第40回 日本女子ソフトボールリーグ1部・2部入替戦(2007.11.9)


第1戦、大事な初戦は戸田が先制!

第1戦、3安打・3打点の活躍を見せた戸田・坂元

初戦の先発を任された戸田のエース・堤が力投!

大鵬も懸命の戦いを見せたが……

大鵬は連投のエース・小橋にすべてを託したが…

第2戦も戸田が先制!

戸田・池田の一打で勝負は決まった

大鵬も必死に防戦に努めたが……

1部残留を決め、プレッシャーから解放され、泣き崩れる戸田・堤

戸田中央総合病院、連勝で1部の座を死守!


 第40回日本女子ソフトボールリーグ1部・2部入替戦が、11月8日(木)・9日(金)の両日、静岡県伊豆市の天城ドームで行われた。
 この入替戦では、1部リーグ11位の戸田中央総合病院と2部リーグ2位の大鵬薬品が対戦。3回戦制(先に2勝したチームが1部残留もしくは昇格が決定)の入替戦に臨んだ。
 結果は、戸田中央総合病院が7−2、8−3で大鵬薬品に連勝し、1部残留を決めた。

 8日(木)に行われた第1戦は、大鵬・小橋葵、戸田・堤千佳子両エースが先発。両チームとも「絶対に負けられない戦い」とあって、緊迫した雰囲気の中、「プレーボール」がかかった。
 序盤は両エースが一歩も譲らぬ力投を見せ、投手戦の様相を呈していたが、3回裏、戸田が均衡を破る。一死から1番・今泉早智がセンター前ヒットで出塁。2番・宮坂幸恵のプッシュバント気味のサードゴロの間に二塁へ進むと、3番・坂元令奈が先制のライト前タイムリー。1点を先制し、試合の流れを引き寄せると、5回裏にも安打、敵失、捕逸で無死二・三塁の絶好機をつかみ、一死後、再び坂元令奈がセンター前へ力で運ぶポテンヒットで2点目。4番・吉田真由美はファーストファウルフライで二死となったが、5番・池田愛美が四球を選び、満塁とすると、6番・橋本夕紀子がライト線へ走者一掃のスリーベース。この回大量4点を挙げ、6回裏にも3番・坂元令奈、4番・吉田真由美の長短打などで2点を追加。大事な初戦をモノにした。
 一方、大鵬は「挑戦者」らしい思い切りのよいスイングで戸田のエース・堤千佳子に挑んだが、序盤は長打性の当たりがことごとく戸田外野陣の好守に阻まれ、5回表の一死二・三塁のチャンスでは、9番・宇井枝里子の放った痛烈な当たりがサードライナーとなり、ダブルプレー。ツキにも見放され、一瞬にしてチャンスを潰し、6回表、7回表に1点ずつを返して「意地」を見せはしたが、時すでに遅く、結果的には大差で敗れた。
 7−2というスコアほど、両チームに力の差があったわけではなく、序盤は互角の展開であり、戸田外野陣の好守がなければ、2部リーグでチーム打率3割8分2厘と打ちまくった大鵬自慢の強力打線が勢いづき、まったく逆の展開になっていた可能性もあった。
 しかし、初回の攻撃で大鵬のエース・小橋葵が2球を投じたところで、戸田・高橋三昌監督は「イリーガルではないか」と抗議してプレッシャーをかけ、ただでさえ緊張する立ち上がりの投手心理に揺さぶりをかけるなど、試合運びや駆け引きといった面で1部リーグの強豪相手に揉まれてきた戸田に「一日の長」があった。
 特に、2点目の入った5回裏、大鵬はバント処理のミス、パスボールで無死二・三塁のチャンスを与えたばかりか、一死後、先制タイムリーを放って乗っている坂元令奈にツーボールから強引に勝負にいって再びタイムリーを浴びてしまった。ベンチは空いている一塁へ歩かせるよう指示していたように見えたが……。5回表に一死二・三塁の一打逆転のピンチを併殺で切り抜けた戸田守備陣の冷静さとは対照的な場面であり、こういった「目に見えない差」「記録には表れないミス」が勝敗を分けた。

 9日(金)の第2戦は、初戦をモノにし、勢いに乗る戸田が先攻だったこともあり、初回の攻防で勝負が決まった。
 戸田は先頭打者・今泉早智がいきなり痛烈な当たりのセンター前ヒット。2番・宮坂幸恵が手堅く送り、第1戦で3安打・3打点と大活躍の3番・坂元令奈が三遊間を破り、一・三塁。すかさず盗塁で二・三塁とした後、4番・吉田真由美への5球目がワイルドピッチとなり、労せずして先取点を挙げると、なお二死一・三塁と攻め立て、6番・池田愛美がライトオーバーのタイムリースリーベース。二者を迎え入れ、続く7番・鈴木枝里子はレフトフェンス直撃のツーベース。前日の勢いそのままに初回から打者一巡の猛攻を仕掛け、この回大量4点を挙げた。戸田はその後も攻撃の手を緩めることなく、12安打・8得点と打ちまくり、連勝で1部残留を決めた。
 一方、大鵬は2部リーグで14勝3敗と17試合すべてに登板し、チームの勝敗のすべてにかかわり、100イニングを投げ抜いたエース・小橋葵が1回もたずにKO。チームの躍進を支え続けた「鉄腕」が静かにマウンドを降りた時点で、事実上その戦いを終えたといえるだろう。3回裏には2部リーグで打率5割3分8厘・29打点で首位打者・打点王の二冠を獲得した5番・松山夏美のタイムリーで2点を返し、5回裏には3番・小原友里、4番・辻本明香の長短打で1点を返すなど、「大鵬らしさ」の片鱗は見せたが、連敗を喫し、1シーズンでの1部復帰はならなかった。

 戸田中央総合病院は1部リーグの最終日・最終試合まで最下位に低迷し、2部リーグへの「自動降格」の崖っぷちから、最終戦の佐川急便戦に勝ち、入替戦出場の権利を手にした。佐川急便のエースであり、アトランタ、シドニー、アテネと3大会連続でオリンピックメダリストとなったオーストラリアの「国民的英雄」であるターニャ・ハーディングから4番・吉田真由美、キャプテンの池田愛美が相次いでホームランを放ち、2部リーグ自動降格の危機を脱したときから、すでにこの「流れ」は決まっていたのかもしれない。今シーズン開幕から続いた泥沼の12連敗。シーズン途中での監督交代……。様々な試練を乗り越え、チーム一丸となった戦いで戸田中央総合病院が1部の座を死守した。