去る6月15日(金)〜17日(日)、「第1回東アジアカップ」が韓国・大邱で開催された。大会には、女子大学日本代表が参加。開幕戦こそ敗れたものの、各国の代表チームを相手に堂々の試合を展開。予選リーグを2勝1敗の2位で通過し、決勝トーナメントへ駒を進めると、決勝トーナメントの初戦で予選リーグ1位の中国と対戦。先発・泉礼花(園田学園女子大学)が緩急自在のピッチングで「優勝候補」中国を完封。一足先にゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)進出を決め、ゴールドメダルゲームでは敗者復活戦を勝ち上がった中国と再戦。先攻を取った女子大学日本代表は初回、4本の長短打を集中する鮮やかな先制攻撃で2点を先制。4回表には舛田妃美呼(山梨学院大学)、岩見香枝(日本体育大学)、塚本智名(中京大学)の3連続長短打で2点を追加。先発・泉礼花(園田学園女子大学)、三木綾菜(日本体育大学)、長谷川朋子(中京大学)、平原かすみ(東京女子体育大学)の4投手をつぎ込む継投策で中国打線の反撃を2点に抑え、記念すべき第1回大会を制し、「初代チャンピオン」の座を勝ち獲った。
「東アジアカップ」は、日本、中国、台湾、韓国の4カ国が参加して行われる国際大会で、国際的に見てもソフトボールが盛んで競技力の高い東アジア地域の4カ国が集まり、さらなるレベルアップを図るとともに、オリンピック、アジア競技大会等と同じように「総合競技大会」として開催されている「東アジア競技大会」でのソフトボール競技の実施をめざし、創設された大会である。また、それを一つのステップとして、「東アジアからオリンピック競技復帰へのムーブメントを起こしていこう」との狙いもあり、この韓国・大邱での「第1回大会」の開催を皮切りに、来年は日本、次に中国、その次が台湾と4カ国持ち回りでの開催が予定されている。
大会には、日本を除く3カ国が代表チームで参加。特に、中国、台湾は、この「第1回東アジアカップ」の後、7月13日(金)〜22日(日)、カナダ・ホワイトホースで開催される「第13回世界女子選手権大会」の「前哨戦」としてとらえ、「ベストメンバー」で大会に臨んできた。日本は、「女子大学日本代表」に次ぐカテゴリーである「女子大学日本代表チーム」が大会に参加。各国の「代表チーム」を相手に「若き戦士たち」が戦いを挑んだ。
大会は、大会参加の4チーム、中国、台湾、韓国、女子大学日本代表がシングルラウンドロビン(1回戦総当たり)方式の予選リーグを行い、順位を決定。その順位に従って、ページシステム(敗者復活戦を含むトーナメント)の決勝トーナメントを行い、最終順位を決定する試合方式で覇が競われた。
6月15日(金)、女子大学日本代表は、大会の「オープニングゲーム」となった中国戦で、先発・三木綾菜(日本体育大学)が中国打線につかまり、序盤で3失点。3回表に山本絵梨奈(東京女子体育大学)のタイムリーなどで2点を返し、4回表には、山本紗耶加(東北福祉大学)のソロホームランで一度は同点に追いついたが、5回裏に決勝点を奪われ、3−4で競り負け、大事な初戦を落とした。
この日はダブルヘッダーとなり、続く台湾戦に臨んだが、初回に2点を先制しながら、その裏、相手4番打者に満塁本塁打を浴びるなど、一挙5点を失う苦しい試合展開。雨の中での試合でもあり、先制しながら簡単に逆転を許したことで、「やはり代表チームにはかなわないのか……」と重苦しい雰囲気になりかけたが、終盤、打線が奮起。5回表、6回表に計11点を奪う猛攻を見せ、「若さの無限のパワー」で大逆転。終わってみれば、14−6の6回コールド勝ちを収め、予選リーグ2位通過が見えてきた。
翌16日(土)、予選リーグ最終戦となった韓国戦では、4回まで1−1の同点と予想外の試合展開となったが、この試合でも終盤に打線が爆発! 5回表、山本絵梨奈(東京女子体育大学)の三塁打を含む5本の長短打を集中し、5点を勝ち越し。続く6回表にも舛田妃美呼(山梨学院大学)、岩見香枝(日本体育大学)、山本紗耶加(東北福祉大学)の二塁打を含む5長短打を放つなど、打者10人を送る猛攻で5点を追加。6回コールド勝ちを収め、通算成績を2勝1敗とし、予選リーグ2位で決勝トーナメント進出を決めた。
この日もダブルヘッダーとなり、決勝トーナメントの初戦で予選リーグ1位の中国と対戦。開幕戦で敗れている「優勝候補の本命」を相手に、女子大学日本代表が堂々の試合を展開。
先発・泉礼花(園田学園女子大学)が緩急自在のピッチングで中国打線を翻弄。5安打されながらも要所を締め、中国打線を無得点に封じると、3回表、二階堂夏帆(日本体育大学)のタイムリーで先手を取り、7回表には、塚本智名(中京大学)が中国の息の根を止めるソロホームランを放ち、2−0の完封勝利。「優勝候補」の本命に快勝し、一足先にゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)進出を決めた。
大会最終日(17日/日)、女子大学日本代表は、ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)で敗者復活戦を勝ち上がった中国を待ち受け、初回に相馬満利(日本体育大学)、山本紗耶加(東北福祉大学)の連打で一死一・三塁のチャンスを作り、二階堂夏帆(日本体育大学)がヒットエンドランを決め、まず1点を先制。さらに澤井美佑(日本体育大学)が右中間へ二塁打を放ち、この回2点を先制。鮮やかな先制攻撃で先手を取ると、2回裏に1点を失ったものの、4回表には舛田妃美呼(山梨学院大学)、岩見香枝(日本体育大学)、塚本智名(中京大学)が3連続長短打を放つなど、決定的な2点を追加。このリードを先発・泉礼花(園田学園女子大学)、三木綾菜(日本体育大学)、長谷川朋子(中京大学)、平原かすみ(東京女子体育大学)の4投手をつぎ込む継投策で中国の反撃をかわし、4−2で快勝。各国の「代表チーム」を向こうに回し、記念すべき「第1回大会」の王座を勝ち獲った。
大会を終え、利根川勇ヘッドコーチ(日本体育大学)は、「三科コーチの東京国際大学で直前合宿を行えたことが大きかった。太陽誘電・山路典子監督の好意もあり、日本のトップレベルのチームを相手に勉強させていただく機会を得たことに大きな意義があった。雨で予定していた内容を大幅に変更せざるを得なかったのは残念であったが、それでもトップレベルのチームを相手に実戦形式の練習を行う機会を得たことで、選手の個々の能力や適性、特徴を確認・把握することができ、大会へ臨む準備をしっかり積むことができた」と直前合宿の意義を語り、「大会では、最初は各国の代表チームが相手とあって、どこまでやれるか不安なところもあったが、初戦の中国戦で接戦を演じられたことで、ある程度の手応えが感じられ、その後はノビノビと持てる力を発揮することができた。今大会で優勝したとはいえ、まだまだ未完成で伸び盛りの大学生。この経験を糧に、さらに鍛え、成長し、もう一つ上のカテゴリー『日本代表』に名を連ねるような選手になってほしい」と、今大会の優勝を喜びながらも、選手たちの「今後の成長」に期待する言葉を続けた。
但尾哲哉コーチ(神戸親和女子大学)は、「大会直前に宿泊を伴う合宿を行うことで、選手同士のコミュニケーションを図ることができ、チームの一体感、まとまりが生まれた。大会では、利根川ヘッドコーチの指揮の下、選手たちが持てる力を十分に発揮し、それぞれの与えられた役割を果たし、優勝を勝ち獲ることができた。選手たちは一戦一戦成長し、強くなっていった。その選手たちの力を引き出す、利根川ヘッドコーチの手腕も『さすが』と感じた」と、「利根川マジック」と称される采配・選手起用を間近にし、改めて感じ入った様子。「第1回大会を制したことで、第2回大会をどう戦い、どう勝つかという課題も生じた」と、その目はすでに「新たな目標」を見据えていた。
三科真澄コーチ兼総務(東京国際大学)は、「まず『日本代表』として日の丸を背負い、戦うことの意味、重さ、自覚を感じてほしかった。その意味でも、選手たちは本当に素晴らしかったし、優勝という結果を勝ち獲ることができて良かった」と、自らも「日本代表」として戦い続けてきた「先輩」として、「良き伝統」を継承できたことを喜びながら、「この大会を戦った17名は、文字通り大学の『トッププレイヤー』として、今後はすべての大学生の見本・手本となるようなプレーを見せていかなければならないし、普段の私生活においても模範となるような行動を心がけていく必要がある。『日本代表』に名を連ね、戦った者は、その誇り、プライドを片時も忘れてはならない。また、今回の大会に臨む代表選手を選出する選考会にあれだけ多くの参加があり、夢叶わなかった選手の『想い』まで背負っていく使命と責任があることを忘れず、今大会の経験を今後に生かしていってほしいと思う。今回、惜しくも選に漏れた選手たちも、夢を諦めることなく、チャレンジを続け、追いつき追い越せの精神で頑張ってほしい」と、すべての選手たちに「エール」を贈った。
各国の代表チームを相手に、「優勝」という「快挙」を成し遂げた女子大学日本代表。改めてそのポテンシャルの高さを感じさせた。日本リーグで戦う選手たちとはまた違った面で多くの魅力と可能性を秘めた選手たちである。
この経験を糧に、さらなる成長を期待し、自分自身が「もう一つ上」のカテゴリーで真の「日本代表」となることをめざすと同時に、将来指導の現場でこの貴重な経験を多くの人々に伝えていってほしいと願う。ソフトボールの楽しさ、面白さ、魅力、難しさ、奥深さ……それを伝えていくことこそが、この「東アジアカップ」創設の理念に適うものであるはずである。

第1回東アジアカップ 日本戦 試合結果 |
・予選リーグ |
6月15日(金) |
●予選リーグ第1戦 |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
女子大学日本代表 |
0 |
0 |
2 |
1 |
0 |
0 |
0 |
3 |
中 国 |
1 |
2 |
0 |
0 |
1 |
0 |
x |
4 |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
計 |
女子大学日本代表 |
2 |
0 |
1 |
0 |
5 |
6 |
14 |
台 湾 |
5 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
6 |
※大会規定により、6回得点差コールド
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
計 |
女子大学日本代表 |
1 |
0 |
0 |
0 |
5 |
5 |
11 |
韓 国 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
1 |
※大会規定により、6回得点差コールド
※女子大学日本代表、予選リーグ2勝1敗の2位で決勝トーナメント進出
○決勝トーナメント(1位・2位戦)
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
女子大学日本代表 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
1 |
2 |
中 国 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
※女子大学日本代表、ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)進出
6月17日(日) |
○決勝トーナメント・ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝) |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
女子大学日本代表 |
2 |
0 |
0 |
2 |
0 |
0 |
0 |
4 |
中 国 |
0 |
1 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
2 |
※女子大学日本代表、優勝

平成24年度 女子大学日本代表チーム
第1回東アジアカップ 出場選手名簿
※守備別・五十音順
No. |
守備 |
氏名 |
支部 |
所属 |
1 |
投手 |
泉 礼花 |
兵庫 |
園田学園女子大学 |
2 |
〃 |
長谷川 朋子 |
愛知 |
中京大学 |
3 |
〃 |
平原 かすみ |
東京 |
東京女子体育大学 |
4 |
〃 |
三木 綾菜 |
東京 |
日本体育大学 |
5 |
捕手 |
澤井 美佑 |
東京 |
日本体育大学 |
6 |
〃 |
妹山 玲奈 |
山梨 |
山梨学院大学 |
7 |
内野手 |
岩見 香枝 |
東京 |
日本体育大学 |
8 |
〃 |
亀井 愛梨 |
兵庫 |
園田学園女子大学 |
9 |
〃 |
相馬 満利 |
東京 |
日本体育大学 |
10 |
〃 |
二階堂 夏帆 |
東京 |
日本体育大学 |
11 |
〃 |
古澤 春菜 |
兵庫 |
園田学園女子大学 |
12 |
〃 |
山本 絵梨奈 |
東京 |
東京女子体育大学 |
13 |
〃 |
山本 紗耶加 |
宮城 |
東北福祉大学 |
14 |
外野手 |
塚本 智名 |
愛知 |
中京大学 |
15 |
〃 |
永溝 早紀 |
岡山 |
環太平洋大学 |
16 |
〃 |
長谷川 千尋 |
三重 |
鈴鹿国際大学 |
17 |
〃 |
舛田 妃美呼 |
山梨 |
山梨学院大学 |
▼役員・スタッフ
No. |
役職 |
氏 名 |
支部 |
所属 |
1 |
団長 |
高橋 伸次 |
|
(公財)日本ソフトボール協会 |
2 |
ヘッドコーチ |
利根川 勇 |
東京 |
日本体育大学 |
3 |
コーチ |
但尾 哲哉 |
兵庫 |
神戸親和女子大学 |
4 |
コーチ兼総務 |
三科 真澄 |
埼玉 |
東京国際大学 |
5 |
トレーナー |
大石 益代 |
|
(公財)日本ソフトボール協会 |
6 |
帯同審判 |
濱田 良雄 |
山口 |
(公財)日本ソフトボール協会 |
|