10月3日(土)〜5日(月)の3日間にわたり、第64回国民体育大会(トキめき新潟国体)が新潟県上越市(成年男子・成年女子・少年女子)・糸魚川市(少年男子)を会場に開催された。
一昨年の秋田国体、昨年の大分国体が悪天候のため、2年続けて無念の途中打ち切り。4チーム同時優勝、8チーム同時優勝という「異例の事態」に見舞われており、今年も大会前日が雨。「またしても……」と嫌な雰囲気に包まれたが、「今年こそは!」と意気込む大会関係者の熱意と懸命のグラウンド整備が実を結び、大会初日こそ試合開始時間が遅れはしたが、何とか予定された全試合を実施。3年ぶりに決勝戦までの全試合を無事に終了することができた。
結果は、天皇杯(男女総合)では、成年女子、少年男子で決勝進出を果たした愛知が男女総合優勝を飾り、皇后杯(女子総合)は成年女子優勝の群馬。少年女子優勝の埼玉。成年女子で第3位、少年女子で第5位の成績を収めた京都。以上の3チームが1位に並び、女子総合優勝を分け合った。
各種別の成績に目を向けると、上越市スポーツ公園多目的広場・同公園野球場を会場に開催された成年男子は、今夏の第12回世界男子選手権で活躍した日本代表のキャプテン・石村寛を筆頭に、中村健二、照井賢吾、鈴木周平の4名の代表選手を中核に、日本代表候補、元U19日本代表ら錚々たるメンバーを揃えた大阪が、前評判通りの強さを発揮。初戦の宮崎戦を9−1、準々決勝の埼玉戦を10−1で圧勝。準決勝では、愛媛と対戦し、1点を先制されながら、4回裏に日本代表・鈴木周平のソロ本塁打で同点に追いつき、同じく日本代表・照井賢吾の二塁打でチャンスを作り、今井光太郎のツーランで逆転に成功。5回裏にも3本の安打で3点を追加。守っても、照井賢吾、中村健二とつなぐ日本代表同士の豪華リレーで愛媛打線を2点に抑え、6−2で快勝。2年連続2度目の優勝に「王手」をかけた。
一方のゾーンでは、初戦となった準々決勝で長崎を9−8、準決勝では群馬との延長8回タイブレーカーにもつれ込む熱戦の末、10−6で振り切り、壮絶な打ち合いを制してきた広島が決勝に勝ち上がった。
広島県の国体予選で、日本代表の好投手・飯田邦彦を擁する「強豪」日新製鋼を破ったウエダバッファロー主体の広島。日本代表選手を多数揃え、自他ともに認める「優勝候補の大本命」に挙げられていた大阪。両チームの対戦となった決勝は、大阪が先制。4回裏、元U19日本代表であり、日本代表候補にも名を連ねた「若き主砲」筒井拓友が先制の右越ソロ本塁打。全日本クラブ男子選手権で一大会6本塁打の大会新記録を樹立した「大砲」の一発で先取点を挙げると、6回裏にも今大会大活躍の今井光太郎のタイムリーツーベースなどで貴重な追加点を挙げ、勝利を決定づけた。
守っては、エース・中村健二が広島打線を寄せつけず、わずか1安打に抑え込み、11三振を奪う力投。前評判通りの「強さ」を見せつけ、2連覇を飾った。
上越市高田公園野球場・同公園ソフトボール場で開催された成年女子は、「世界一の投手」上野由岐子をはじめ、坂井寛子、峰幸代、乾絵美、三科真澄、廣瀬芽の北京オリンピック金メダリストがズラリと並び、上西晶、松崎絵梨子の日本代表経験者、現在の日本代表で副キャプテンを務める谷川まき、元U19日本代表の黒川春華、山本優らが脇を固めるという「盤石の布陣」を敷く群馬が、宮崎を7−0、島根を2−0で連破。まったく危なげのない試合運びで決勝進出を果たした。
一方のゾーンでは、「現役日本代表」の染谷美佳、松本尚子、狩野香寿美に、北京オリンピック金メダリストの狩野亜由美、元日本代表のスラッガー・田中幹子らを加えた愛知が、初戦の岡山戦を16−1、準々決勝の兵庫戦を11−1と大勝。準決勝の京都戦は初回に増山由梨のいきなりの三塁打と狩野亜由美の四球、盗塁で二・三塁のチャンスを作り、古田真輝の三遊間を破るタイムリーで2点を先制。続く2回表にも狩野亜由美のタイムリーツーベースで1点を加え、このリードをエース・染谷美佳が京都打線を2安打に封じる力投で守り切り、3−0の完封勝利。決勝進出を決めた。
群馬・上野由岐子、愛知・染谷美佳の日本を代表する投手同士の投げ合いとなった決勝は、3回表、群馬が二死一・二塁から三科真澄が先制の中越スリーラン。これで勢いづいた群馬は、4回表には峰幸代、6回表には山本優がソロ本塁打を放ち、最終回には峰幸代の三塁打などで2点を追加。勝利を不動のモノとした。
一方、愛知は6回裏、狩野香寿美がソロ本塁打。「世界一の投手」上野由岐子の完封を阻む一発を放ち、「現役日本代表」の意地を見せはしたが、大勢には影響なく、北京オリンピック金メダリストを揃えた群馬が「貫禄」を見せつけ、7−1の完勝。3年連続17度目の優勝を飾った。
糸魚川市美山球場・糸魚川能生球場を会場に開催された少年男子は、インターハイ優勝投手・木原道哲を擁する高知が、初戦の埼玉戦を4−0で快勝すると、準々決勝では福島と息詰まる投手戦を展開。延長タイブレーカーにもつれ込む熱戦となったが、8回表、高知はタイブレーカーの走者を犠打で三塁へ進め、三石直のスクイズで待望の先取点。その裏、二死二塁からセンター前に運ばれ、「同点か……」と思われたが、センターからの好返球で本塁寸前タッチアウト。1−0で死闘を制し、準決勝では熊本に1点を先制されながらも4−1で逆転勝ち。苦しみながらも決勝へ駒を進めた。
もう一方のゾーンでは、初戦となった準々決勝の長崎戦を4−1で快勝し、続く準決勝でも地元の熱い声援を背に、快進撃を続けてきた新潟に5−0で勝利した愛知が決勝に勝ち上がった。
決勝では、インターハイ優勝投手の木原道哲がその実力を発揮。被安打3・奪三振11の快投を見せれば、打線もこれを援護。3回裏、三石直のライト頭上を越す三塁打と細川光久の絶妙なセーフティーバントで先制し、犠打で送り、芝大紀がしぶとくセカンド横を抜くタイムリー。この回2点を挙げ、そのまま逃げ切り、4年連続9度目の栄冠を手にした。
上越市少年野球場で開催された少年女子は、埼玉が初戦となった準々決勝の愛媛戦を1−0の辛勝。わずか1安打に抑えられながら、その1安打が澤木彩香の三塁打。このワンチャンスを確実に生かし、内野ゴロの間に1点を挙げ、この1点をエース・中村友佳が被安打3・奪三振11の力投で守り切り、準決勝進出。準決勝では「全中3連覇」の実績を持つ好投手・中野花菜を擁する鹿児島と対戦。この試合では、鮮やかな先制攻撃を見せ、好投手・中野花菜を攻略。初回に1点を先制すると、2回表には、一死二・三塁から石塚惟のヒットエンドランで2点目。さらに豊留愛弓、中村早紀のタイムリーで2点を加え、序盤で勝負を決め、4−0と快勝し、決勝進出を決めた。
一方のゾーンでは、神奈川が初戦の青森戦を2−0で快勝すると、準々決勝の長崎戦では2点を先制しながら、勝利目前の7回表、同点に追いつかれ、その裏、知念千香が執念のサヨナラ安打。3−2で激闘に勝利すると、準決勝でも岐阜にいきなり1点を先制される苦しい展開。相手守備の乱れ、押し出しなどで3点を挙げて逆転。3−1で勝利を収め、決勝は関東勢同士の対戦となった。
決勝は、この国体の関東ブロック予選でも神奈川に勝利している埼玉が先制。2回裏、上野真友美、二階堂夏帆、丸田沙織の3連打と澤木彩香のヒットエンドランで1点を先制すると、3回裏には、中村早紀の安打、死球などで二・三塁とし、二階堂夏帆が三遊間を破り、2点目。さらに6回裏には、丸田沙織の安打と2つの犠打で二死三塁とし、豊留愛弓の中前安打でダメ押しの3点目を挙げ、勝負を決めた。
守っては、エース・中村友佳が神奈川打線を2安打に抑え、反撃の糸口さえ与えず、完封勝ち。3試合連続の完封で3年ぶり10度目の優勝に花を添えた。
また、成年女子の2日目の試合終了後には、宇津木妙子氏(財団法人日本ソフトボール協会常務理事・普及委員長/シドニーオリンピック、アテネオリンピック女子日本代表ヘッドコーチ)、桑原正子氏(旧制・渡辺/アトランタオリンピック女子日本代表)、小林良美氏(日本女子リーグ2部・日立マクセル監督/シドニーオリンピック女子日本代表)が、地元の小学生・中学生を対象に、ソフトボール教室を実施。これは財団法人日本体育協会の各中央競技団体への要請もあり、実施されたもので、国体という日本のトップレベルで活躍するアスリートたちが、そこで大会に参加し、試合を行うだけでなく、開催県の競技力の向上や競技の普及・発展のため、開催県に還元できる事業・イベントを行ってほしいとの意を受けてのものであった。
宇津木妙子氏が女子日本代表ヘッドコーチ時代と変わらぬ率先垂範、陣頭指揮に立つ「熱血指導」でウォーミングアップからストレッチ、キャッチボール、そして十八番の「速射砲ノック」で次代を担う選手たちとコミュニケーションを図れば、桑原正子氏は投手陣を集め、一人ひとりに分りやすく丁寧にピッチングの基本を伝授。小林良美氏は現役時代を彷彿とさせる豪快なバッティングを披露し、バッティングの「お手本」を見せた。
参加した選手、指導者の皆さんが、この貴重な機会を少しでも生かそうと目を輝かせ、一言一言に真剣に耳を傾け、懸命にボールを追う姿は「ソフトボールの原点」を見た気がした。 |