平成21年度 全国指導者中央研修会を開催
   平成22年2月6日(土)・7日(日)/東京都太田区・大森東急イン

(2010.2.9)  


平成21年度 全国指導者中央研修会が開催された

研修会には、全国の指導者の代表者、
一般参加者を含めた(計71名)が参加

研修会冒頭、参加者を激励した日ソ協・松山正治副会長

日ソ協・中邑芳邦指導者委員長から、
平成21年度の指導者委員会の活動が報告された

今年度のルール改定について
日ソ協・高橋義明ルール委員長が、
その項目と経緯を具体的に説明

地区別研修会では、指導者資格の活用と
今後の指導者のあり方について、
積極的な意見交換が行われた

地区別研修会終了後には参加者全員が集い、
情報交換会を開催

研修会2日目
「学習指導要領の改訂とベースボール型の指導への期待」
を演題に講演した文部科学省教科調査官・白旗和也氏

「アフリカにおけるソフトボール競技の現状と普及活動」
について講演した三重県立津工業高教諭・沖田みどり氏
            三重大教育学部付属中教諭・佐野仁美氏

「北京オリンピックとその他の
国際大会から見たソフトボール事情」
について講演した 女子日本代表・斎藤春香ヘッドコーチ

ソフトボールの未来のために!
今後も指導者は常に先頭に立ち、
自らが学び、努力し続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらなる指導者の資質向上をめざして!

 平成21年度全国指導者中央研修会が、2月6日(土)・7日(日)の2日間、東京都太田区・大森東急インにおいて開催された。
 研修会には、(財)日本ソフトボール協会・指導者委員会をはじめ、全国各支部協会の指導者委員長、一般参加者を含めた計71名が参加。ソフトボールの普及・振興を図る上で極めて重要な役割を担っている全国の指導者の代表者たちが、さらなる指導者制度の発展と組織的活動による指導体制づくりを推進するとともに、指導者のより一層の資質向上をめざして、熱心な研修が行われた。

 研修会初日には、冒頭に(財)日本ソフトボール協会・松山正治副会長が、主催者を代表して挨拶に立ち、「今こそ日本のソフトボールは、今後の最大の目標である2020年のオリンピック競技への復帰(Back Softball)に向けて具体的な“行動”を示していかなければならないときである。そのためには国内外において、競技力の向上、普及・振興を含め、さまざまな活動を実施していかなくてはならない。日本国内においても、今後、さらなる競技人口の拡大に努め、未来を担う子どもたちへの指導・育成の徹底は急務であると考えている。また、壮年から実年、シニア、ハイシニアなど幅広い世代での競技人口を有し、生涯にわたり楽しむことができるという部分も、このソフトボールが持つ魅力である。今後、すべての世代・カテゴリーにおいて、ソフトボールは競技スポーツとして、生涯スポーツとして発展していかなければならない。それができるか否かは、何よりもこの競技の魅力を伝え、技術、知識を伝えていく役目を担っている指導者の方々の力にかかっている。この研修会を通じて、互いがそれぞれの現況を把握し、積極的な意見交換を行うとともに、さらなる自己研鑽に励んでいただきたい」と参加者を激励した。

 続いて、指導者連絡会議では、(財)日本ソフトボール協会・中邑芳邦指導者委員長が、平成21年度指導者委員会の活動を報告。平成17年度から平成21年度まで、(財)日本ソフトボール協会の旧「ソフトボール公認指導者(1種・2種・3種)」を、希望する者については(財)日本ソフトボール協会「公認ソフトボール準指導員」に移行させ、「専門科目免除」で(財)日本体育協会「公認ソフトボール指導員」資格取得の促進を図ったことを説明し、(財)日本ソフトボール協会の旧資格制度は終焉したことを確認した。
このような移行措置および各都道府県協会での、(財)日本体育協会「公認ソフトボール指導員」養成講習会並びに(財)日本ソフトボール協会「公認ソフトボール準指導員」養成講習会を精力的に実施した結果、(財)日本体育協会「公認スポーツ指導員(ソフトボール競技)」数は、2010年1月29日現在で合計10108名となっており、指導者委員会としての当初からの目標であった有資格者の10000名をついに突破し、その数を推移しても、年々確実な増加傾向にあると報告した。
 また、今年度実施したコーチ養成講習会には、従来参加の多かった日本リーグ、各実業団チームなど、国内トップレベルのチームに所属している監督、コーチ、選手に加え、北京オリンピックで金メダルを獲得した女子日本代表選手(上野由岐子、三科真澄、佐藤理恵)らも受講生として参加し、非常に活気のある講習会となったことも報告された。
 続いて、(財)日本ソフトボール協会・高橋義明ルール委員長より、今年度のルール改定についての報告が行われ、2010年度のオフィシャルソフトボールルールブックに沿って、今年新たに修正を加えた箇所、変更があった部分の説明が行われた。
 ルール改定の報告の後には、地区別(北海道、東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)の9ブロックに分かれての地区別研修会を実施。各都道府県での指導者の活動報告や、指導者資格の活用に関して、また、地区別に実施されている指導者養成講習会の内容や状況について、活発な意見交換が行われた。
 地区別研修会修了後には、参加者全員が互いの親睦を深めるための情報交換会を開催。全国から集まった参加者たちが、和やかな雰囲気の中、一歩踏み込んだ他の都道府県との活動状況の情報収集・意見交換が行われ、初日の日程を終了した。

 研修会2日目は、3名の講師による講演が各50分ずつ行われ、はじめに文部科学省スポーツ青少年局企画体育課教科調査官・白旗和也氏が、「学習指導要領の改訂とベースボール型の指導への期待」を演題に講演。
 学校教育の基盤となり、教師が指導すべき基準となっている学習指導要領の内容について具体的な説明が行われるとともに、2011年にその学習指導要領が改訂されること。その体育の中で必修とされてきたボール運動は、これまでゴール型、ネット型と大きく2つに分類されてきたが、新学習指導要領ではこれまで選択種目であった「ベースボール型」が新たに加わり、必修種目となることが報告された。講演では、現在、体育科教員が学校現場でどのような役割を求められているのか。また、学校教育の中で、体育・スポーツが取り入れられてきた理由は何かという点が冒頭に語られ、スポーツは子どもたちの「生きる力」を育てていくために必要なものであり、学校教育としては、子どもたちの体力低下が叫ばれる中、豊かな心と体を育てる保健体育という分野を改めて重要視しなければならないことが述べられた。
 白旗氏は、従来体育で実施されてきたゴール型(サッカー・バスケットボール・ハンドボール)、ネット型(バレーボール・テニス・卓球・バドミントン)の球技に加え、これまで選択制であった「ベースボール型」が必修化され、その中では、「ソフトボール」のみが「ベースボール型」として採用される。特に中学校1・2年生ではソフトボールが必修種目となることから、中学校に先立って行われる小学校中・高学年の体育の授業において、児童の実態に合わせた楽しいソフトボール授業が展開されることが大切であると強調した。さらに、子どもたちにとっても運動のバリエーションが増え、比較的初心者でも楽しむことができるソフトボールは、今後数多くの教育の現場に取り入られることが予想される。そしてそれは、「ソフトボールを通した子どもたちへの教育」が行われるということでもあり、子どもたちの生活に潤いをあたえ、より豊かなものにするためにも、ソフトボールは、単に子どもの体力低下を防ぐためだけのものではなく、運動の楽しさを実感することができる手軽で親しみやすいスポーツとしても期待されていることが語られた。
 
 次に、三重県立津工業高教諭・沖田みどり氏、三重大教育学部付属中教諭・佐野仁美氏が「アフリカにおけるソフトボール競技の現状と普及活動」を演題に講演。
 昨年8月、(財)日本ソフトボール協会常務理事であり、普及委員長である宇津木妙子氏を中心に、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会の面々と、ケニア共和国、ガンビア共和国を訪問。現地でのソフトボールクリニックを通し、さまざまな交流、意見交換を行ったことが報告された。
 まず、沖田みどり氏がはじめに訪問したケニア共和国・ナイロビスクールにおいて実施した4日間のソフトボールクリニックについて講演を行い、現地に着き、ケニアオリンピック委員会会長の同席のもと、オープニングセレモニーで日本からソフトボール用具(ボール、グラブ、バット)を贈呈したことが説明され、クリニックでは、宇津木妙子普及委員長が自ら先頭に立つと、現地の人々に対し、日本でのクリニックと同じように「あいさつ・元気良く声を出す・道具を大切に・指導者は自ら見本となって動く・人への思いやり」などを指導ポイントに、敢えて日本式を貫いた指導でクリニックを行ったことを報告。クリニック後半では、JICAの方々と試合を行うなど互いにソフトボールを楽しみながら交流を深めたことも紹介された。
 しかし、その一方、ガンビア共和国では日本とは大きく違う生活習慣、文化の違いを痛感し、スポーツを行う上での環境・設備が非常に厳しい状況にあったことも報告され、佐野仁美氏は「今回のアフリカ訪問では、様々な文化、生活習慣の違いの中で、どうしたらソフトボールを楽しんでもらえるかという点が私たちの最重要課題となった。まずは、それぞれが実際にボールに触れ、バットを持ち、このソフトボールの魅力や楽しさを感じさせてあげることが大切である。ソフトボールをすることで互いが楽しみ、喜び合う。また、チームの仲間とコミュニケーションを図ることで、人への思いやりや、目標に向かって協力することの大切さを感じる。これはソフトボールの指導の“原点”でもあり、今後、ソフトボールを普及・発展させていくための大きなテーマにもなると思う」と参加者に呼びかけた。

 最後に3人目の講師として、日立製作所ソフトウェア事業部/女子日本代表ヘッドコーチ・斎藤春香氏が、「北京オリンピックとその他国際大会から見たソフトボール事情」を演題に講演。
 まず、自らの生い立ちからソフトボールとの出会い、高校、日本リーグを経て、日本代表に選出され、アトランタ、シドニー、アテネと3大会連続でオリンピックに出場した経験を語り、日本代表のヘッドコーチとして北京オリンピックを戦い、どのようにチームを作り上げ、強化を図ったのか、「金メダル獲得」への道のりが語られた。
 講演では、チーム強化を図る上での攻撃・守備といった技術的な部分に加え、日本代表チームの2007年・2008年における年間の強化事業(国内強化合宿、海外強化遠征等)も紹介。また、その中でオリンピックまでの期間、どのようなスタッフにどのようなサポートを依頼したかという部分も詳細に説明され、JISS(国立スポーツ科学センター)でトレーニング合宿を行い、科学的な分野からの視点を加えたこと。栄養士にサポートを依頼し、食事面の改善を図り、アスリートとしての生活習慣を確立させたこと。対戦国の戦術・戦略に関して、情報収集の強化に力を入れたこと。男子のトップレベルの投手の球を仮想アメリカ、オーストラリアの投手に見立て、打ち込みを続けたことなどがそれぞれ具体的に紹介された。
 また、チーム内で行った取り組みとして、選手一人ひとりに「チームノート」を持たせ、選手たちが日々何を感じ、何を考えているのか、そのときの“思い”を書かせ、把握するように努めたエピソードも語られるなど、オリンピックで「世界一」の座をつかみとった女子日本代表の強化の道のりに参加者は熱心に耳を傾けていた。最後に、斎藤春香ヘッドコーチは「チームとして強化を図っていくためには、まずは選手・スタッフがしっかりと目標を共有し、その中で今自分が何をしなければならないか、考え、行動することが大切である。最も根本的な部分だが、チームを作っていく段階ではここは決してブレてはいけない部分。今後も、これまでの自分の現役時代、ヘッドコーチとしての経験を生かして頑張っていきたい」と今後への抱負も語り、講演を締めくくった。

 全国から多くの指導者が集まり、指導者制度の発展、さらなる指導者の資質向上を目的として今年度も開催された全国指導者中央研修会。ソフトボールのさらなる普及・発展に向けて、今後も、指導者には日々多様な役割が求められていく。また、ソフトボールの魅力、楽しさ、ソフトボールだからこそできる試み、それを教え、伝えていく者として、今こそ「新たな一歩」を踏み出さなければならないときがきている。
 大きく変動していく社会の中で、日本国内においてもチーム登録数の減少や、少子化など多くの問題が持ち上がっている。その中で、今後“指導者”が果たすべき役割とは何か……。何よりもまずは、ソフトボールの未来のために、指導者自らがその先頭に立ち、学び、努力し続けていくことが重要である。