から「代打」で起用された米良孝太のレフトへのタイムリーで1点を先制し、試合の流れを引き寄せたかと思われたが……ここで降り続いていた雨がさらに強まり、「降雨サスペンデッドゲーム」となることが決定。翌日の9時に再開された対戦は、先発・高橋速水に代わって3回裏から登板した岡﨑建斗が、一死一・二塁の場面でニュージーランドの2番・ネイサン・ヌクヌクに「超特大」の「逆転スリーランホームラン」を叩き込まれ、痛恨の3失点。続く4回裏にも7番・タイロン・バルトリーリョに「完璧な当たり」のソロホームランを浴び、4点目を失うと、流れは完全にニュージーランドへと傾き……5回裏には代わった3番手・森勇紀が2番・ネイサン・ヌクヌクに「2打席連続」のツーランホームランを浴び、2失点。6回裏には8番・ザーネ・ファンリショート、9番・キャンベル・エノーカに連続タイムリーを浴び、リードを広げられ、結果1-8(6回コールド)で完敗を喫する形となった。

 今大会「初黒星」を喫した日本は、続く第5戦でイギリスと対戦。2009年の第12回世界選手権で日本から勝利を挙げた「速球派右腕」ダルビー・ジェームスと対することになったが、2回表に森田裕介のタイムリーで先取点を奪い、「猛攻」の口火を切ると、この後浦本大嗣、川田直諒(2本・2打席連続)、糸瀬勇助の4本のホームラン等、ニュージーランド戦の鬱憤を晴らす「打線の活躍」で計14点を奪取し、14-0(4回コールド)の大勝。この勝利で息を吹き返した日本は、第6戦のチェコ戦も1番・森田裕介のプレーボール直後の「初球」をとらえる鮮やかな「先頭打者ホームラン」、今大会「初スタメン」となった大石司のタイムリーツーベース、「満塁ホームラン」、浦本大嗣のソロホームラン等で着々と加点し、9-1(5回コールド)で圧勝。予選リーグ最終日を待たずに「決勝トーナメント進出」を決め、予選リーグ最終戦となったデンマーク戦にも浦本大嗣のライト「場外」へ運ぶ「超特大」のツーランホームラン、片岡大洋のタイムリースリーベース等「7本の長短打」を集中し、一挙11得点! 守っても、松田光、岡﨑建斗とつなぐ投手リレーで相手打線を「ノーヒット」に抑え込み、完封!! 11-0(4回コールド)で完勝し、予選リーグ・POOLB2位通過を決めた。

【『勝負』をかけた決勝トーナメント! しかし……】

 いよいよ「最後の決戦」となる決勝トーナメントに突入。予選リーグ・POOLBを2位で通過した日本は、まず決勝トーナメント/1位・2位戦へと臨み、POOLAを「全勝」の1位で駆け抜けた「前回大会チャンピオン」ホスト国・カナダと対戦。満を持して先発登板した今大会「好調」の「キャプテン」高橋速水が「緩急巧み」に強力カナダ打線を抑え、4回までノーヒットピッチングを展開したが……0-0で迎えた5回裏、この回先頭の5番・デレク・メイソンにピッチャー強襲ヒットで出塁を許すと、続く6番・マーク・ジョンソンにレフトへ「弾丸ライナー」の「ツーランホームラン」を叩き込まれ、ついに失点。打線もカナダを上回る5安打を放ち、再三にわたって「チャンス」は作ったが、結局最後まで得点にはいたらず……0-2で敗れ、「敗者復活戦」へ回ることになった。

 翌日「敗者復活戦」へと回った日本は、決勝トーナメント/3位・4位戦(ボツワナ戦)を5-0で制し、勝ち上がったアルゼンチンと対戦。立ち上がりから先発・岡﨑建斗が「気迫のピッチング」を見せ、迎えた3回裏、二死一・三塁から「幸運」なワイルドピッチで1点を先制。このまま有利に試合を運ぶかと思われたが、1-0と日本リードで迎えた5回表の途中で岡﨑建斗から代わった2番手・森勇紀、3番手・客野卓也が、死球、ヒット等でピンチを招くと、ここから押し出しの死球、ヒットエンドラン、エラー、タイムリーと続いて「痛すぎる5失点」。その後5回裏、6回裏に1点ずつを返し、2点差まで追い上げたものの……残念ながら3-5で敗れ、結果「5大会連続の5位」という成績で「終戦」となってしまった。

【またしても越えられなかった、『ベスト4の壁』……】

 今回、男子TOP日本代表は岡本友章ヘッドコーチのもと、確かに「チーム一丸」となって戦い抜いた。現有戦力の中で個々の選手が「光るプレー」を見せてもいたし、そこから我々に「今後への可能性」を感じさせてくれたことも、また事実である。

 しかし……最終的には世界選手権の舞台で「5大会連続の5位」。今後、「本気」で「世界」で勝ちたいと思うなら、やはりこの「現実」を重く受け止める必要があるし、この壁を乗り越えるための、現実的で、具体的な強化プランを「日本協会挙げて」打ち出していかなければならないと強く思う。

 今大会を終え、非常に悔しいが……「世界トップレベルの国々(ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、アルゼンチン等)」とはまだまだ「明確な差」があるように感じる。

 まず、試合結果で見れば、今回はニュージーランド、カナダ、アルゼンチンに日本は敗れたわけだが、「世界の上位」に位置する強豪国からは1勝も挙げることができなかった。初戦のベネズエラ戦の勝利も不戦勝での勝ち星であり、実際戦えば、どうなっていたか正直なところ分からない。メダル圏内(3位以上)に食い込み、真の意味で優勝・世界一を狙うためにはこういった上位国を必ず倒さなければならないだけに……やはりこの事実こそ、日本が「5位の壁」に阻まれ続けている「最大の要因」といえるだろう。

 では、今回の日本の投打はどうだったのか。投手陣で最も「安定感」を示したのは、「キャプテン」の高橋速水であった。今大会の高橋速水は、速球(ライズ・ドロップ)とチェンジアップ、また、スピードを抑えた打者の膝元への「タイミングを外すローライズ」をうまくコンビネーションさせ、「緩急主体」のピッチングを展開。ニュージーランド、カナダの強力打線もこれには手を焼いていた。2009年の第12回世界選手権でも、当時日本代表であった中村健二が同じくこのローライズ、チェンジアップを巧みに交えて海外の打者を翻弄。「凡打の山」を築いたことが実際あっただけに、今後も国際大会の舞台で「有効な球種」になるのでは……と感じる。一方、「日本最速」と評され、「力で押す」タイプの岡﨑建斗は今回苦しいピッチングを強いられた。特に予選リーグ第4戦のニュージーランド戦では、相手打線にすべての球種を完璧に見切られ、3本の特大ホームランを叩き込まれる等「炎上」。決勝トーナメント・アルゼンチン戦で「130km/h超」を連発し、最後に「意地」を見せはしたが、大会を通じて結局「目を引くような活躍」を見せることはできなかった。今後「世界への挑戦」を続けていく上で、自らのどこを磨き、成長させていくのがベストか(「球威・球速」を追い求め、「135km/hを超える」ような投手をめざすのか。あるいはピッチングの「精度」にこだわり、投手としての「完成度」を高めていくのか……)、今大会での収穫と課題をしっかり洗い出し、必ずや「次」につなげてもらいたい。

 攻撃に関しては、かつて「ワールドレベルのスラッガー」として名を馳せた岡本友章ヘッドコーチが率いたチームらしく、「世界の舞台でもしっかりと振れる!」強いて言えば「スラッガータイプ」の打者を打線に揃える形となったが、「世界一線級の投手との対戦」になった場合にやはり「対応力」という面で厳しい部分があった。大会期間中、岡本友章ヘッドコーチ自身も「『アウトコースのさばき』と『ボールの見極め』がまだまだ世界トップレベルに達していない……」と今後の課題を語ってくれたが、日本国内とは違う「国際使用のバッティング技術」をいかに取り入れ、高めていけるかが大きなポイントとなりそうだ。選手からも「海外の投手の変化球(ライズ・ドロップ)はとにかく『手元で変化』する。また、『上位国のエース級』になるほどそれをキッチリとコースに投げ分けてくるので、なかなか攻略が難しい……」というコメントをよく聞くが、まずはこういった自らの「弱点」を一つひとつ「克服」していかなければならない。このあたりは、今年2月に実施した海外強化合宿(ニュージーランド遠征)でチームに帯同してくれたドニー・ヘイル氏(※合宿期間中、男子TOP日本代表の「特別コーチ」として主に打撃指導を行ってくれた)に引き続きサポートを依頼する等、「日本以外の技術論・スタイル」を学び、吸収する姿勢をもっと強めていっても良いように思う。

【『男子ソフトボールの未来』を切り拓くために!】

 先にもふれたが、最も重要なことはこの「現実」を各々(選手・関係者)がいかに受け止め、前進していくか……である。日本の「男子ソフトボールの未来を切り拓いていく!」という意味でも、やはり「男子TOP日本代表」というカテゴリーは「強く」あってほしいものだ。

 オリンピック競技へ復帰した「女子」に比べると、“男子”は今後も厳しい条件、環境の中で結果を残していかなければならない。だが、「男子だから……」と諦めてしまえば、そこで「挑戦」は終わってしまうし、世界選手権でのメダル獲得といった目標は一瞬にして「夢物語」と化してしまうだろう。

 日本国内において、現在も「男子ソフトボール」に熱い想いをたぎらせ、日本リーグ、実業団、クラブ、大学、高校、中学校、小学校等「各カテゴリー」で懸命にプレーする選手たちはたくさんいる。そういった「希望」が残されているからこそ、「世界への挑戦」を諦めてはならないし、逆に今日までの歴史・伝統を「今の日本代表選手たち」がしっかりと「若い世代」へ継承していく必要があるのではないだろうか。

 「世界ランキング1位」に君臨する「ソフトボール王国」ニュージーランドは、今大会、ファイナル(オーストラリア戦)で“劇的な逆転グランドスラム”を叩き込み、見事「2大会ぶり7度目」の世界一に輝いた。「世界最速の右腕」アダム・フォーカードと対し、終盤まで劣勢に立たされても、彼らに怯みは微塵も感じられない……。むしろ「ここからが勝負! 絶対に勝利を我がモノとする!!」と言わんばかりに、驚異的な集中力・闘争心で最後は試合をひっくり返して見せた。なぜ、彼らはここまで死に物狂いに戦えるのか……それは言うまでもなく、ニュージーランド代表チーム(ブラックソックス)であるということに誰よりも「誇り」を持ち、一人ひとりが真に「プライド」を抱いているからである。

 「本気」で「世界」で勝ちたいと思うなら……我々「日本」もそうならなければいけない。これまでの何倍、何十倍も「ソフトボール」に「情熱」を注がなければならない。

 「世界の舞台で勝つ」ということは決して甘くない。その「覚悟」と「決意」を持ってはじめて……道は切り拓かれていく!

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