2014.9.30
 

 

第17回アジア競技大会

日本、中国に快勝し、メダル確定!
予選リーグ5戦全勝の1位で決勝トーナメントへ

 






試合前、外野手陣「出陣の儀式」。中国戦を前に気合が入る!


夏場から続く連戦、ハードスケジュールに、
選手の身体が悲鳴を上げはじめている……



中国戦を前に、事前の分析結果に基づき、ルーシー・カサレスコーチを中心として、バッテリーは打者への攻め方、配球等の最終確認を行ったのだが……



初回のピンチを切り抜け、笑顔を見せる山根佐由里・峰幸代のバッテリー



序盤は中国が攻勢に出る場面も……



日本は初回、無死三塁からベテラン・西山麗がヒットエンドランを決め、先制!



3回裏、河野美里の左中間を破るタイムリーツーベースで2点目


最後は、藤田倭が三者凡退で締めくくり、中国に快勝!
日本は予選リーグ1位通過を決め、同時にメダルが確定

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 韓国・仁川で開催されている「第17回アジア競技大会」(オフィシャルサイトはこちら)ソフトボール競技の大会4日目( 大会スケジュールはこちら)、4大会連続の金メダル獲得をめざす日本(代表メンバーはこちら)は、ここまで4戦全勝と順調な歩みを進め、予選リーグ最終戦に臨み、3勝1敗で追う中国と対戦。勝てば予選リーグ5戦全勝での1位通過が決まり、メダルが確定(3位以上)する「大事な一戦」に臨んだ。

・大会第4日(9月30日/火)
〈予選リーグ第5戦〉
  1 2 3 4 5 6 7
中  国 0 0 0 0 0 1 0 1
日  本 1 0 2 1 0 0 x 4
日本: 山根佐由里(2回)・○中野花菜(4回)・藤田 倭(1回)− 峰 幸代
長打: 〔三塁打〕山本 優 〔二塁打〕河野美里、坂元令奈

 日本はこの試合、勝てばもちろん全勝での予選リーグ1位通過が決まり、敗れた場合でも、かなりの確率で決勝トーナメントを有利に戦える(敗者復活戦の権利がある)2位以上が確定する(日本は中国と同じく1敗で追うチャイニーズタイペイに7−0で勝利しており、チャイニーズタイペイは中国に2−0で勝利している。日本は仮にこの試合で中国に敗れても、台湾が最終戦の韓国戦に敗れれば2位が確定。日本が中国に敗れ、チャイニーズタイペイが韓国に勝ち、3チームが4勝1敗で並んだ場合も、同率で並ぶ3チームの直接対決での勝敗はいずれも1勝1敗で優劣がつかず、同率で並ぶ3チームの直接対決における失点差で順位を決定することになる。日本はチャイニーズタイペイに7−0で勝利しているので失点0、中国はチャイニーズタイペイ戦で2失点、チャイニーズタイペイは日本戦の7失点があり、日本1失点の敗戦であれば1位が確定。6失点までの敗戦であれば、チャイニーズタイペイがすでに7失点しているので、2位の座を確保できる状況にある)とあって、「エース」上野由岐子を温存。また、打線からも「4番」山田恵里を外し、休養させるなど、いわば「飛車角落ち」の状態で試合に臨んだ。

 日本の先発は山根佐由里。日本リーグで連勝記録を更新中の「負けない女」を先発に起用した。しかし、その立ち上がり、先頭打者にいきなりセンター前にはじき返され、ノーアウトの走者を出してしまう。それでも、ここで「世界一」と評価の高い日本の「守備」が本領を発揮。ピッチャー・山根佐由里がバントを成功させづらい高めのライズボールで小フライを上げさせると、これをダッシュ良くノーバウンドで捕球したサード・山本優が素早く一塁に転送。飛び出した一塁走者が戻れず、ダブルプレーとなった。
 守備陣の好守に助けられた山根佐由里だが、3番打者に再びセンター前に運ばれ、ここは何とか後続を断ったが、不安の残る立ち上がりとなってしまった。

 日本はその裏、「切り込み隊長」1番・山本優がいきなりの右中間三塁打。2番・西山麗の打席で、ツーボールとボールが先行すると、宇津木麗華ヘッドコーチがヒットエンドランを敢行。西山麗がベテランらしく、これを確実に決め、日本が1点を先制した。

 1点のリードをもらった山根佐由里だが、どうにもしっくりこない状態が続く。2回表、簡単に二死を取り、このままリズムに乗るかと思われたが、8番打者にまたしてもセンター前に運ばれる。ここも次打者を打ち取りはしたものの、本来のピッチングとは程遠く、「綱渡り」のピッチングが続いた。

 宇津木麗華ヘッドコーチは、ここで早めの投手交代を決断。3回表、中国戦に強く、自信を持っている中野花菜を投入した。代わった中野花菜もいきなり得点圏に走者を背負う苦しいピッチングとなったが、粘り強くピンチを凌ぎ、何とかこの回を無失点で乗り切った。

 日本はその裏、一死から1番・山本優の痛烈な当たりが三塁強襲安打となり、出塁。2番・西山麗が確実に送り、二死ながら得点圏に走者を進め、3番・河野美里が左中間を破るタイムリーツーベース。貴重な追加点を挙げると、中国バッテリーの動揺を見逃さず、4番・坂元令奈が初球を狙い、レフト前にタイムリーツーベース。二塁走者を迎え入れ、この回2点を挙げ、有利に試合を進めた。

 日本は4回裏にも、この回先頭の6番・市口侑果がレフト前に鮮やかな流し打ち。ノーアウトのランナーを出すと、続く7番・大久保美紗がキッチリと送りバントを決め、一死二塁。二死後、9番・永吉理恵がレフト前にタイムリーを放ち、4点差にリードを広げた。

 一方、中国は代わった中野花菜から6回表に1点を返したものの、日本の堅守を崩せず、最後は藤田倭へとつなぎ、4−1で逃げ切り、予選リーグ最終戦も快勝。5戦全勝の1位で決勝トーナメント進出を決め、まずは「メダル」を確定させた(予選リーグ1位・2位のチームはページシステムで行われる決勝トーナメントでは、敗者復活戦に回る権利があり、3位より下になることはない)。

 今日の試合では、投手陣が苦しんだものの、それを支える守備陣が輝きを放った。サード・山本優の俊敏なバント処理。ショート・西山麗の広い守備範囲と安定感抜群のフィールディング。地味ながら、堅実に、確実に打球を処理する坂元令奈。そして、キャプテンとしてチームを牽引し、守備陣を統率する大久保美紗が「鉄壁」の内野守備を築く。
 外野手も、この試合は欠場したが、「ソフトボール界のイチロー」の異名をとる「レーザービーム」の山田恵里。野性的な嗅覚で打球の行先に現れる河野美里。何度もチームの窮地を好守で救ってきた長楓]未。多彩にして才能溢れる外野手の中にあって、しっかりと「存在感」を示し、レギュラーポジションをつかみつつある永吉理恵が他の追随を許さない広い守備網を敷いている。
 中国に送りバントすら許さず、逆にダブルプレーに仕留めた初回のバント守備。5回表、同じくノーアウトの走者を送ろうとしたバントの小フライをダイビングキャッチしたサード・山本優。その直後、セカンドライナーでのダブルプレー。6回表には、1点を失い、なお一死一・二塁と続いたピンチで、ソフトボールでは珍しい1−5−3のダブルプレーも完成させて見せてくれた。

 ともすれば「パワーピッチャー」と「パワーヒッター」を育て、「守備は正面の打球さえ処理できればよい」「小技は不要、フェンスを越えてしまえば関係なし」という国際的な潮流の中で、日本は「守備」「小技」という「独自の文化」を築いてきた。
 確かに守備の整備には時間がかかり、地道な基本練習の反復と積み重ねが必要になる。小技や機動力を駆使して、手間暇かけて一つずつ塁を進めても、「一発」「一振り」で簡単にひっくり返されてしまうこともある。
 だが、体格で劣り、絶対的なパワーでは太刀打ちできない日本にとって、それらは「生命線」であり、「パワー」に対抗する術として磨き抜いてきた「匠の技」でもある。そして、それは今でもしっかりと通用する「日本の武器」であり、後の世代に受け継いでいくべき「伝統」であると改めて感じた試合であった。

第17回アジア競技大会 予選リーグ第5戦

中国戦 スターティングラインアップ
打順 守備位置 選手名 所属 UN
1 3B 山本 優 ルネサスエレクトロニクス高崎 5
2 SS 西山 麗 日立 3
3 CF 河野美里 太陽誘電 9
4 2B 坂元令奈 トヨタ自動車 6
5 峰 幸代 ルネサスエレクトロニクス高崎 2
6 DP 市口侑果 ルネサスエレクトロニクス高崎 4
7 1B 大久保美紗 ルネサスエレクトロニクス高崎 10
8 RF 長楓]未 トヨタ自動車 1
9 LF 永吉理恵 デンソー 8
FP 山根佐由里 トヨタ自動車 20

※選手交代
3回表 投手交代 山根OUT→中野花菜(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN
7回表 投手交代 中野OUT→藤田倭(太陽誘電)IN



予選リーグ戦績表

チーム名 日本 中国 チャイニーズ
タイペイ
タイ フィリピン 韓国 勝数 敗数 得点 失点 順位
日本 ○4-1 ○7-0 ○10-0 ○10-2 ○8-0 39
中国 ●1-4 ●0-2 ○9-2 ○8-2 ○1-0 19 10
チャイニーズ
タイペイ
●0-7 ○2-0 ○8-0 ○5-4 ○6-0 21 11
タイ ●0-10 ●2-9 ●0-8 ●0-13 ●0-7 47
フィリピン ●2-10 ●2-8 ●4-5 ○13-0 ○3-1 24 24
韓国 ●0-8 ●0-1 ●0-6 ○7-0 ●1-3 18


決勝トーナメント組合せ