2014.2.12
 

 

 

初の試み!
女子日本代表、投手選考会を実施!!



全国的な大雪の中、女子日本代表「投手選考会」が実施された




選考会の趣旨、選考基準を説明する福島正一選手強化本部長




自らの「特徴」「持ち味」をアピールすべく、全力投球!




シーズンイン前の難しい時期にあってもレベルの高い投球を見せた




選手たちの一挙手一投足に選考委員の「厳しい目」が注がれる




ピッチングだけでなく、守備を含めた「総合力」が問われる選考内容となった




世界選手権、アジア競技大会へ向け、「最強」の布陣を選び出す




出てこい! 新たなスター!!





平成26年度 女子日本代表 投手選考会


 去る2月10日(月)〜12日(水)、静岡県伊豆市・天城ドームを会場に、「初の試み」となる女子日本代表「投手選考会」が実施された。
 この選考は、先に公益財団法人日本ソフトボール協会オフィシャルホームページにも掲載されている「平成26年度 女子日本代表選手 選手選考の手順・手続きについて(詳細はこちら)でも公開されている「選手選考の手順・手続き」に基づいて実施されたもので、日本女子リーグ1部所属選手を中心に23名の選手が参加。今夏、そして今秋に開催が予定されている「第14回世界女子選手権大会」「第17回アジア競技大会・女子ソフトボール競技」に出場する「女子日本代表」の座をこの手につかもうと、厳しい選考へ臨んだ。
 今回の「投手選考会」は、オフィシャルホームページにも掲載されている通り、「第14回世界女子選手権大会」代表選手17名、「第17回アジア競技大会・女子ソフトボール競技」代表選手15名を選考していく過程の中での選考である。

 今回の投手選考会にあたり、公益財団法人日本ソフトボール協会・福島正一選手強化本部長は、「この選考会直前に大雪に見舞われ、ここに集うだけでも大変な状態であったと思う。それにも関わらず、これだけの参加があったことを喜ぶと同時に、皆さんも『世界の舞台』をめざし、持てる力を存分にアピールしてほしい」と選考会参加者を激励。「北京オリンピックの金メダル獲得、一昨年の世界選手権での42年ぶりの優勝など、女子日本代表は『世界の王座』に君臨しているが、エース・上野由岐子投手に続く投手の発掘・育成を急がなくてはならない状況にある。『世界一』であり続けるためには、皆さんの力が必要であり、ここから一人でも二人でも、世界の舞台で通用する投手が出てきてくれることを期待したい」と結んだ。
 公益財団法人日本ソフトボール協会・利根川勇選手強化本部会・女子強化委員長は、「選考基準は、『世界の舞台』で通用するか否かという1点のみ。球速でいえば、最低105km/h、理想をいえば110km/hを超えるスピードがほしいし、それを大前提とした上で、キレのある変化球をしっかりとコントロールできる能力が必要と考えている。世界のレベルを考えると、球速・球威では日本のピッチャーは劣る傾向があり、国内で『速球派』『本格派』といわれるピッチャーが、『打ち頃』となってしまう場合もある。また、ちょっとコントロールを間違うとフェンスオーバーされてしまう。我々が求めているのは、そういう高いレベルで戦うことができる、通用する、ピッチャーであるということをまず理解した上で選考会に臨んでほしい」と、厳しい言葉が選手たちに向けられ、選考会がスタートした。

 今回の選考会では、それぞれの投手がまず自分の有する球種を申告。選考委員指定した球種を投げ込む形で選考が進められた。
 選考会初日は、一人ひとり球速を測定、同時に有する球種・変化球のキレ、コントロール等が入念にチェックされ、2日目・3日目は、一塁側・ピッチャープレート・三塁側と三カ所で6分間ずつローテーションする形で投球を行い、球速の測定、指定された球種のキレ、コントロールが厳しくチェックされた。
 また、バント処理を中心にフィールディングのテストも行われ、ピッチングだけではなく、フィールディングを含めたピッチャーとしての「総合力」も求められる選考内容となっていた。

 選考にあたった女子日本代表・宇津木麗華ヘッドコーチは、「シーズン開幕前のこの時期、ましては何十年に一度という大雪にも見舞われ、選手のコンディションを心配したが、さすがにこの選考会に出てくるような選手たちは、しっかりとコンディションを調整してきてくれていたし、十分に仕上がっていない状態ではあっても、その中で最大限の力を発揮してくれていた。個々の状態に応じて、自分の持ち味・特徴は何か、何をアピールすべきかをわかっている。さすが日本を代表する選手たちだな……と感心させられた」と、この選考会に対する選手たちの意気込み・意欲を高く評価。その一方で、「特にイリーガルピッチには気をつけてほしい。投球規定が変わり、ジャンピングやツーステップ的な投げ方は、『なんでもあり』の状態で許容範囲が大幅に広がっているのに、ピッチャープレートの踏み方には、非常に神経質というか、厳しいというか……。ピッチャープレートからバックステップしたと見られるような動きには本当に厳しくイリーガルピッチが宣告される。こうなってしまうと、どんなに能力の高いピッチャーでも試合で使うことができなくなってしまう。それだけに、常日頃から正しい投球動作をしっかりと身につけておいてほしいと思うし、そのための練習を日々積み重ねてほしい。イリーガルをとられてしまうと、戦う以前の問題で、試合で投げさせること、大会に出場させることができなくなってしまう。その点だけは注意し、日頃から意識して練習を積んでほしい」と、警鐘を鳴らした。
 公益財団法人日本ソフトボール協会・福島正一選手強化本部長は、「国を代表して世界の舞台で戦うということ、『日本代表』のユニフォームを身にまとうことの意味、価値をもう一度考えてほしい。『世界チャンピオン』である日本で『代表』に名を連ねることの重さ、誇り、プライド……。それをより高めていくのは自分自身であり、そのプレーにかかっている。『日本代表』での活動は、他の何よりも最優先にされるべきものであって、唯一無二のものである。『日本代表』での活動を辞退しておきながら、他の大会に出場したりするようなことはあってはならないのではないか」と、このところ続いた『代表辞退』について厳しい見解を示し、「もちろん、私たちも『日本代表』が、皆の憧れであり、より魅力的なものとなるよう努力していかなければならない。選手の方から『日本代表に入りたい』『日本代表でプレーしたい』と憧れ、望まれるような存在でなければならないし、そのためにはまず『強く』あらねばならない。世界選手権での2連覇、アジア競技大会での4大会連続の金メダル獲得を果たし、自他ともに認める『強い日本代表』となることが、チームの魅力につながり、誰もが憧れる存在となることができるのだと思う」と、『日本代表』のあるべき姿を語った。

 エース・上野由岐子に続く投手の不在……そう言われて久しいが、今回の選考では、110km/hを超える球速を記録した投手もおり、今後の日本を担っていく「素材」がいないわけではない。中学生を対象としたNTS(全国女子ジュニア育成中央研修会)でも、この段階で100km/hを超える投手が複数名おり、上野に続く「可能性」を持った素質・能力を持った選手はいるのである。

 問題は、それをどう磨き、伸ばしていくか。選手強化本部会でも、バッテリー合宿の実施が検討されているとのことだが、「世界チャンピオン」であり続けるのであれば、ソフトボールという競技の「生命線」である投手力の強化・底上げを行うために、協会組織を挙げて、アイディアを出し合い、総力を結集し、強化を行う必要があるだろう。
 また、各チームそれぞれに「勝つ」ことを義務づけられ、勝たなければならない状況にあることは重々理解しているが、世界の強豪国の「エース」が揃う日本リーグの中にあっても、日本人投手にも登板機会を与え、実戦で投げる機会を作っていかないと、せっかくの「素材」も宝の持ち腐れに終わってしまう可能性もある。
 それらを含め、何らかの打開策を見出していかないと、いつの間にか「世界のレベル」から取り残され、過去の栄光にすがるような状態にもなりかねない。「世界チャンピオン」である今だからこそ、やらなければいけないことがあるはずである。

平成26年度 女子日本代表チーム 投手選考会 選考委員
公益財団法人日本ソフトボール協会選手強化本部会女子強化委員

選考会参加者
選手名 所属
黒川 春華  ルネサスエレクトロニクス高崎
中野 花菜  ルネサスエレクトロニクス高崎
尾普@望良  太陽誘電
藤田 倭  太陽誘電
五味 彩華  戸田中央総合病院
濱村 ゆかり  木更津総合高
岡村 奈々  日本体育大
中村 友佳  トヨタ自動車
細野 了華  トヨタ自動車
山根 佐由里  トヨタ自動車
井俣 茉莉  豊田自動織機
栗田 美穂  豊田自動織機
近藤 光  デンソー
重藤 恵理佳  デンソー
長谷川 朋子  中京大
木村 麻利亜  東海学園大
長瀬 りえ  東海学園大
松本 優香  シオノギ製薬
岩田 みゆき  シオノギ製薬
泉 礼花  園田学園女子大
木村 久美  伊予銀行
加藤 あずさ  立命館大
千葉 美咲 SGホールディングスグループ