2012.7.16

 

 

──C
第13回世界女子ソフトボール選手権大会 第3日

日本、カナダに快勝!
全勝対決制し、3連勝!!

カナダ戦を前に、ルーシー・カサレスコーチが
バッティングピッチャーを務め、チェンジアップの
多いカナダ投手陣を想定し、入念に打ち込む!

日本はエース・上野を先発に立て、必勝を期す!

地元「カナダ」を応援すべく、満員の観客が後押し!

スタメン起用に応え、「持ち味」を十分に発揮した
関友希央。得意のスラップでチャンスを演出した

打撃好調の峰幸代。この試合でも2本のタイムリーを
放つ大活躍。チャンスに強い打撃で勝利に貢献した

攻守に安定感のあるプレーを見せる坂元令奈。
勝負強い打撃と堅実な守備でチームを支える

6回表、カナダは「世界のエース」上野由岐子から
連打で2点を返し、スタンドを沸かせたが……

42年ぶりの世界選手権優勝へ!
一歩一歩確かな歩みを刻んで……

 
 


 大会3日目(7月15日/日)、日本は予選リーグ第3戦で地元・カナダと対戦。カナダはここまで台湾に6−0、メキシコに8−0と2連勝。地元の満員の観客と大声援にも後押しされ、快調に飛ばしている。  この日は日曜日、しかも同じく2連勝の日本が相手とあって、いつにも増してたくさんの観客が球場に詰めかけ、スタンドはカナダファン一色に染まり、日本にとっては完全に「アウェー」の雰囲気。予選リーグ・セクションB「前半戦の山場」となる日本対カナダの一戦がはじまった。

大会第3日
予選リーグ第3戦/カナダ戦

  1 2 3 4 5 6 7
カナダ 0 0 0 0 0 2 0 2
日 本 0 1 3 0 1 1 x 6
○上野(7回)−峰
 

 日本の先発は「エース」上野由岐子。ここまで2連勝と好調なチーム同士、予選リーグ・セクションBの首位争いを展開する「当面のライバル」との直接対決だけに、必勝を期して「エース」を先発に立てた。
 その立ち上がり、初球をセンター前に運ばれ、カナダファン一色に染まるスタンドが一気に勢いづいたが、送りバントで一死二塁となった後、3番打者の三遊間奥深くを襲うヒット性の当たりを「名手」西山麗がいとも簡単に捌き、二塁走者の進塁も許さず、二死二塁とし、このバックの好守に応えるように、「エース」上野由岐子も4番打者を三振に打ち取り、初回のピンチを切り抜けた。

 日本は2回裏、この回先頭の4番・藤野遥香がの打球がセカンド手前でイレギュラー(記録はヒット)。ノーアウトの走者を出し、5番・峰幸代は送りバント、バスターなどを試みるが、いずれも失敗。一死一塁となった後、6番・坂元令奈がしぶとくセンター前に落とし、一塁走者・藤野遥香が判断良く三塁を陥れ、ライトの三塁送球の間に打者走者・坂元令奈が二塁を狙うと、慌てた三塁手が二塁へ悪送球。日本のしぶとくつなぐ打撃と積極果敢な攻めがカナダ守備陣のミスを誘い、日本が先取点を挙げた。

 続く3回裏には、この試合スタメンに起用された9番・関友希央が持ち前の俊足を生かした得意のスラップで相手守備陣を揺さぶり、内野安打。1番・河野美里が四球を選び、一・二塁とチャンスを広げると、2番・西山麗が追い込まれながらも最低限の仕事を果たす進塁打で二・三塁に走者を進め、3番・大久保美紗の内野安打で1点を追加。二死後、5番・峰幸代、6番・坂元令奈の連打で2点を加え、この回3点を奪い、4点差にリードを広げた。

 日本は5回裏にも、死球と峰幸代、坂元令奈の連打で1点を追加。6回表、カナダの「意地」の反撃に2点を失ったものの、その裏、1番・河野美里の痛烈な当たりのライト前ヒットを足掛かりに、二死一・二塁のチャンスをつかむと、打撃好調の5番・峰幸代がダメ押しのタイムリー。粘るカナダの息の根を止める1点を追加。完全に勝負を決めてしまった。

 6回表、日本が誇る「世界のエース」上野由岐子を攻め、2点を返し、意気上がったカナダだったが、最後はもう一度ギアを入れ直した上野由岐子の「貫禄」のピッチングの前に、セカンドフライ、ファーストゴロ、セカンドゴロと三者凡退に抑えられ、今大会初黒星を喫した。

 「エース」上野由岐子は初戦のオーストラリア戦が初回に本塁打を浴び、1失点。この試合も終盤6回に2点を失うなど、2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得したときのような鬼気迫る「凄み」を感じさせるような投球内容ではないものの、試合展開や得点差、イニングやアウトカウントまで考えた上で、常に「余裕」が感じられるピッチングを展開している。
 今後、予選リーグ終盤、あるいは決勝トーナメントなど、本当の意味で「勝負」がかかったときに、どんなピッチングを見せてくれるか、注目したいところだが、見た目に派手でわかりやすい「世界最速」や「奪三振数」とは、また違ったピッチングの「妙味」や「投球術」が感じられ、どんな形で再び「世界の頂点」に登り詰めてくれるのか、興味は尽きない。

 また、その「エース」を支え、盛り立てるバックの好守も見逃せない。予選リーグ前半戦の「山場」と目されたカナダとの大事な一戦の前に、「主砲」山田恵里が体調不良でスタメンを外れるというアクシデント、緊急事態に見舞われながら、チーム全体でそれをカバーし、その「穴」をまったく感じさせない戦いぶりを見せた。
 山田恵里の欠場でセンターに回った河野美里がファインプレーを演じれば、スタメンDPに起用された関友希央が自分の「持ち味」「特徴」を生かしたプレーでチャンスを作るなど、今大会起用された選手は、その「期待」に応え、自らの役割と仕事をしっかりと理解し、着実にその「任務」を果たしている。決して派手さはなく、目を引くような破壊力もないが、「最低限進塁打で先の塁へ進める」「一つでも先の塁を狙う」といったある面では「当たり前」のプレーを一つひとつ地道に積み重ね、つなぎ、積極的な走塁でチャンスを広げ、確実に得点に結びつけている。あるいは、バント、スラップ、バスター、ヒットエンドランなど、機動力を絡めた攻めで相手のミスを誘って得点するなど、「日本らしい」ソフトボールで勝利をつかんでいる。

 今日の試合でも、得点差以上に日本とカナダには「力の差」があり、展開するソフトボールの「質」にも大きな開きがあった。2点を奪われたシーンでさえ、「せっかく満員のお客さんが詰めかけてくれたのだから、少しはサービスしてあげなきゃ」くらいの感覚があり、「追い上げられている」「危ない」といった感じはまったくなかった。

 もちろん「油断」してはならないが、それぐらい今回のチームには「余裕」と「落ち着き」が感じられる。どんなに苦しい場面になっても何とかしてくれそうな逞しさ、誰かに頼るのではなく、それぞれがチームを支え、力となっていく強さ、そういったものが感じられる。
 2008年の北京オリンピックのときのように、「夢」とか「悲願」とか、そんな大げさなものではなく、ごく自然な出来事として、「世界一」を勝ち獲ってくれそうな、そんな気がする「チーム」である。



第13回世界女子選手権大会 第3日

予選リーグ第3戦 カナダ戦スターティングラインアップ
打順 守備 選手名 所属
1 8 河野 美里 太陽誘電
2 6 西山  麗 日立ソフトウェア
3 3 大久保美紗 ルネサスエレクトロニクス高崎
4 9 藤野 遥香 トヨタ自動車
5 2 峰  幸代 ルネサスエレクトロニクス高崎
6 5 坂元 令奈 トヨタ自動車
7 7 岩渕 有美 ルネサスエレクトロニクス高崎
8 4 鈴木 美加 トヨタ自動車
9 DP 関 友希央 ルネサスエレクトロニクス高崎
FP 上野由岐子 ルネサスエレクトロニクス高崎

※選手交代
イニング  
5回裏 代走 藤野OUT→相馬満利(日本体育大)IN
代打 鈴木OUT→山田恵里(日立ソフトウェア)IN
再出場 山田OUT→鈴木美加(トヨタ自動車)IN
代打 関OUT→古田真輝(豊田自動織機)IN
6回表 再出場 藤野遥香(トヨタ自動車)がライトの守備に再出場