2015.8.9
 

 

2015 JAPAN CUP
国際女子ソフトボール大会 in 大垣
日本、「まさか……」の敗戦
「宿敵」アメリカに敗れ、準優勝




大会最終日、この日も満員の観客がスタンドを埋めた



決勝は女子TOP日本代表とアメリカの「再戦」となった



超党派の国会議員で結成された「ソフトボール振興議員連盟」の会長を務める甘利明衆議院議員が始球式を行い、大会の視察に訪れたWBSC(世界野球ソフトボール連盟)・リカルド・フラッカーリ会長が「球審」を務め、「プレーボール!」をコールし、試合開始!



女子TOP日本代表は「エース」上野由岐子を先発に立て
2005年以来、二度目の優勝へ、「必勝」を期したが……



女子TOP日本代表は毎回のように得点圏に走者を進めたが
「ここぞ!」という場面で決定打を欠き、得点できない……



両チーム無得点のまま、延長タイブレーカーに突入!
8回表、「不沈艦」上野由岐子からアメリカが2点を先制



女子TOP日本代表も8回裏、1点を返し、反撃したが……


5大会連続7度目の優勝を飾ったアメリカ。
「ホーム」の大会でこの結果は悔しい限り


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 「2015 JAPAN CUP 国際女子ソフトボール大会 in 大垣」(毎日新聞社大会オフィシャルサイトはこちらBSジャパン・テレビ東京・テレビ愛知の放映スケジュールはこちら)は、大会最終日(8月9日/日)を迎え、順位決定戦(3位決定戦・決勝)の2試合が行われた。
 第1試合では、予選リーグ3位のオーストラリアと予選リーグ4位のチャイニーズタイペイが対戦。オーストラリアが「世界最強の右のスラッガー」ステイシー・ポーターのホームラン等で4点を挙げ、4−0の完封勝ち。まずオーストラリアの3位、チャイニーズタイペイの4位が決定した。
 第2試合では、予選リーグを3戦全勝の1位で決勝進出を決めた女子TOP日本代表と、前日の予選リーグ最終戦で女子TOP日本代表に敗れ、2勝1敗で2位のアメリカが優勝をかけ、激突した。

・大会第3日(最終日)/8月9日(日)
《順位決定戦・決勝》
  1 2 3 4 5 6 7 8
アメリカ 0 0 0 0 0 0 0 2 2
女子TOP日本代表 0 0 0 0 0 0 0 1 1
(ア)○アリソン・カルダ−アマンダ・チデスター
(日)●上野由岐子−我妻悠香
〔二塁打〕河野美里(日)ミシェル・モールトリー(ア)

 女子TOP日本代表の先発は、もちろん「エース」上野由岐子。いきなり先頭打者に安打を許したが、後続をレフトファウルフライ、セカンドライナーゲッツーに打ち取り、まずは無難な滑り出しを見せた。

 女子TOP日本代表はその裏、1番・山本優が死球で出塁。2番・河野美里が確実に送り、3番・市口侑果のレフトファウルフライで二塁走者・山本優が果敢な走塁でタッチアップから三塁を陥れ、先制のチャンスを作ったが、4番・藤田倭がサードゴロに倒れ、先取点を挙げることができなかった。
 女子TOP日本代表は、その後も、アメリカを攻める。2回裏には、一死から6番・渥美万奈がレフト前ヒット。7番・洲鎌夏子が送りバントを決め、二死ながら得点圏に走者を進めると、8番・大工谷真波がスリーボールとなったところで故意四球で歩かされ、9番・我妻悠香も四球を選び、満塁。チームを引っ張る「キャプテン」1番・山本優のバットに期待がかかったが、セカンドフライに倒れ、無得点。続く3回裏には、2番・河野美里がレフト線へのツーベース。3番・市口侑果のファーストファウルフライで、二塁走者・河野美里が相手守備陣の一瞬の隙を突き、タッチアップから三塁へ進塁。ここでも「日本らしい」機動力を生かした果敢な走塁が見られたが、4番・藤田倭、5番・中森菜摘がいずれもショートフライに打ち取られ、この回も無得点。4回裏、5回裏、6回裏にも得点圏に走者を進めたが「あと一本」が出ず、どうしても得点を挙げることができない。

 一方、女子TOP日本代表の上野由岐子も毎回のように走者を背負いながらも「決定打」を許さず、両チーム無得点のまま、試合は延長タイブレーカーに突入した。

 アメリカは8回表、1番・レイブン・シャバヌが送りバント失敗。三塁前の小フライをサード・山本優がダッシュ良くノーバウンドキャッチ。一死二塁となり、「いつもの上野由岐子」なら、後続をしっかりと断ち、試合の流れを引き寄せてくれるはずだった。
 しかし……2番・ケルシー・スチュワートにセンター前にはじき返され、センターが二塁走者のスタートが遅れ、三塁ストップしているにも関わらず、本塁へ送球する間に、打者走者が二塁まで進塁。一死二・三塁とチャンスを広げられてしまった。それでも、私たちの知る「エース」上野由岐子なら、ここから本領発揮、「エース」の真骨頂とばかりに、ピンチを脱してくれるはずだったのだが……3番・ミシェル・モールトリーに左中間を破られ、2点を失ってしまった。

 女子TOP日本代表はその裏、タイブレーカーの走者に代走・又吉薫を送り、5番・中森菜摘のセカンドゴロの間に三塁へ進塁。続く6番・渥美万奈のレフトファウルフライが犠牲フライとなり、三塁走者が生還。1点差に詰め寄り、7番・洲鎌夏子がレフト線に長打性の当たりを放ったものの、決勝のタイムリーツーベースを放ったレフト・ミシェル・モールトリーが地面スレスレのところでこの打球をつかみとり、アメリカが5大会連続7度目の優勝を手にした。

 このところの対戦では、「上野のいる日本には勝てない」といった雰囲気が漂っていたアメリカが、毎回のように得点圏に走者を背負いながらも得点を許さず、延長タイブレーカーへ持ち込み、「世界のエース」上野由岐子から2点をもぎ取り、「大金星」を挙げた。

 正直なところ、前日の予選リーグの対戦を見る限り、「負ける」ことは考えてもみなかった。この試合がはじまってからも、「いつかは点を取れる」「上野が打たれるわけはない」と高をくくっていた。これまで何度も何度もそういう「日本の窮地」を救ってくれた「エース」上野由岐子が、相手より先に失点を許すシーンを想像してはいなかったし、どんなピンチに陥っても、何度ピンチが訪れても、「必ず抑えてくれる」と信じていた。事実そうして北京オリンピックの金メダルも、世界選手権連覇も、アジア大会4大会連続の金メダルも、手にしてきたのだった。ピンチになればなるほど、その本領を発揮し、「ここからが『エース』の真骨頂」とばかりに、相手打者をナデ斬りにしてきた。その「エース」が打たれ、敗れた。この意味は思っているより、「大きく」「重い」ものになってしまう可能性もある。
 「上野のいる日本には勝てない」と半ば諦めムードだったアメリカが、「やりようによっては勝てるかもしれない」と、「世界の王座」に君臨していた頃のような自信とプライドを回復させてしまったら……これは少々やっかないことになる。アメリカの強さは、そのパワーやスピード、技術的な高さももちろんあったが、「私たちが負けるはずなどない」「最後に勝つのは私たち」という、強烈なまでの「王者のプライド」と「勝者のメンタリティー」を持っていたからである。現時点でのアメリカは、世界選手権で7連覇を達成し、アトランタ、シドニー、アテネと3大会連続でオリンピック金メダルを獲得したときのように戦力が整っているわけではないし、チームの「核」となるような「スーパースター」がいるわけでもない。しかし、高い潜在能力を秘め、大きな可能性を持った選手たちに、「私たちはやれる!」と思わせてしまったとしたら……。今回のアメリカ戦の敗戦の代償は、後々「高くつく」ものとなりかねない。
 それだけに、「エース」上野由岐子を立てて戦う以上、何が何でも勝ちに行き、「やはり日本には勝てない」と思わせたままにしておくべきだった。「たかが一敗」となってくれることを祈りたいし、すべてが杞憂に終わってくれればいいのだが、「時代」の変わり目や勝負の「ターニングポイント」は些細な綻びから生じてくるものである。今はそうならないことを祈るばかりだが……。

 「ホーム」での開催となる、この「JAPAN CUP」は、「優勝しなければならない大会」である。詰めかけた満員の観客の前で、「日本のソフトボールはやっぱり強い!」というところを見せてほしかった。あれだけチャンスを作りながら、「あと一本」が出ない。負けるときはこんなものかもしれないし、押しに押しながら得点できない完全な「負けパターン」の試合であったことも確かだ。
 それでも……「エース」を投入した「ホーム」での試合で、負けることは許されない。日本が「真のチャンピオンチーム」であるのなら、やはり「優勝」という結果を勝ち獲って、「ホーム」の満員の観客の皆さんとともに喜びを分かち合う機会を作らなければならなかった。
 日本の「強さ」を知る者として……それが残念でならない。



2015 JAPAN CUP 国際女子ソフトボール大会 in 大垣
決勝 アメリカ戦 スターティングラインアップ
打順 守備位置 選手名 所属 UN
1 3B 山本 優 ビックカメラ高崎 5
2 LF 河野美里 太陽誘電 9
3 RF 市口侑果 ビックカメラ高崎 4
4 DP 藤田 倭 太陽誘電 16
5 2B 中森菜摘 豊田自動織機 10
6 SS 渥美万奈 トヨタ自動車 12
7 1B 洲鎌夏子 豊田自動織機 19
8 CF 大工谷真波 ビックカメラ高崎 7
9 我妻悠香 ビックカメラ高崎 25
FP P 上野由岐子 ビックカメラ高崎 17

※選手交代
6回裏 代打 大工谷OUT→長楓]未(トヨタ自動車)IN
7回表 再出場 長浮nUT→大工谷真波(ビックカメラ高崎)IN
8回裏 代走 藤田OUT→又吉 薫(Honda)IN


2015 JAPAN CUP 国際女子ソフトボール大会 in 大垣 出場選手・スタッフ
選手(※ポジション別五十音順)
NO 守備 氏名 支部 所属
1 投手 上野 由岐子 群馬 ビックカメラ高崎
2 尾普@望良 群馬 太陽誘電
3 中野 花菜 群馬 ビックカメラ高崎
4 濱村 ゆかり 群馬 ビックカメラ高崎
5 藤田 倭 群馬 太陽誘電
6 山根 佐由里 愛知 トヨタ自動車
7 捕手 我妻 悠香 群馬 ビックカメラ高崎
8 佐藤 みなみ 群馬 太陽誘電
9 内野手 渥美 万奈 愛知 トヨタ自動車
10 市口 侑果 群馬 ビックカメラ高崎
11 洲鎌 夏子 愛知 豊田自動織機
12 中森 菜摘 愛知 豊田自動織機
13 又吉 薫 栃木 Honda
14 山本 優 群馬 ビックカメラ高崎
15 外野手 河野 美里 群馬 太陽誘電
16 大工谷 真波 群馬 ビックカメラ高崎
17 長普@望未 愛知 トヨタ自動車

コーチングスタッフ
No. 役職 氏名 支部 所属名
1 ヘッドコーチ 宇津木 麗華 群馬 ビックカメラ高崎
2 アシスタントコーチ 丹下 淑裕 愛知 豊田自動織機
3 アシスタントコーチ 山路 典子 群馬 太陽誘電
4 トレーナー 杉浦 千恵子 群馬 太陽誘電
5 サポートスタッフ
(マネージャー)
柳川 直子 群馬 ビックカメラ高崎