2015.2.10
 

 

平成26年度
全国審判員・記録員中央研修会


新たなシーズンの幕開けに備えて!




恒例の全国審判員・記録員中央研修会を開催

  「審判・記録からも世界で活躍できる人材を!」
と開講式で挨拶を述べた日ソ協・徳田脂長



日ソ協・佐藤重孝審判委員長は、
「観客(観る側)の目線」に立ったゲームコントロールを!」
と今後の審判員の課題について言及



昨年の世界女子選手権に派遣審判員として参加した
岡野秀子氏による講演も行われた



「日本の記録員も世界の舞台へ!」
今後への期待を熱く語った、日ソ協・井之上哲夫記録委員長



今回の中央研修会では、改訂された
「スコアリングマニュアル第3版」もお披露目



審判の部の実技研修では、
今回も男女の日本リーグ所属チームが協力!



審判のローテーションについても
実戦形式で多くの時間を割き、入念な確認を行った



記録の部、最終日では
第17回アジア競技大会に派遣記録員として参加した
八木美代子氏が講演を行い、現地での体験談を語った



【審判の部】 研修会参加者



【記録の部】 研修会参加者
新たなシーズンの幕開けは……もうすぐ!



平成26年度全国審判員・記録員中央研修会(愛知県刈谷市)

 去る2月6日(金)〜8日(日)の3日間、愛知県刈谷市・刈谷市総合文化センター・双葉グラウンドを会場に、「球春」の訪れを告げる恒例の全国審判員・記録員中央研修会が開催された。

 この中央研修会には、全国各都道府県支部の審判委員長・記録委員長またはそれに準ずる「指導的役割」を担う140名が参加。2015年のルール改正点をはじめ、それに伴う審判員・記録員の実務的な変更点を中心に熱心な研修が行われた。

 全国有数のチーム登録数、審判員・記録員登録数を誇る愛知県において6年連続で実施された中央研修会。7年目を迎えた今回も、昨年と同じく、男女の日本リーグで活躍する豊田自動織機、デンソーの「ホームタウン」として知られる刈谷市で実施され、十分な経験を積んだ愛知県ソフトボール協会、刈谷市ソフトボール連盟のスタッフが一致団結して献身的にサポート。「真心」の込もった対応で、すべての関係者を「おもてなし」し、万全の準備態勢で、無駄がなく、スムーズに研修会を進行させるための一翼を担っていた。

 研修会初日、開講式の冒頭では、公益財団法人日本ソフトボール協会・徳田脂長が挨拶に立ち、「新たなシーズンの幕開けに備え、今年もこの全国審判員・記録員中央研修会を開催する時期がやってきた。昨年は、私自身も第14回世界女子選手権大会(オランダ・ハーレム)、第17回アジア競技大会(韓国・仁川)と両大会に足を運び、試合の様子はもちろん、大会の組織、運営面についても視察してきたが、今後はやはり我々日本がもっとリーダーシップを発揮していかなければならないと強く感じている。大会にチームを出場させ、そこで勝つということだけではなく、審判員・記録員を含めて、大会を組織、運営する側にも回り、あらゆる分野において『世界の舞台で活躍できる人材』を育てていかなければならない。この中央研修会の趣旨は、全国各都道府県支部で『指導的役割』を担う審判員・記録員の皆さんが、それぞれ統一見解を図るとともに、ここで研修、確認した事項を所属支部に持ち帰り、正確に伝達することであるが、今後はこの先日本のソフトボール界に求められるであろう『国際化』という部分にもぜひ目を向けていただき、審判・記録の分野からも、『世界の舞台で活躍できる人材』を一人でも多く育てていってもらいたい」と参加者を激励。

 続いて、地元・愛知県ソフトボール協会より野間保正副会長、刈谷市ソフトボール連盟からは艸田聰会長がそれぞれ歓迎の言葉を述べ、開講式を締めくくり、3日間にわたる研修会がスタートした。

 開講式の後には、早速、審判・記録それぞれに分かれての研修に入り、審判委員会では、佐藤重孝審判委員長がまず平成26年度の大会を振り返り、「昨年、各種大会をいくつか派遣で回ったが、日本リーグをはじめ、やはり『試合時間の長さ』が課題に挙げられることが多い。この点に関しては様々な要因が考えられるが、まずは何より我々審判員がしっかりとゲームをコントロールし、『試合のスピードアップ』を図っていくことが重要である」と言及。また、「観客スタンドがある女子1部リーグの会場(野球場を使用した場合)などでは、選手のプレーだけではなく、審判員の動きや判定にいたるまで広く見渡すことができる。正確なジャッジが求められるということは審判員として当たり前のこと。ぜひ『観客(観る側)の目線』にも立ち、より魅力ある試合が展開されるようなゲームコントロールを心がけてもらいたい」と、審判員としては判定の正確さを追求するだけでなく、様々な状況の中でしっかりと試合をコントロールする力を磨くことも必要不可欠であることが強調された。

 続いて、2015年のルール改正点についての研修が行われ、阿久津静副委員長が、今回のルール改正について説明。「試合のスピードアップ」を目的とし、ISF(国際ソフトボール連盟)ルールとしては2014年1月1日から施行されている「テンポラリーランナー(捕手が塁上の走者となっていて二死となったとき、あるいは二死後、捕手が出塁し、走者となったとき、捕手の代わりに走者となる選手のこと)」、また「準備投球に関する規制(初回と投手が交代したとき以外の準備投球が1分を超えたとき、または超えそうなときは、審判員は「残り1球」と制限することができる)」が、新たにJSAルールにも採用されたこと。

 すでにISFルールに採用されている「打者は、投球間にサインの確認や素振りをするとき、打者席内に片足を置いておかなければならない」というルールについて、「打者席から両足を外した場合、打者に対してワンストライクが宣告される」ぺナルティの適用は見送られたこと(国際大会ですでにこのルールを経験している選手はともかく、日本でいきなりこのルールを採用しては、大きな混乱を招くことになりかねないため)。

 安全性の面を考慮し、従来自チームベンチ側の次打者席で待機していた次打者が、「一塁側・三塁側どちらの次打者席で待機してもよい」こととなり(例えば三塁側のベンチで左打者が打席に入っており、ファウルボールが次打者席に飛んでくる危険性があるような場合に、自チーム側の次打者席にこだわらず、相手チーム側(一塁側)の次打者席で待機してもよいこととなった)、危険性の排除や、すぐに打席に入りやすい等の理由で、どちらの次打者席で待機するかを自由に選択できるようになったことが、それぞれ入念に確認された。

 この後、吉里弘副委員長を中心に、「競技者必携」の修正点について一項目ごと丁寧に確認。漏れなく正確な伝達が行えるようにと、前年とその修正点や内容を修正項目ごとに比較しながら、入念な確認作業が行われた。

 続いて、村島成幸副委員長を中心に、「審判実務について」の研修。審判員としての心構えを参加者全員に熱く語るとともに、翌日の実技研修に向け、確認・徹底しておくべき点が一つずつ丁寧に説明された。

 初日の日程の最後は、昨年開催された第14回世界女子選手権大会(オランダ・ハーレム)に派遣審判員として参加した岡野秀子氏(埼玉県協会)が講演。「第14回世界女子選手権大会に参加して」をテーマに、大会を通じて感じたことや現地での様子が語られ、「昨年の世界女子選手権に審判員として参加し、強く感じたことは、あらゆる状況の中でいかに『合理的に動く』か、また『何を見るためにどこへ動くのか』ということ。ISF審判委員長のボブ・スタントンには、塁審に立つ際、外野に飛んだ打球を判定する場合は、とにかく中(インフィールド)に入りなさい!と何度も指導される場面があり、まず打球の行方や守備者の捕球が見やすい位置に動き、判定することが強く求められた」と、国際大会で感じた日本との様々な違いを説明。また、「試合のスピードアップを図るという部分に関して、大会を通じて2時間を超えた試合はなく(サスペンデッドゲームを除く)、この点においては各審判員が徹底してゲームをコントロールしていた」「国際大会ではコミュニケーション能力が重要。今大会を通じて改めて語学の大切さを痛感した」と、今後日本の審判員に求められる要素についても述べた。

 2日目は、刈谷市の双葉グラウンドに場所を移しての実技研修。ここでは男子東日本リーグ・トヨタ自動車、デンソー、豊田自動織機、女子1部リーグ・豊田自動織機の協力を得て、基本動作の確認からはじまり、投球判定。「ストライク」「ボール」と大きな声がグラウンド中に響き渡った。

 この後、「不正投球の判定」「各塁の判定の要点」の研修へと移り、特に一塁塁審が離塁アウトを宣告する際の注意点を入念に確認。審判委員会からは、「当たり前のことではあるが、離塁アウトを宣告する際は、大きな声でハッキリとコールし、まず会場全体にしっかりと伝えることが重要!」と強調され、何よりも自らのコール、判定に自信と責任を持つこと。また、その判定後のゲームコントロールをしっかりと行うことが参加者全員に徹底された。

 昼食を挟むと、ローテーションの研修。ここでは、地元・愛知県の安城学園高校、修文女子高校、豊川高校、聖霊高校、尾北高校、佐屋高校、岡崎西高校女子ソフトボール部の協力を得て、一昨年「ISF方式」に変更された4人制のローテーションを実戦形式で確認。走者を設定した状況から、外野に打球が飛んだ場合のケースを中心に研修を行い、2日目の日程を終了した。

 最終日には、ルール改正や競技者必携の改訂について再度確認を行った後、各ブロックに分かれて地区別研修を実施。「審判員の減少に歯止めをかけるためには」をテーマに、それぞれのグループで熱い議論を交わし、今回の研修の全日程を終えた。

 記録委員会では、まず井之上哲夫記録委員長が昨年の大会を振り返り、現状の問題点や今後の課題に触れた後、2015年のルール改正点・競技者必携の修正点等を確認。

 続いて、山田隆夫副委員長が昨年の反省点を洗い出し、次年度への課題を見つめ直すと同時に、記録委員会の「統一事項」が確認され、全日本大会や日本リーグを迎えるにあたって、どのような準備をして大会に臨めばよいか、あるいは開催地記録委員長としての責務・役割は何か等が再確認された。

 次に、遠藤正人副委員長が2015年2月1日に発行された「スコアリングマニュアル第3版」について説明。今回の改訂にいたるまでの経緯や、国際大会のスコアカードでも通用する記帳方法の取り入れ、テンポラリーランナーなど新しいルールにも対応した改訂部分をそれぞれ丁寧に解説し、「今後はこのスコアリングマニュアル第3版に示された内容に基づき、理解を深め、記録員としてさらなるスキルアップに励んでもらいたい」と参加者全員を鼓舞した。

 この後、スコアカードの記帳に関する研修が、遠藤正人副委員長、川田稔之、伊藤高行委員によって行われ、あらかじめ設定された試合経過に基づき、スコアカードを記帳。特に選手交代があった場合の集計等、どのような点に注意すべきか、誤りやすいポイントはどこか等が明示され、その解答を照合しながら、入念に確認作業を行い、初日の研修を終了した。

 2日目は、芦澤忠、佐藤正典委員による、スコアカードの点検に関する留意点の研修が行われ、スコアカードを点検する際、正確なスコアカードを完成させるための点検のポイント、効果的で効率のよい点検方法・作業手順が提示され、実際のスコアカードの点検ミスの具体例を検証。誤りやすい項目、それを防ぐための作業手順・確認方法等、正確かつ迅速なスコアカードの完成と提供をめざす研修が行われた。

 続いて、下村征二副委員長、吉田ケイ子委員が実際の試合のスコアカードを基に、それを集計・点検する研修を実施。この分野は、全国各都道府県支部の記録委員長、または「指導的役割」を担う面々が日頃重要視される実務研修とあって、参加者は皆真剣そのもの。独特の緊張感の中、研修が進められた。

 午後からは、関根睦、常岡昇委員が中心となり、導入4年目となる記録集計システム「Windmill」を利用したコンピュータ研修。研修参加者を複数のグループに分け、実際の大会を想定し、仮想「記録本部」を立ち上げ、「Windmill」を活用した記録集計・処理を行った。

 また、「戦評」の点検・校正についても研修が行われ、本間恵美子、堀義光委員から、その作成方法や活用方法等がレクチャーされ、2日目の研修を終えた。

 最終日は、まずスコアカードの記帳・集計について、川田稔之、吉田ケイ子委員が注意すべき点や誤りやすい点を再確認。事例研修では、実際の試合で起こった事例について、本部享委員が具体的な記帳方法を確認し、研修を進めた。

 事例研修が終わると、昨年開催された第17回アジア競技大会(韓国・仁川)の派遣記録員・八木美代子氏(静岡県協会)が、「第17回アジア競技大会を振り返って」をテーマに講演。アジア競技大会に派遣記録員として参加することとなった経緯や、大会までの準備、大会を通じて感じたことなどがパワーポイントで分かりやすく説明され、「打順表やスコアカードの様式、記録業務の進め方等、日本とは異なる部分がたくさんあり、現地では悪戦苦闘の毎日(笑)であったが、本当に貴重な経験を積むことができた。大会記録本部のリーダーとして、スコアカードの記帳、点検と一人何役もこなすことは日本ではあまりない。国際大会でも通用する記録員として、もっともっとスキルアップしたいと強く感じたし、語学についても今後さらに身につけていきたいと思う」と、現地での体験談を語り、記録員として描く今後の「夢」についても、晴れやかな表情で述べていた。

 最後は、井之上哲夫委員長が研修会を総括。記録委員会の活動方針を改めて参加者全員に説明した後、今後の展望にもふれ、「現状では記録員に国際資格はない。国際記録員制度の制定が課題の一つになるよう働きかけることも、今後必要になるのではないかと考えているし、記帳法についてもいずれは世界で統一できるよう、積極的に働きかけていかなければならないと感じている。これからは、日本からも記録員がどんどん世界の舞台に出ていくべき!今後、記録員の減少に歯止めをかけるためにも、それが新たな目標、モチベーションとなってくれれば嬉しいし、この記録の分野からも『世界の舞台で活躍できる人材』が一人でも多く出てきてくれることを期待したい」と熱く語り、研修会を締めくくった。

大会は選手だけでは成り立たない。
新たなシーズンの幕開けに向けて、それを支える審判員・記録員もこうして
着々と「準備」を進めている。