女子U19日本代表・第4回アジア女子ジュニア選手権大会直前レポート
(財)日本ソフトボール協会選手強化本部会・女子強化委員
〜 女子U19日本代表・渡辺和久ヘッドコーチインタビュー 〜
開催の迫った第4回アジア女子ジュニア選手権大会(第9回世界女子ジュニア選手権大会アジア地区予選/12月13日(日)〜16日(水)、マレーシア・クアラルンプール)に向けて、現在強化を進めている女子U19日本代表。厳しい選手選考の末、選び抜かれた15名の「戦士」たちが、“新たな一歩”を踏み出すべく、いよいよ世界との戦いに臨む。
これまで女子U19日本代表は、1981年の第1回大会(カナダ・エドモントン)を皮切りに、1991年の第4回大会(オーストラリア・アデレード)、1999年の第6回大会(台湾・台北)、2003年の第7回大会(中国・南京)と、過去4回の「世界一」を経験し、輝かしい実績を残し続けてきた。
2011年、南アフリカにおいて開催される第9回世界女子ジュニア選手権大会での、「世界一奪回」に向けて、重要なスタートとなる今大会。女子U19日本代表を率いる渡辺和久ヘッドコーチ((財)日本ソフトボール協会選手強化本部会・女子ジュニア強化委員/木更津総合高)に、大会に向けての意気込みを踏まえ、話をうかがった。
Q1.いよいよ、第4回アジア女子ジュニア選手権大会(兼第9回世界女子ジュニア選手権大会アジア地区予選)が直前に迫りました。まずは、今大会に向けての渡辺ヘッドコーチの意気込みをお聞かせ下さい。
今回の女子U19日本代表の目標は、もちろん「優勝」「金メダル」です。現在、日本のソフトボールは、昨年の北京オリンピック金メダル獲得から、今年の大学女子日本代表のワールドゲームズ優勝、女子U16日本代表のユースワールドカップ優勝と名実ともに「世界一」となりました。そういった立場にある日本としては、今大会での「優勝」「金メダル」は絶対条件であり、それ以外は考えられない状況にあります。万が一にも、負けることなどあってはならないと思いますし、アジアの、世界のリーダーとして、日本の実力を示したいと考えています。
ただ、日本とは違う海外での大会を戦わなければならないということに若干の不安を抱えています。やはり、海外で戦う国際大会では、試合運営の違い、天候、グラウンドコンディションなど、日本とは大きく異なる点があり、プレー以外の面でストレスを感じることも十分予想されますし、臨機応変にこちらが対応していかなければ、それによってリズムを崩しかねないと考えています。
今回のチームの中には、初めて海外での国際大会を経験する選手もいますし、選手たちが持っている本来の力をしっかりと発揮させることができるよう、事前に入念な準備を進めておきたいと思います。
Q2.今大会を戦うにあたり、去る11月2日(月)〜4日(水)の3日間にわたり、代表選手選考会を実施し、チーム編成を行われたわけですが、今回の選手選考では、どのような部分に重点を置かれたのでしょうか。
まず、今大会の日本の目標である「優勝」を勝ち取るため、2011年に南アフリカで開催される第9回世界女子ジュニア選手権大会の出場権を獲得するために、現時点で“ベスト”な布陣を選び抜きました。
チーム編成としては、日本リーグ勢から大学、高校まで打撃・守備力ともにバランスの取れたメンバーを選考できたと感じています。今回のチームでは日本リーグ勢がチームの中心となり、引っ張ることになると思いますが、2011年の本大会を見据えた場合、高校生の選手たちにも、この大会を通じて大きく成長してもらわなければなりません。いずれにしても、現時点のジュニア世代において、日本を代表する選手たちであることは間違いありません。
Q3.まずは、アジアを制し、2011年に開催される第9回世界女子ジュニア選手権大会への出場権を「勝ち取る」ことが、第一の目標となるわけですが、本大会での選手起用、攻撃・守備の戦術は、渡辺ヘッドコーチの中ではすでに具体的にイメージされているでしょうか。
攻撃では、やはり相手を「崩す」ことが非常に重要になると考えています。例えば、日本の長所とされるセーフティーバントやスラップなどの小技を絡め、出塁すれば盗塁など足を絡めて次の塁を積極的に狙う。バッティングでもただ打つのではなく、野手のポジショニングによってあえて深い所に転がしたり、叩きつけたりすることで、相手のミスを誘い、チャンスを広げることができますし、状況によっては長打(一発)で試合を決めることも必要になるでしょう。このような隙のない攻撃で相手にプレッシャーをかけ、「崩す」ことが私の理想です。とにかく、さまざまな攻撃パターンで得点を奪えるようなチームをめざしたいと思っています。長打だけ、小技だけでしか得点を奪えないような攻めではなく、どんな状況でも、何番からでも相手を崩せる攻撃をめざしたいと思っています。
守備面では、代表選手選考会のときから複数のポジションをこなすことができる“ユーティリィティー性”を重要視し、実際にその能力のある選手たちを揃えました。今回の第1次国内強化合宿でも「実戦」を通じて、それぞれの選手に複数のポジションを守らせ、どの選手の、どのポジションがチームにとってベストか、しっかりと確認したいと考えています。今回の第4回アジア女子ジュニア選手権では、本大会(第9回世界女子ジュニア選手権)への出場はできませんが、山根佐由里、松村綾菜(ともにレオパレス21)ら日本リーグ勢の投手を中心に、守りを固めていくことになると思います。
Q4.昨年の女子日本代表の北京オリンピック金メダル、今年の女子U16日本代表のユースワールドカップ金メダルと、現在日本のソフトボールは名実ともに「世界一」という立場になりましたが、今回アジアの国々と対戦するにあたって、世界を、アジアを引っ張る“リーダー的存在”として、現地で実践してみたいことはありますでしょうか。
今大会を戦うにあたり、アジア各国が日本に対して特別な見方、戦い方をしてくるであろうことは、十分自覚しています。もちろんアジアの、または世界の「トップ」として日本を見てくるわけですし、まずは、実力・結果でそれを“証明”することが大切だと思います。また、プレー以外の面でも、日本はすべての国々の「模範」とならなければなりません。女子U19日本代表ということに“誇り”と“プライド”を持ち、どんなときも堂々と、元気良く、ハツラツとしたプレーで、現地の人々に感動を与えられるような試合を展開したいと思っています。
Q5.今回の女子U19日本代表チームは、あくまでもこの第4回アジア女子ジュニア選手権大会を制すために、選び抜かれた現時点での「ベストな布陣」ということですが、2011年に開催される第9回世界女子ジュニア選手権大会では、年齢制限から大部分の選手が入れ替わることになると思います。この点に関してはどのようにお考えでしょうか。
本大会(第9回世界女子ジュニア選手権)に向けて、年齢制限も踏まえたチーム編成を考えると、今回のチームで2011年の本大会に出場できる選手は、現在高校2年生として選出されている3名になります。今回の第4回アジア女子ジュニア選手権に臨むチームとは、当然大部分の選手が入れ替わることになりますが、この3名の選手たちに関しては、本大会でチームの主力になってもらいたいと考えていますし、今年ユースワールドカップで優勝した女子U16日本代表の選手たちとうまく融合し、今回の経験を踏まえ、チームを引っ張っていける存在になってもらわなければなりません。そういった意味でも、今大会ではそれぞれの選手たちが積極的にプレーし、大きく成長してくれることを期待しています。
また、本大会の前には代表選手選考会を実施することになると思いますが、どんな選手たちが参加してくるのか、とても楽しみにしています。チームの攻撃・守備の戦術、考え方は基本的に変えるつもりはないのですが、選手の顔ぶれによってそこは変わってくる部分もあるかもしれません。
Q6.2011年に開催される第9回世界女子ジュニア選手権で「世界」との戦いを視野に入れたとき、日本としてはどのような部分が重要になってくるとお考えでしょうか。今後の強化のポイントなどありましたら、お聞かせ下さい。
「世界」の強豪国と戦い、そこで勝つためには、まずは失点を最少限に食い止めるために「守り」を固めなければならないと考えています。アメリカ、オーストラリア、カナダらの強豪国は、それこそ球速で言えば110kmを超えるような投手を揃えてくることは十分考えられますし、小技を絡め、相手を崩しにかかったとしても、そう大量得点は望めないでしょう。だとすれば、やはり守りを固めた上で、日本とすればロースコアな試合展開に持ち込みたいですね。自然と勝ちパターンもそうなってくるのではないでしょうか。大量失点を喫してしまっては、やはり勝機は見い出しにくいですし、投手、野手、とにかく「全員」で守り抜ける力をつけなければなりません。
打撃面では、先にも述べましたが、小技を絡めて相手を「崩す」ことです。長打、小技、機動力、すべての要素を絡め、得点を奪えるスタイルを確立しなければならないと思っています。
Q7.今大会を戦うにあたって渡辺ヘッドコーチが選手たちに求めるものとは、どのようなことでしょうか。また、今後の日本ソフトボールを担う選手たちへメッセージなどありましたら、よろしくお願い致します。
これまで、日本ソフトボールの歴史において女子U19日本代表は、「世界の舞台」で過去4度の世界一を経験し、輝かしい実績を残してきました。今回も、私たちに課せられた“使命”は「アジア制覇」、その先にある「世界一」だと考えています。厳しい選考の末、選ばれた15名の選手たちには、今大会を自らの「飛躍の場」とし、女子U19日本代表というカテゴリーから世界へと視野を広げ、将来の日本ソフトボールを担う存在となってもらわなければなりません。そして、何よりも「日本代表」として戦うことに“誇り”と“プライド”を持ち、世界のリーダーとして堂々とした戦いを見せてもらいたいと思います。
―――― 今回はインタビューにご協力いただき、ありがとうございました!
|