大会4日目(7月16日/月 ※日本時間・7月17日/火)、予選リーグ前半にオーストラリア、カナダという「予選リーグ・セクションB」の上位進出を争うと見られる「当面のライバル」との対戦を終え、無傷の3連勝と好調な日本は、予選リーグ第4戦で台湾と対戦した。  
     一方の台湾は、初戦のカナダ戦に0−6と完敗。これで出鼻をくじかれたか、続くイギリス戦も0−1で敗れ、「まさか」の連敗。3戦目にしてようやくイタリアを9−2で破り、今大会初白星を挙げたものの、黒星先行の状態で日本戦に臨むことになり、決勝トーナメント進出を狙うには、もう後がない状況での試合となった。 
    
    
      
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        計 | 
       
      
        | 台 湾 | 
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        | 日 本 | 
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     日本の先発は「エース」上野由岐子。前日のカナダ戦に続く、「連投」となった。予選リーグ前半戦の「山場」と見られたオーストラリア戦、カナダ戦に勝利し、無傷の3連勝を飾っているだけに、この試合は「エース」を温存するかと思われたが、上位進出の可能性のあるチームには、すべて「エース」をぶつけ、確実に叩いておくことを宇津木麗華ヘッドコーチは選択した。 
     上野由岐子はその立ち上がり、先頭打者を三振に斬って取ると、後続をセカンドゴロ、セカンドゴロに打ち取り、簡単に三者凡退。「貫禄」のピッチングで試合をスタートさせた。 
     日本はその裏、一死から2番・西山麗がレフト前ヒットで出塁。3番・大久保美紗も一・二塁間を破り、一・二塁とチャンスを広げたが、スタメン復帰を果たした「主砲」山田恵里、今大会打撃好調の藤野遥香が連続三振に倒れ、先制のチャンスを逃した。 
     日本はその後も、3回裏の一死二塁、4回裏の二死一・二塁、5回裏の一死三塁、6回裏の無死二塁、7回裏の一死三塁と、2回裏を除き、毎回得点圏に走者を進めながら、「あと一本」が出ず、押しに押しながら得点を奪うことができない。 
     3回以降は毎回ノーアウトのランナーを出しながら、ことごとく送りバントを失敗。最初の躓きが影響したのか、「丁寧にやらなければ」「確実に送らなければ」と、金縛りにでもあったかのようにバント失敗を繰り返し、再三のチャンスをモノにすることができず、両チーム無得点のまま、試合は延長タイブレーカーへともつれ込んだ。 
     しかし、こんな膠着状態になっても、日本が誇る「世界のエース」はまったく動じなかった。7回まで一人の走者も許さぬ、パーフェクトピッチング。久々の「完全試合」達成となるところだったが、7回で決着をつけることができず、延長タイブレーカーへと突入してしまったため、偉業達成は「幻」となってしまったが、ここからが「世界のエース」上野由岐子の真骨頂。タイブレーカーの走者を二塁に背負い、1点もやれない状況となると、8回からの3イニング・打者8人に対し、6三振を奪う力投で得点を与えず、味方打線の援護を待った。 
     ここまで「エース」が完璧なピッチングを展開しても、この日の日本はそれに応えることができない。延長タイブレーカーに入り、台湾の攻撃を無得点に封じ、「1点取ればサヨナラ」という状況にありながら、8回裏の一死満塁のチャンスを逃し、9回裏は無死一・二塁を送れず得点なし。10回裏も、無死一・二塁を送れず、嫌な雰囲気が漂ったが、6番・峰幸代がライト頭上を越える二塁打を放ち、ようやくサヨナラ。「消化不良」のゲームにピリオドを打った。 
     昨日まで、しっかりとつなぎ、派手さこそなくても、チャンスを確実に得点に結びつけるソフトボールを展開していたチームが、この台湾戦は「別人」のようだった。とにかく送りバントで走者を進めることができず、悪循環の繰り返し。「エース」の力投がなければ、どう転ぶかわからない試合だった。 
     しかし、こんな試合になっても、「切り札」がいるのは強い。相手にヒットすら許さない「エース」がいてくれたら、こんな展開になっても負ける気はまったくしなかった。前半は、若干守備に不安のあるセカンド・鈴木美加に「練習」を積ませるかのように、セカンドにゴロを集める「計算ずく」のピッチングを楽しむかのようであったが、味方打線が拙攻を繰り返し、「1点もやれない」試合展開となると、見事なまでのギアチェンジ。延長タイブレーカーに入ってからは、送りバントすら許さず、「何かが起こる」可能性を極力排除するために、「狙って」三振を奪い、打者8人から6奪三振という完璧なまでのピッチングで日本に勝利を呼び寄せた。 
     世界選手権のように、10日間も試合が続く大会では、この台湾戦のように「エアポケット」に入ってしまったかのような試合があることは確かである。何をやっても上手くいかない、やるべきことができない、そんな試合もあるものである。 
     ここで大切なことは「負けない」ということである。優勝するチームは、そういう「負けパターン」の試合となっても、何とか凌ぎ、勝利に結びつけていくのである。「負けパターン」にはまり、文字通り負けてしまうのは、力のないチームのやることだ。 
       その意味では、こんな「負けパターン」の試合を勝利に変えてしまうのは、日本に「力がある」ということでもある。本当に負けてしまっては何の意味もない。苦しみながらも勝ち、「負けパターン」の試合を「勝ち試合」にひっくり返すことで、また一つ勝負強さが備わり、逞しさが生まれてくるのである。 
     試合内容は褒められたものではない。むしろ反省点ばかりだ。ただ……それでも「勝つ」ことができる。最終的には「勝利」を手にしている。それもまた「強いチーム」であるといえよう。 
      なぜなら「勝ち続ける」ことこそが「強者」足り得る唯一の条件であり、勝ち続けた者だけが「王座」へと辿り着けるのだから。 
     
        
       
    第13回世界女子選手権大会 第4日 
    
      
        | 予選リーグ第4戦 台湾戦スターティングラインアップ | 
         
      
        | 打順 | 
        守備 | 
        選手名 | 
        所属 | 
       
      
        | 1 | 
        9 | 
        河野 美里 | 
        太陽誘電 | 
       
      
        | 2 | 
        6 | 
        西山  麗 | 
        日立ソフトウェア | 
       
      
        | 3 | 
        3 | 
        大久保美紗 | 
        ルネサスエレクトロニクス高崎 | 
       
      
        | 4 | 
        8 | 
        山田 恵里 | 
        日立ソフトウェア | 
       
      
        | 5 | 
        DP | 
        藤野 遥香 | 
        トヨタ自動車 | 
       
      
        | 6 | 
        2 | 
        峰  幸代 | 
        ルネサスエレクトロニクス高崎 | 
       
      
        | 7 | 
        5 | 
        坂元 令奈 | 
        トヨタ自動車 | 
       
      
        | 8 | 
        7 | 
        岩渕 有美 | 
        ルネサスエレクトロニクス高崎 | 
       
      
        | 9 | 
        4 | 
        鈴木 美加 | 
        トヨタ自動車 | 
       
      
        | FP | 
        P | 
        上野由岐子 | 
        ルネサスエレクトロニクス高崎 | 
       
     
     
    
      
        | ※選手交代 | 
       
      
        | イニング | 
          | 
         
      
        | 4回裏 | 
        代走 | 
        藤野OUT→関友希央(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN | 
       
      
        | 5回表 | 
        再出場 | 
        関OUT→藤野遥香(トヨタ自動車)IN | 
       
      
        | 6回裏 | 
        代走 | 
        峰OUT→相馬満利(日本体育大)IN | 
       
      
        | 7回表 | 
        再出場 | 
        相馬OUT→峰幸代(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN | 
       
         
     
    
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