平成23年度 全国女子ジュニア育成中央研修会を開催

 (2011.11.30)






 
去る11月17日(木)〜20日(日)の4日間、静岡県伊豆市において、平成23年度全国女子ジュニア育成中央研修会が開催された。
 
 この研修会は、(財)日本オリンピック委員会(JOC)が策定した「JOCゴールドプラン(国際競技力向上戦略)に基づく施策「一貫指導システム(競技者育成プログラム)」の一つとして実施されているもので、今回で8回目の開催となる。

 また、「優秀選手の発掘・育成」をさらに具体的なものにし、発展させていきたいという(財)日本ソフトボール協会の意向のもと、この研修会で発掘された優秀選手17名による選抜チームを編成。昨年度に続いて2度目となる台湾遠征を行うことが決定し、来年1月15日(日)〜20日(金)の6日間、台湾・南投において開催される招待試合へ出場。台湾の中学生チームとの対戦を通じて、ジュニア世代の強化を図ることになった。

 研修会当日は、全国9ブロック(北海道、東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)からそれぞれ選抜された選手が集合。今年度から選手の選抜方法が変更され、全国9ブロックから各6名ずつ選抜された54名に、NTS強化委員推薦の6名を加えた計60名の選手が参加する運びとなり、4日間にわたる研修がスタートした。

 初日は、早速、大石益代、高松久美子、高夕子、中澤依未トレーナーによるウォーミングアップが行われ、NTS代表委員・NTS委員・日本中体連スタッフの指導のもと、まず選手全員の体力測定を実施。
 体力測定では、今回も船渡和男講師(日本体育大学大学院教授)が中心となり、高橋流星講師(日本体育大学助教)を含めた日本体育大学のトレーニング科学系研究生が測定をサポートした。測定項目は、身体組成、柔軟性、筋力・体脂肪測定などのメディカル・フィットネスチェックに加え、遠投、30mダッシュ、メディシンボール投げ、反復横とび、立ち幅とびなどのフィールドテストも実施。昨年同様、選手全員の体力測定を、科学的な部分からすべて数値・データ化し、それぞれの選手がソフトボール選手に必要な運動能力をどの程度有しているかということが一目で分かるよう、測定項目ごとに個々の結果がグラフで示された一覧表を配布し、各選手・スタッフにフィードバックする方式がとられた。

 研修会2日目には、バットスイング計測と並行して、実際にボール・バットを使っての実技研修がスタート。
 この日は、元日本代表で、シドニーオリンピックでは銀メダルを獲得。現在岐阜県のクラブチーム・大垣ミナモクラブでプレーを続けている増淵まり子投手をはじめ、この全国女子ジュニア育成中央研修会の第1期生であり、現在日本女子1部リーグ・トヨタ自動車でプレーする山根佐由里投手。アテネオリンピック銅メダル、北京オリンピック金メダリストであり、文字通り「世界一の投手」と称される上野由岐子投手がモデル投手を務め、実際にピッチングを披露。自らが具体的に解説を交えながら、ライズ、ドロップ、チェンジアップといった球種を投げ込み、投球時の身体の使い方、球種の特徴、打者に対しての効果などが選手・スタッフに説明された。

 ピッチングのデモンストレーションでは、まず、増淵まり子投手がライズボールを披露。打者との対戦でより効果的になるハイライズ(高めに投げ込むライズ)と、ローライズ(低めにコントロールし、打者の膝元から浮き上がってくるようなライズ)をそれぞれ投げ込み、「ライズボールは、高めに投げ込むハイライズと、低めにコントロールするローライズを投げ分けることで、打者は的を絞りづらくなる。高めのストライクからボールになるハイライズは空振り三振を奪う決め球として、低目のボールゾーンからストライクになるローライズは見逃し三振を奪う決め球として使えるようになる」と解説すると、次に、山根佐由里投手がデモンストレーションを行い、投球時の身体の運び、体重移動など、より速く、キレの良い球を投げるためのポイントを解説。ストレートとチェンジアップを実際に投げ込んで見せ、「投球時には、身体の体重移動をスムーズに行うことを心がけてほしい。プレートから蹴り出す際にしっかりと体重移動を行い、腕の振り上げからリリースまで、身体の力を逃がさぬよう、意識してもらいたい」と選手たちへのアドバイスが行われた。最後は、上野由岐子投手が登場し、実際に選手たちの前で、キレ味鋭いライズ、ドロップを披露。はじめに「まず、投球時に重要なことは、ボールをリリースする位置。他のピッチング講習会でも、腕を振り下ろす時に足の真横でリリースしようとする選手が多く見られるが、実際にボールをリリースする位置はそこではない。腕を身体の前で大きく回転させる時と同じように、ボールを放す位置は自分の足のももの前であり、ピッチングを行う際は、ブラッシング後、足のももの前でリリースするよう意識し、フォロースルーまでもっていってもらいたい」と、投球時の基本的なポイントを語ると、「ライズ、ドロップについては、基本的にはリストの使い方が重要になる。むやみに肩の動きや、腕振りに意識をもっていくのではなく、リストを上手く使い、指の感覚を大切にしながら、常にボールの回転を意識してもらいたい」と、各球種の投げ方を解説。また、「何よりもピッチングで大切なことは、しっかりとキャッチャーのミットめがけて、気持ちを込め、投げ込むことである。投手はボールをリリースして終わりではなく、キャッチャーのミットまで“しっかりとボールを届ける”ことが仕事。その責任があることを決して忘れず、一球一球思いを込めて投げ込んでもらいたい」と、選手たちへ熱い思いが伝えられた。

 夜間の部では、ソフトボール選手として必要な知識を身につけるための講義を実施。初日は、石井美子講師(JISS/国立スポーツ科学センター)による「栄養と運動について」、2日目には、大石益代講師((財)日本ソフトボール協会トレーナー部長)による「ウォーミングアップ・クーリングダウンの重要性」の講義で、トップアスリートをめさずための栄養補給、コンディショニング、トレーニングの基礎知識を学習するとともに、3日目は、福島豊司講師((財)日本ソフトボール協会/技術分析担当)による「北京オリンピック・女子U16ユースワールドカップハイライト」も視聴。憧れの女子日本代表の好プレー集や、この研修会を経験した選手たちの世界の舞台での活躍を目の当たりにし、選手たちは目を輝かせていた。

 3日目・4日目は、いよいよ実戦形式での研修。60名の選手を4つのチーム(A・B・C・D)に振り分け、「実戦」での研修に入った。
 今回の実戦では、今年8月に京都府宇治市・城陽市で開催された第33回全国中学校女子大会で優勝投手に輝いた“中学生bP左腕”広島市立翠町中学校の田内愛絵里投手をはじめ、多くの選手がその実力を発揮。
 投手では、球速100kmに迫る投手、コンスタントに90kmを記録する投手が数多く見られ、野手でも、巧みなグラブさばきや、鋭い打球を飛ばす、センスあふれるプレーが随所に見られるなど、選手たちは真剣勝負さながら、一投、一打に気持ちの入ったプレーを展開。最後まで攻守に懸命なアピールを見せ、選考スタッフもその選手たちの全力プレーに熱い眼差しを注いでいた。

 今回で8回目の開催となった全国女子ジュニア育成中央研修会。NTS代表委員・NTS委員・日本中体連スタッフの共通理解のもと、第1回の開催から継続して「一貫指導システム」の構築に取り組み、多くの人々の力によって、年々その内容を充実させてきた。また、技術指導の面でも、今回のように、増淵まり子、山根佐由里、上野由岐子投手のようなオリンピックメダリスト、現役日本代表選手を講師に招きながら、選手たちに「夢」や「憧れ」を持たせ、さらに高いモチベーションを引き出す取り組みも続けられている。
 また、この研修会のもう一つのテーマでもある「優秀選手の発掘・育成」についても、昨年度、初めて優秀選手17名の台湾遠征が実現。今年度も継続して実施することが決定しており、今後の日本ソフトボール界を担う選手たちの貴重な“ステップアップの場”として、さらなる研修会の発展が期待される。選手たちに夢と希望を与え続けるために……。今後も、この全国女子ジュニア育成中央研修会が、日本ソフトボールの輝かしい未来へとつながる魅力あふれる事業として発展していくことを願いたい。

●平成23年度 NTS優秀選手
 台湾遠征選手団名簿

〈スタッフ〉

・団長
 奥村 紘史((財)日本ソフトボール協会理事)
・ヘッドコーチ
 渡辺 祐司(京都市立樫原中学)
・コーチ
 松田 和広(延岡市立南中学)
・トレーナー
 大石 益代((財)日本ソフトボール協会)
・総務
 藤井まり子((財)日本ソフトボール協会)

〈選手〉

・投手
 田内愛絵里(広島市立翠町中)
 寺沢小百合(花巻市立西南中)
 中西 舞衣(高松市立龍雲中)
 中村 美樹(川口市立在家中)

・捕手
 古平 綾香(川口市立在家中)
 野上 菜未(明石市立魚住中)

・内野手
 飯田 瑞稀(南陽市立赤湯中)
 池田笑美加(広島市立翠町中)
 石川 恭子(葛飾区立奥戸中)
 兼平 真咲(広島市立中広中)
 坂本 結愛(横浜市立橘中)
 西口 実佳(京都市立樫原中)
 屋禰 未奈(明石Pクラブ・明石市立大久保北中)

・外野手
 有吉  茜(福岡市立三宅中)
 木原菜々子(広島市立翠町中)
 子安 愛美(鶴ヶ島市立富士見中)
 那須 千春(上山市立北中)

※ポジション別50音順

 

研修会には全国から選抜された計60名が参加

研修会は、まず選手全員の体力測定からスタート

2日目からは実技研修が行われ、
打撃、守備、ピッチングの指導など
選手たちへの技術指導が行われた

今年もオリンピックメダリスト、
現役日本代表選手が特別講師を務めた
(※画像はシドニーオリンピック銀メダリスト
  増淵まり子投手)

上野由岐子投手、山根佐由里投手が
サプライズで選手たちの前に登場!

「世界一の投手」の切れ味鋭い
ライズ・ドロップに見入る選手たち

夜の講義では、トップアスリートになるために
必要な知識を学習する
(※画像は国立スポーツ科学センター・石井美子講師)

日本を代表する選手になるために……!
グラウンド上以外でも、さまざまなことを学んでいく

3日目、4日目の「実戦」では
各選手がセンスあふれるプレーを連発
無限の可能性を感じさせた