去る10月20日(土)・21日(日)の両日、第45回日本女子ソフトボール1部リーグ第10節(最終節)が、静岡県裾野市・山梨県甲府市・福岡県北九州市の3会場で開催された。
すでに、1位が確定しているトヨタ自動車、激しい2位争いを演じているデンソー、ルネサスエレクトロニクス高崎、以上の3チームが決勝トーナメント進出を決めているが、決勝トーナメント進出「最後の椅子」となる4位争いがこの最終節までもつれ込み、前節(第9節)終了時点で、12勝8敗の4位につける豊田自動織機、それを11勝9敗で追う5位・Hondaの動向に注目が集まった。
注目の「4位争い」は、まず5位・Hondaが山梨県甲府市で開催された山梨大会に登場。大会初日、第1試合で今シーズン好調、2位につけるデンソーに挑んだが、4回表、永吉理恵、メーガン・ウィギンズに連続ホームランを浴び、ここまでHonda後半戦の躍進を支えてきたモーガン・メローが被弾。0−3の完封負けを喫し、終戦。「遅れてきた新戦力」モーガン・メローの「不敗神話」の終焉とともに、Hondaの快進撃、連勝も「7」でストップ。わずかに残っていた決勝トーナメント進出の可能性が消え、10敗目を喫した。
2位争いを演じる「ライバル」デンソーの快勝を見届けたルネサスエレクトロニクス高崎は、大鵬薬品と対戦。4回表、大久保美紗、岩渕有美、中野久美、森さやかが快打を放ち、2点を先取。7回表には、代打・宇野有加里が勝負を決めるツーランを放ち、このリードをエース・上野由岐子がしっかりと守り切り、完封。4−0で快勝し、最終戦のデンソー戦に勝利し、逆転しての2位確保に望みをつないだ。
大会2日目、後半戦を大いに盛り上げ、「台風の目」となったHondaが、前日の敗戦で決勝トーナメント進出の望みを絶たれたこともあり、大鵬薬品に2−5で敗れ、今節連敗。通算11勝11敗で今シーズンを終えた。Hondaは、最後の最後で息切れしたとはいえ、後半戦は快進撃を見せた。モーガン・メローがシーズン開幕から登板することができていれば……と悔やまれるところではあるが、堂々の戦いでリーグ後半戦の「主役」を務めた。
続く第2試合では、激しく2位の座を争うデンソーとルネサスエレクトロニクス高崎が対戦。決勝トーナメントを有利に戦える(敗者復活の権利が与えられる)2位の座を巡る争いは、ルネサスエレクトロニクス高崎が初回、デンソーの先発・ジョーダン・テーラーの立ち上がりを攻め、関友希央、峰幸代の内野安打などで1点を先制すると、エース・上野由岐子が、毎回のように走者を背負いながらも要所を締めるピッチングでデンソー打線に最後まで得点を許さず、完封。毎年のように優勝争いを演じ、リーグ終盤戦の激しい順位争いの「修羅場」をくぐり抜ける術を知り尽くしたルネサスエレクトロニクス高崎が、土壇場でデンソーをかわし、2位の座を確保した。
その「大事な一戦」を落したデンソーは17勝5敗。ルネサスエレクトロニクス高崎と同率で並びながら、直接対決で連敗を喫したのが響き、3位に後退。目標であった決勝トーナメント進出は果たし、その成績は胸を張ってよいものではあるのだが、トヨタ自動車、ルネサスエレクトロニクス高崎の「2強」との対戦では勝ち星なしの4連敗。このあたりが決勝トーナメントでの戦いの「不安材料」にならなければよいのだが……。決勝トーナメントでは、レギュラーシーズン以上の「アグレッシブ」な戦いを期待したいところである。
最終戦、Hondaに快勝し、「有終の美」を飾った大鵬薬品は6勝16敗の10位で今シーズンの全日程を終えた。決して上位争いをするチームではなかったが、豪快なバッティングで時に「大番狂わせ」を演じるなど、「存在感」のあるチームだった。今シーズン限りでの活動休止は残念な限りだが、すでに他チームに移籍が決まっている選手もいると聞く。「新天地」での活躍を祈るばかりである。
静岡県裾野市で開催された裾野大会には、すでに1位で決勝トーナメント進出を決めているトヨタ自動車、19年連続となる決勝トーナメント進出をめざす豊田自動織機が登場。
前節(第9節)で「まさか」の連敗を喫した首位・トヨタ自動車は、最下位のシオノギ製薬と対戦。2回裏、小野真希の三塁打からチャンスをつかみ、渥美万奈のタイムリーで先制すると、「絶対的エース」モニカ・アボットがシオノギ打線を2安打完封。19勝目を挙げた。
第2試合、4位の豊田自動織機は、裾野大会の第1試合で5位・Hondaが2位・デンソーに3−0で敗れたことで、この時点で4位以上が確定。最終節の結果に関わらず、19年連続の決勝トーナメント進出が決まったが、日立マクセル戦も2−1で勝利を収め、翌日の首位・トヨタ自動車との一戦に挑んだ。
そのトヨタ自動車との一戦は、先発・栗田美穂の力投で息詰まる投手戦となったが、打線がトヨタ自動車の「絶対的エース」モニカ・アボットを打ち崩すことができず、延長8回サヨナラ負け。13勝9敗の4位で決勝トーナメントへ進むことになった。
勝ったトヨタ自動車は20勝2敗。「全勝」での決勝トーナメントこそならなかったが、「絶対的エース」モニカ・アボットが健在で、それを援護する打線も強力。選手層も分厚く、「優勝候補の大本命」であることには変わりはない。決勝トーナメント制が導入されて以来、まだどのチームも成し遂げたことのない「3連覇」へ向け、「最後の決戦」に臨む。
4位の豊田自動織機は、19年連続の決勝トーナメント進出は果たしたものの、最後の最後まで苦しみ、お世辞にも「余裕のある戦い」といえるものではなかった。カナダ代表の「エース」でもあるダニエル・ローリー、そして日本代表の栗田美穂が控える投手陣がおり、攻撃陣も豊富なタレントを揃えている。潜在能力では「2強」に迫るものがあるだけに、勝負どころの決勝トーナメントでどんな戦いを見せてくれるか、注目したいところだ。
日立マクセルは5勝17敗の11位。例年であれば、入替戦に回るところだが、大鵬薬品の休部により、10位扱いとなり、入替戦を回避できた。第7節から続いていた連敗も、最終戦でシオノギ製薬に4−0で快勝し、「8」でストップ。最後は勝利で終わることができ、是非ともこの良い流れを来シーズンにつなげてほしいものである。
シオノギ製薬は2勝20敗の最下位。これも例年であれば、無条件で2部降格となるところが、大鵬薬品の休部で11位扱いとなり、2部リーグ2位のドリーム☆ワールドとの入替戦に回ることになった。ある意味では、非常にラッキーであり、幸運に恵まれた1部残留のチャンスを生かすべく、短期間でのチームの立て直しが急務である。
福岡県北九州市で開催された福岡大会には、最後まで決勝トーナメント進出を争いながら、あと一歩のところで涙を呑んだ日立ソフトウェア、太陽誘電、佐川急便、戸田中央総合病院の4チームが出場。
大会初日、第1試合では、佐川急便が日立ソフトウェアに7−2の逆転勝ち。初回に守備の乱れから先制され、一度は逆転に成功したものの、再び同点に追いつかれるという熱戦となったが、「主砲」ステーシー・ポーターのスリーランなどで6回裏に大量5点を奪い、ジャスティン・スメサート、信長香菜の投手リレーで強打の日立ソフトウェア打線の反撃を凌ぎ、10勝目を挙げた。
第2試合の戸田中央総合病院対太陽誘電の一戦は、戸田中央総合病院の先発・田家由里が好投。太陽誘電打線を無得点に抑えれば、太陽誘電は藤田倭、尾楓]良の継投で対抗。試合は息詰まる投手戦となり、最終回、太陽誘電が山本晴香のタイムリーで劇的なサヨナラ勝ち。尾楓]良に嬉しいリーグ初勝利をプレゼントした。
大会2日目、第1試合では戸田中央総合病院が、佐川急便を相手に「エース」李Lの力投で1−0のサヨナラ勝ち。勝ち星を二桁に乗せ、通算10勝12敗で今シーズンを終了。エース・李Lを中心に、1部昇格1年目での二桁の勝ち星は立派なもの。中でも、優勝争いの常連・ルネサスエレクトロニクス高崎に連勝、特に「世界のエース」上野由岐子を打ち込んでの勝利は価値ある勝利といえ、今シーズン最も印象に残る場面の一つであった。
第2試合では、日立ソフトウェアと太陽誘電が対戦。日立ソフトウェアが太陽誘電・森真里奈の立ち上がりをとらえ、粟倉陽香、溝江香澄の連続タイムリーと相手守備の乱れで3点を先制。このまま、有利に試合を進めるかと思われたが、太陽誘電の打線が爆発! 3回裏、佐野志津香、河野美里の連打と四球で満塁とし、原田のどかがライト前に2点タイムリー。1点差に詰め寄り、佐藤みなみのセンターオーバーのタイムリーツーベースで同点に追いつき、続く4回裏には、一死満塁の好機に代打・岡本由香が走者一掃の三塁打。さらに河野美里にもタイムリーが飛び出し、この回4点を勝ち越した。
このリードを2回からロングリリーフした尾楓]良が好投。強打の日立ソフトウェアに追加点を許さず、そのまま逃げ切り、11勝目を挙げた。
この一勝で通算成績を11勝11敗とし、Hondaと同率で並んだ太陽誘電だが、直接対決での連敗が響き、6位となった。
また、この試合に敗れた日立ソフトウェアを含め、佐川急便、戸田中央総合病院が10勝12敗の同率で並んだが、3チームの直接対決における得失点差により、7位・日立ソフトウェア、8位・佐川急便、9位・戸田中央総合病院の順となった。
4月の開幕節から10月のこの第10節まで、死力を尽くした戦いが終わった。この結果、トヨタ自動車、ルネサスエレクトロニクス高崎、デンソー、豊田自動織機の上位4チームの決勝トーナメント進出が決定。「最後の決戦」に挑むことになる。
戦いの舞台は、決勝トーナメントへと移され、11月10日(土)・11日(日)の両日、京都府京都市・わかさスタジアム京都で雌雄を決することになる。
第45回 日本女子ソフトボール1部リーグ 第10節(最終節)終了時点 全チーム成績 |
順位 |
チーム名 |
勝 |
敗 |
1位 |
トヨタ自動車 |
20 |
2 |
2位 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
17 |
5 |
3位 |
デンソー |
17 |
5 |
4位 |
豊田自動織機 |
13 |
9 |
5位 |
Honda |
11 |
11 |
6位 |
太陽誘電 |
11 |
11 |
7位 |
日立ソフトウェア |
10 |
12 |
8位 |
佐川急便 |
10 |
12 |
9位 |
戸田中央総合病院 |
10 |
12 |
10位 |
大鵬薬品 |
6 |
16 |
11位 |
日立マクセル |
5 |
17 |
12位 |
シオノギ製薬 |
2 |
20 |
※5位・6位は同率チーム同士の対戦の勝敗で決定
※7位・8位・9位は同率チーム同士の対戦の勝敗は1勝1敗で並ぶため、同率チーム同士の対戦の得失点差で決定
■第45回日本女子ソフトボール1部リーグ 決勝トーナメント 組み合わせ
開催地:京都府京都市・わかさスタジアム京都
期 日:平成24年11月10日・11日
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