第57回全日本総合男子選手権大会


(2011.9.20)  

日本「最高峰」の大会、
全日本総合男子選手権大会が開催された

「日本一」の座をめざし、熱戦を展開!

連覇をめざす高知パシフィクウェーブ
難敵・大阪桃次郎を倒し、決勝進出!

地元で初の優勝を狙った大阪桃次郎。
地元の熱い声援を背に戦ったが……

「二冠」を狙う平林金属クラブ。
日本体育大にサヨナラ勝ち!

「大学の雄」日本体育大。7回二死まで
リードし、勝利を目前にしていたが……

迷走台風15号と秋雨前線の影響で
決勝当日は大雨となり、中止が決定

高知パシフィックウェーブ、平林金属クラブ
両チーム優勝となり、両チームに優勝旗が

全日本クラブ選手権に続き、全日本総合
選手権でも初優勝を飾った平林金属クラブ

2連覇を達成した高知パシフィックウェーブ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


迷走台風15号と秋雨前線で天候悪化
高知パシフィックウェーブ(高知)
平林金属クラブ(岡山)
2チーム優勝で大会に幕





 第57回全日本総合男子選手権大会が、大阪府大阪市・舞洲運動広場を会場に、9月17日(土)〜20日(火)の4日間(当初予定では9月17日(土)〜19日(月/祝)の3日間開催の予定であったが、大会初日の試合途中から天候が悪化し、1回戦5試合が未消化。その後、大会3日目終了時点で準決勝までを行ったが、決勝戦が予備日に延期された)、開催された。
 しかし、迷走を続けていた台風15号の影響と、それに刺激を受けて活発化した秋雨前線の影響で、予備日(20日/火)も朝から激しい雨。最後の最後まで試合を行おうと、決勝戦に勝ち残った高知パシフィックウェーブ(高知)、平林金属クラブ(岡山)の両チームは早朝から試合に備え、大会の主管協会である大阪協会・大阪市協会をはじめとする運営スタッフもグラウンド整備に奔走したが、激しい雨の降り止む気配はなく、午前9時に中止を決定。併せて、高知パシフィックウェーブ(高知)、平林金属クラブ(岡山)の両チームを優勝とすることも決定した。

 大会は、初日(9月17日/土)から波乱含みの展開。台風15号、16号が接近、それに伴い秋雨前線も活発化する等、悪天候が心配される中、大会がスタートしたが、試合途中から天候が悪化。この日予定されていた1回戦16試合のうち、5試合が中止・順延となり、いきなり試合スケジュールの変更を余儀なくされた。

 大会2日目(9月18日/日)に1回戦の残り5試合と2回戦8試合の計13試合を行い、ベスト8が出揃った。
 前年の覇者であり、2連覇を狙う高知パシフィックウェーブ。接戦の連続を勝ち上がった中京大(愛知)。堅実な試合運びを見せるトヨタ自動車(愛知)。豊富なタレントを揃え、日本リーグをはじめ、全日本クラブ選手権では、すでに「頂点」に立った経験があり、この全日本総合選手権でも「優勝」を狙う地元・大阪桃次郎(大阪)。来年の「ぎふ清流国体」に向け、強化を進め、各種大会で好成績を残している岐阜エコデンSC(岐阜)。西日本リーグの強豪・旭化成(宮崎)を倒し、昨年のインカレの覇者・環太平洋大(岡山)を7−6の接戦の末、振り切った日本体育大(東京)。全日本クラブ選手権で初優勝、この大会で「二冠」を狙う平林金属クラブ。昨年の日本リーグの覇者、昨年のこの大会でも準優勝と、上位進出の常連・ダイワアクト(佐賀)。以上の8チームが準々決勝に駒を進めた。

 大会3日目(9月19日/月・祝)の準々決勝では、まず連覇を狙う「王者」高知パシフィックウェーブが中京大の「挑戦」を一蹴。7−0の5回コールド勝ちを収め、準決勝進出を決めた。
 トヨタ自動車対大阪桃次郎は、初回に大阪桃次郎がドニー・ヘイルのツーランで2点を先制すると、その後も着々と加点。日本代表・中村健二が1失点の好投を見せ、トヨタ自動車打線を抑え込み、5−1で快勝した。
 岐阜エコデンSCと日本体育大の一戦は、岐阜エコデンSCがソロホームラン、ワイルドピッチで序盤に2点をリードしたものの、日本体育大が4回表、中西康太のタイムリーツーベースで1点を返し、5回表には山崎正晴のセンター前へ同点のタイムリー。2−2の同点のまま、延長タイブレーカーへともつれ込んだ。延長8回表、日本体育大は一死三塁から深谷祐太が強い向かい風をモノともせず、決勝のツーランホームラン。5−3で岐阜エコデンSCを振り切り、2年ぶりの準決勝進出を決めた。
 平林金属クラブ対ダイワアクトは、初回にダイワアクトがネイサン・ヌクヌク、アンドリュー・カークパトリックの連打等で1点を先制したが、全日本クラブ選手権の覇者・平林金属クラブがすぐに反撃。2回表、谷口淳のソロホームランで同点に追いつくと、3回表にも道本健次にソロホームランが飛び出し、1点を勝ち越し。2−1とリードすると、終盤6回表には、平本拓朗のタイムリーで貴重な追加点を挙げた。
 守っては、今年6月の第2回ISF男子ワールドカップ(チェコ・プラハ)で世界の舞台を経験した日本代表・松田光が力投。2回以降はダイワアクトに追加点を許さず、3−1で快勝し、3年ぶり2度目のベスト4進出を果たした。

 この日の第3試合に組まれた準決勝2試合は、いずれも延長タイブレーカーにもつれ込む熱戦となった。
 高知パシフィックウェーブ対大阪桃次郎は、高知パシフィックウェーブが4回表、二死から田中省次のセンター前ヒット、安井伸二のバントヒット、小野洋平の四球で満塁とし、片岡大洋がライトオーバーのタイムリースリーベース。満塁の走者を一掃し、3点を先制。日本代表の好投手・高橋速水を擁する高知パシフィックウェーブだけに、これで勝負は決まったかと思われた。
 しかし、地元の熱い声援を受ける大阪桃次郎もその裏、すぐに反撃。2本の安打と四球で二死満塁とし、澤田優生への初球が死球となり、押し出し。5回裏にも、今井光太郎のタイムリーで1点を返し、1点差に迫った。土壇場の7回裏には、筒井拓友の右中間を深々と破るスリーベースでチャンスをつかみ、一死後、伊藤皓二が起死回生のタイムリーツーベースを放ち、3−3の同点。試合を振り出しに戻し、延長タイブレーカーへ突入した。
 8回は両チーム無得点に終わり、迎えた9回表、高知パシフィックウェーブは、この回先頭の小野洋平が、8回からリリーフした大阪桃次郎・中村健二のワンストライクからの2球目を強振すると、突風・暴風に近い逆風をモノともせず、レフトスタンドへ突き刺さる決勝ツーランとなり、日本代表で「4番」を任された男の豪快な一発が勝負を決め、5−3で高知パシフィックウェーブが勝利を収め、連覇へ「王手」をかけた。

 もう一方のゾーンは、全日本クラブ選手権の覇者・平林金属クラブに「大学の雄」日本体育大が挑む構図となったが、すでに日本リーグ勢2チーム(旭化成、岐阜エコデンSCの2チーム)を破って、「若さの勢い」に乗って突っ走る日本体育大が先手を取った。
 日本体育大は3回表、四球で出塁した走者がすかさず盗塁。後続が連続三振で二死となったが、立石壮平が三振振り逃げで一・三塁とチャンスを広げると、果敢に重盗を仕掛け、一塁走者が「おとり」となり、一・二塁間に挟まれる間に、三塁走者・古敷谷亮が判断良く本塁を陥れ、ノーヒットで先取点を挙げた。
 守っては、エース・立石壮平が力投。毎回のように得点圏に走者を背負いながら、「決定打」を許さず、準々決勝で「世界一の左腕」アンドリュー・カークパトリック(ダイワアクト)を攻略した平林金属クラブの強力打線を無得点に抑え、試合は最終回を迎えた。
 1点を追う平林金属クラブは、この回先頭の西山幸助が絶妙のセーフティーバントで出塁。すかさず盗塁を決め、無死二塁としたが、後続が三振、セカンドフライに倒れ、「このまま日本体育大の逃げ切りか……」と思われた。しかし、絶体絶命の窮地で道本健次が起死回生の同点タイムリー。「学生には負けられない」という日本リーグ勢、全日本クラブ選手権の覇者の「意地と執念」が土壇場で試合を振り出しに戻し、試合の決着は延長タイブレーカーへともつれ込んだ。
 8回表、「若きエース」松田光が日本体育大の攻撃を、三振、セカンドゴロ、セカンドフライと三者凡退に切って取り、試合の流れを完全に引き寄せると、打線もそれに応え、その裏、二死二塁から西山幸助が日本体育大・立石壮平の投じた139球目をセンター前にはじき返し、二塁走者がホームイン。手に汗握る熱戦にピリオドを打ち、決勝進出を決めた。

 大会最終日(9月20日/火)、「迷走台風」台風15号の接近と、それに刺激された秋雨前線の影響で朝から雨。午前9時、決勝戦試合開始時刻になっても雨は止む気配を見せず、高知パシフィックウェーブ・岡本友章監督、平林金属クラブ・吉村啓監督が大会本部に招集され、米谷文克競技委員長(大阪協会理事長)、高橋伸次競技副委員長(財団法人日本ソフトボール協会派遣理事)らと協議した結果、決勝戦の中止を決定。併せて、決勝戦に進出した高知パシフィックウェーブ、平林金属クラブ両チームの優勝が決定した。

 無情の雨……決勝戦は「幻」と消えた。
 もちろん、「試合をやりたかった」「戦って雌雄を決したかった」との思いは選手たちに強くあっただろうし、一観客としても、「日本一」の座をかけた、日本男子ソフトボールの「最高峰」「トップレベル」の試合を観ることができなかったのは残念である。
 しかし、両チームの決勝までの戦いぶりを見れば、この歴史と伝統を誇る「全日本総合選手権の覇者」に「相応しいチーム」であることは疑いようのない事実で、その一試合一試合の試合内容がそれを証明していた。
 もしかしたら、勝利の女神もどちらか一方を選ぶのをためらい、「勝者」と「敗者」を選択することを拒み、雨による「決勝戦の中止」という選択をしたのではないだろうか……。そう思えるほど、両チームの戦いは素晴らしいものであり、雨による「両チーム優勝」も、この大会のエンディングとしては、「相応しい結末」であったようにも思える。