2016.11.22
 

 

GEM1(女子U14日本代表)
中央選考会を実施!




GEM1(女子U14日本代表)中央選考会が開催された















選考会は初日は、各種測定にチャレンジ!



日本体育大の協力を得て、選手たちの身体能力を
科学的に解析。今年も貴重なデータが蓄積された



GEM1代表をめざし、選手たちは全力でプレー!



選考会2日目からは「実戦形式」で代表選手17名を選出!
選考結果は今月末に発表され、年明けに台湾遠征を実施!!



GEM1(U14日本代表)中央選考会

 去る11月17日(木)〜20日(日)、静岡県伊豆市・天城ドームを主会場に、「平成28年度 GEM1(女子U14日本代表)中央選考会が実施された。
 この事業は、従来、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)が策定した「JOC GOLD PLAN」(国際競技力向上戦略)」に沿う形で実施されていた「NTS」(全国女子ジュニア育成中央研修会)を「発展的解消」させる形で立ちあげられたもので、公益財団法人日本ソフトボール協会(以下、日ソ協)選手強化本部会を推し進める「GEMプロジェクト」(女子ジュニア育成プロジェクト)(「GEMプロジェクトの詳細については、こちらをご参照ください」)の『GEM1』(U14/14歳以下、中学1〜2年生対象)の中央選考会は、『ステップ1』(都道府県で書類選考/各都道府県5名以内※北海道はブロック選考会を兼ねるため、10名を選考)、『ステップ2』(ブロック選考会/全国9ブロック(北海道、東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州の9ブロック)で実技選考を行い、各ブロック10名程度を選考)、『ステップ3』(地区選考会/東日本地区(北海道・東北・関東)、中日本地区(北信越・東海・近畿)、西日本地区(中国・四国・九州)の3地区)で各地区10名程度が選考)、『ステップ1』〜『ステップ3』の厳しい選考を経て選び抜かれた選手たちが『ステップ4』となる『ブロック別練習会』を経て、『ステップ5』となるこの『中央選考会』に30名が参加。17名の「GEM1代表選手」(女子U14日本代表選手)を決定するシステムとなっている。
 また、この17名の代表選手は、年明け早々の1月14日(土)〜20日(金)、台湾・台中へ派遣され、日本のソフトボールの「未来」を担う日本代表」の一員として、その「第一歩」を踏み出すことになる。

 選考会初日、その冒頭、日ソ協選手強化本部会・矢端信介強化副本部長が挨拶に立ち、「このGEMプロジェクトは『Road to Future』、日本のソフトボールの未来に向けたプロジェクトであり、皆さんは将来、『日本代表』としてオリンピックや世界選手権といった『世界の舞台』での活躍が期待される選手たちです。ここでは常に『世界』を意識し、世界の舞台で通用する人材を求めています。それだけに要求される水準は高いものになりますし、日本を代表する選手として、技術・体力はもちろん、代表選手としての高い意識、それにふさわしい言動、生活態度ができているか等を含め、厳しく選考させていただきます」と、このプロジェクトの趣旨、選手強化における位置づけを説明。その後、GEMプロジェクトの渡辺祐司プロジェクトリーダー、GEM1担当の松田和広氏からも「世界」をめざすプロジェクトであることが強調され、本格的な選考内容へと入っていった。

 まず大石益代、熄シ久美子、光本雅美トレーナーが、参加選手たちにウォーミングアップを指導。ケガを予防し、万全な状態でこの後のプログラムに入っていけるよう、選手たちの体調、コンディションに細心の注意を払いながら入念にウォーミングアップを行った。

 ウォーミングアップの後は、選手全員で体力測定を実施。今回も船渡和男講師(日本体育大学大学院教授)を中心に、高橋流星講師(日本体育大学助教)ら、日本体育大学トレーニング科学系研究生が測定をサポートし、GEM委員・日本中体連スタッフも連携・協力。選手たちが現在どの程度の能力があるのかをチェック。測定項目は、身長・体重、皮下脂肪の測定等の身体組成や、柔軟性(長座体前屈)、筋力(握力、背筋力、上体起こし、腕立て伏せ)などに加え、遠投力、走能力テスト(30m走)、反復横とび、立ち幅跳び、メディシンボール後方投げなど、フィールドテストも実施。さらにはティー台に置いたボールをどこまで飛ばせるかという飛距離の計測やキャッチャーは各塁へのスローイングのタイム計測等も行われた。
 測定後は、個人のデータを集計し、数値化。それを選手たちにフィードバックすることで、自らの長所、短所を確認すると同時に、歴代の日本代表選手の数値や、従来の「NTS」で蓄積してきたデータと照らし合わせ、U19日本代表、日本代表へと駆け上っていった選手たちの当時のデータと比較し、「世界の舞台」「国際舞台」で活躍する選手たちが、どのような能力的な特徴を持っているのか、その舞台に立つには、どれだけの数値を有していることが目安となるのか等が示され、選手たちが今後めざすべき、「具体的指標」がデータとして明示された。

 今回の選考会では、JISS(国立スポーツ科学センター)の石井美子管理栄養士が、成長期にある選手たちが、「アスリート」として、「どんな食事を摂ればよいか」「強くなるための食とは!?」といった講義を受けた後、筆記試験を実施。この段階での理解度や食や栄養に対する「意識」がテストされ、大石益代トレーナーによる「コンディショニング」に関する講義が行われた後、同様に試験を実施。現段階でのトレーニングやコンディショニングに関して正しい知識を有しているか否か、自己管理能力や大会へ向けた調整能力等が筆記試験で問われ、初日の選考を終了した。

 選考会2日目は、実技研修。午前中は、まず野手はバッティング。80km/h台後半から90km/h台前半に設定されたマシンのボールを打ち、投球に対し、どの段階で反応し、スイングを始動させているか、映像を通じて解析。これとバットのスイングスピードの計測を並行して実施した。
 ピッチャーは、各自が球種を申告し、実際に投球。スピードガンによる球速の測定と投球時のリリースの映像解析を同時に実施。中学1・2年生が対象であったにも関わらず、球速は100km/h近くを記録する「逸材」もいた。
 その後、各ポジションに分かれてシートノックを行い、第1希望のポジションと、第2希望・第3希望のポジションでも、その適性や守備範囲の広さ、打球への反応速度、捕球技術・送球技術の正確性等がチェックされた。
 午後からは、実戦形式の選考に入り、2チームに分かれ、実際にピッチャーが投球を行いながら「試合形式」で、ノーアウト一塁から様々なケースを設定した「ケースプレー」の選考を実施。それぞれの場面で確実に送る、あるいは送りバントを失敗しても進塁打は打てるか否か等、その状況に応じたプレーが選択できているか、また、その場面で応じた技術の選択、使い分けができているか、実戦の様々な状況を想定し、その中でいかにプレーすることができるかがチェックされ、その一挙手一投足に厳しい目が注がれた。

 夜はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)・小野多恵子講師による「ドーピング防止について」の講義が行われ、前日同様、講義終了後には筆記テストを実施。「アスリート」として身につけておくべきドーピングに関する知識の習得に励み、続いて「戦略・戦術I」(トップアスリートの思考と責任)と題し、GEMプロジェクトサブリーダーの清水正氏が「日本代表」としての心構え、「あるべき姿」について講演。また、世界の強豪を相手に戦い、トップレベルでプレーする「トップアスリート」として有するべき、「自覚と責任」を持って行動することが求められた。

 選考会3日目も「実戦形式」を主体とした選考が行われ、走者の有無やアウトカウント等、様々な状況を想定したプレーが行われ、その中で、状況に即したプレーができるか否かが確認され、厳しくチェックされた。

 この日も宿舎に帰ると、GEMプロジェクトリーダーの渡辺祐司氏が「国際基準の思考」、GEM1担当の松田和広氏が「戦略・戦術U」(世界で戦うためのルール解釈)と題した講義が行われ、過去の各カテゴリーの映像等を紹介しながら、「世界」で戦うために、選手として、チームとして何を考え、戦えばよいか、国内でプレーするのとはまた違った「国際基準」の考え方が紐解かれ、国際大会独特のルール解釈・ルール適用等にどう対応していったらよいかについて学び、その「成果」が筆記テストで確認された。

 選考会最終日は、これまで様々なケースを設定して行っていた「実戦形式」の選考のすべての制約を取り払い、完全な「試合形式」で選考を実施。選手たちは持てる力を出し切り、全力でプレー。4日間にわたる選考会を終了した。

 今回の選考会実施にあたっては、選手強化本部会でまず選考会参加の『検証的基準』を決定。これは、過去のNTSで日本体育大学の船渡和男教授の長年にわたる支援・協力により、蓄積されてきた運動能力テスト(パフォーマンステスト)のデータを検証し、50m走は8秒以下(スタートはスタンディング)、反復横跳び50回以上(20秒間での回数)、立ち幅跳び200cm以上(踏切に近い方の足のかかと地点を計測)を設定。ソフトボール競技におけるパフォーマンスの選考基準として、以下の基準を設けた。

◎投手
【体格的要素】身長160cm以上
【球速】90km/h以上
【変化球】変化球ライズ・ドロップ・チェンジアップを有すること
【ティー台を使用しての打撃】飛距離50m以上(ゴム3号球/ニューボールを使用)
※4項目中2項目は選考基準をクリアしていること

◎捕手
【体格的要素】身長160cm以上
【盗塁に対する二塁への送球】捕球から二塁到達の速度/2秒以内
【肩の強さ】遠投50m以上
【ティー台を使用しての打撃】飛距離50m以上(ゴム3号球/ニューボールを使用)
※4項目中2項目はこの基準値をクリアしていること

◎野手
【体格的要素】身長160cm以上
【肩の強さ】遠投50m以上
【ティー台を使用しての打撃】飛距離50m以上(ゴム3号球/ニューボールを使用)
※4項目目として、数値化できなかった打球への反応の素早さ、守備範囲の広さを加え、投手・捕手同様4項目中2項目はこの基準値をクリアしていることを条件とする

 以上の「選考会参加条件」を設けたことで、中学1・2年生が選考対象となっているにも関わらず、「例年以上」のレベルの高さを見せていた。一方で、日頃「ゴムボール」でプレーしている選手たちが、いきなり「イエローボール」(革ボール)でプレーすることに戸惑い、ボールの違いに肩や肘に不安を訴える選手もいた。
 また、使用するボールが変わることで、普段とはまったく違うポジショニングやゲーム展開、試合運びの思考の切り替えを求められる等、GEM委員からも「ゴムボールとイエローボール(革ボール)では同じソフトボールといっても、その内容はまったく別のゲーム、別の競技になってしまう。強化の観点から考えると、ジュニア世代の選手たちにもイエローボール(革ボール)を使用できるようになるといいのだが……」といった声が出ていた。
 実際、野球の例を見ても、一昔前までは中学生ぐらいまでは軟式野球を行い、高校生になって初めて硬式ボールを使い、硬式野球に転向するのが「普通」であったが、現状では、少なくとも高校野球の強豪校・名門校でプレーする選手に「軟式」出身の選手はほとんどおらず、幼年期から硬式ボールを使用するボーイズリーグ、リトルリーグ・シニアリーグ等、「硬式野球」でプレーしている状況を鑑みても、ソフトボールのジュニア世代が抱える「大きな問題」が、またしてもクローズアップされることになった。

 日ソ協・矢端信介選手強化副本部長は、「この『GEM1中央選考会』に先立ち、『GEM2』(女子U16日本代表)を『第6回アジア女子ジュニア選手権大会』(第6回アジア女子ジュニア選手権大会の結果詳細はこちら)に派遣した。この大会は、本来U19(19歳以下)の大会ではありますが、あえて『GEM2』(U16/16歳以下)を一つ上のカテゴリーにチャレンジさせました。見るからに体格差もあり、予選リーグではパワーの差で圧倒される場面もありましたが、決勝トーナメントでは韓国U19代表チームに勝利し、ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)でも中国U19代表チームを相手に延長にもつれ込む接戦を演じた末、3位入賞を果たしてくれました。GEMプロジェクトでは、今後もどんどんこういった形で従来の強化の延長戦にとどまらない積極的な強化策を打ち出していきたいと思っています」と、本格的な歩みをはじめた「GEMプロジェクト」のさらなる躍進へ意欲を見せた。
 その上で、ゴムボール・革ボールの問題にも触れ、「現在、ジュニア世代を対象としたイエローボール(革ボール)使用大会の創設にも動いている。一日も早く、それを実現させ、ジュニア世代の選手たちが一貫した強化システム、強化体制の中でプレーできるよう環境を整えたい」と語り、「今回のGEM1選考会の結果は、選考会終了後、GEM委員が選考した代表選手17名を推薦し、11月22日(火)のSCOTT(五輪特別委員会)の承認を受け、所属・選手本人に結果を連絡。今月末か、来月初めには公式発表となる運びです。この代表選手17名は、年明け早々の1月14日(土)〜20日(金)、台湾・台中へ派遣し、将来性豊かな選手たちに早くから国際経験を積ませ、どんな環境にあっても力を発揮できる、たくましい選手たちに育てていきたいと思います」と締めくくった。

 本格的な歩みをはじめた「GEMプロジェクト」。2020年へ向けた選手強化、さらにその先を見据えた「Road to Future」が動きはじめている。