10日間にわたり開催されてきた第9回世界男子ジュニア選手権大会も、いよいよこの日が最終日。決勝トーナメント初戦(予選リーグセクションA1位・セクションB2位戦)に勝利した日本は、ファイナル(ゴールドメダルゲーム)進出をかけ、再びホスト国・アルゼンチンとセミファイナルで激突することになった。
当初は、前日の9日(金)に予定されていたセミファイナルだったが、この日、午後から突然の激しい雷雨に見舞われ、予定されていたすべての試合が中止。急遽その日の夜に代表者会議が開かれ、何とか大会スケジュールを予定された期間内に終了できるようにと、試合開始時間の調整、また試合会場の調整が行われ、各チームへ翌日の試合日程が連絡された。
日本は、10日(土)、まず午後4時よりホスト国・アルゼンチンとファイナル進出をかけ、セミファイナルで対戦。勝てばファイナル進出が決まり、優勝までファイナルを含め、2試合を戦うことになるが、セミファイナルに敗れた場合は、ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)に回り、トリプルヘッダーを戦わなければならないという「超過酷」なスケジュールが組まれた。
11月10日(土)/決勝トーナメント(セミファイナル) |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
計 |
日 本 |
1 |
0 |
0 |
1 |
2 |
アルゼンチン |
2 |
0 |
7 |
3x |
12 |
※大会規定により4回得点差コールド
(日本)●河野拓郎(2回1/3)・奥永拳也(1回1/3)−山内直人
(日本):《本》溝口聖 |
先攻の日本は初回、「切り込み隊長」溝口聖が、鋭い当たりでいきなりライト線を破ると、相手右翼手がこの打球の処理をもたつく間に、俊足を飛ばして一気に本塁を陥れ、ランニングホームランで早々と1点を先制。「難敵」から大きな先手点を挙げ、「この対戦こそは!」と意気込む日本が、流れをつかんだかに思われた。
しかし、アルゼンチンはその裏、先頭打者が二遊間を強烈に破るツーベースで出塁すると、次打者もライト前ヒットで続き、無死一・三塁。一死後、死球で満塁とし、続く5番打者のライト前へのタイムリーで二者が生還。日本の先発左腕・河野拓郎の立ち上がりを攻め、あっという間に逆転に成功した。地元の大声援にも後押しされ、勢いに乗るアルゼンチンは、3回裏にも日本に5安打を浴びせる集中攻撃。日本守備陣の乱れにもつけ込み、大量7点を奪い、リードを広げると、日本が1点返した直後の4回裏には、連続四球とエラー等で再び一死満塁のチャンスを作り、先発・河野拓郎に代わった奥永拳也からセンターオーバーのタイムリースリーベースを放ち、さらに3点を追加。4回コールド勝ちを成立させる10点差に得点差を広げ、日本を圧倒。一足先にファイナル進出を決め、ファイナルでトーナメントを勝ち上がってくるチームを待ち受ける形となった。
決勝トーナメント/ブロンズメダルゲーム(3位決定戦) |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
計 |
日 本 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
2 |
1 |
5 |
オーストラリア |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
1 |
0 |
2 |
0 |
4 |
(日本)○岡崎建斗(10回)−山内直人
(日本):《三》岡崎建斗A 《二》山内直人A、溝口聖、藤原雄歩、西森圭祐 |
セミファイナルに敗れた日本にとって、この試合はまさに正念場。敗れても銅メダル獲得になるとはいえ、あくまで「世界一の座」だけをめざしている日本としては、絶対に負けられない勝負の一戦となった。
先攻の日本は初回、一死から2番・藤原雄歩が四球で出塁。すかさず二盗、三盗を成功させ、二死三塁のチャンスを作ると、この試合4番に入った岡崎建斗が右中間へ火の出るような当たりのタイムリースリーベース。前日のオーストラリア戦で「ヒーローとなった男」が、この試合でも輝きを放ち、日本に先制点をもたらした。
しかし、王者・オーストラリアも黙ってはいない。5回裏、この回先頭の8番打者が捨て身でベースにかぶさり、死球で出塁すると、次打者もセンター前ヒットで続き、無死一・三塁。続く1番打者がしぶとく一・二塁間深く転がし、この間に三塁走者が還って同点。試合を振り出しに戻した。
この後、試合は両チーム一進一退の攻防を繰り広げ、延長タイブレーカーに突入。日本が勝ち越し点を奪い、逃げ切るかと思えば、オーストラリアも土壇場で「王者の底力」を発揮し、9回も互いに2点ずつを取り合い、一歩も引かぬまま、10回を迎えた。
迎えた10回表、日本はタイブレーカーの走者を二塁に置き、一死後、4番・岡崎建斗が再び右方向へ強くおっつけ、タイムリースリーベース。この試合2本目となるタイムリースリーベースで、日本に大きな5点目をもたらした。守っては、「投打のヒーロー」岡崎建斗が、その裏のオーストラリアの攻撃を三者凡退に抑え、長い“死闘”に決着。5−4で王者を再び撃破し、ついにファイナル進出を決め、ファイナルで待ち受ける「難敵」アルゼンチンと、優勝をかけ、今大会3度目の対戦に挑むことになった。
決勝トーナメント/ファイナル・ゴールドメダルゲーム(決勝) |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
アルゼンチン |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
1 |
3 |
5 |
日 本 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
(日本)●岡崎建斗(3回2/3)・大串泰生(2回2/3)・河野拓郎(2/3)−山内直人 |
実に今大会3度目の戦いとなる両者の対戦。ホスト国・アルゼンチンが「世界一」となる瞬間を一目見ようと、スタジアムには6000人を超える観客が押し掛け、決勝はまさに“南米特有のリズム”に包まれた異様な雰囲気の中、開始された。
日本の先発投手は、先程ほんの30分前に延長10回を投げ抜き、死闘を終えたばかりの岡崎建斗。自慢のライズボールを酷使し、指先の皮はもう何重にも剥がれ落ち、限界をとうに超えていたが、今大会「日本のヒーローとなった男」に、このファイナルもすべてを託した。序盤は、その岡崎建斗が限界を超えたピッチングながら、コーナーを丁寧に突き、アルゼンチン打線のバットの芯をうまく外して、3回まで無失点。試合は両チーム無得点のまま、中盤4回へと入った。
迎えた4回表、守る日本は一死から四球で出塁を許すと、次打者を打ち取り、二死までこぎつけたところで、痛恨のタイムリースリーベースを浴び、ついに失点。ここまでコーナーを丁寧に突いてきた、岡崎建斗のアウトコース低めを狙ったローライズが無情にもベルト線に入り、痛打され、痛い先制点を奪われた。こうなると、流れは一気にアルゼンチンへ。6000人を超える超満員の観客の割れんばかりの声援を力に変え、6回表、7回表には、代わった大串泰生から立て続けに4点を奪い、優勝をグッと引き寄せた。
何とか反撃に出たい日本も、最後まで「機動力」を使った攻撃でアルゼンチンの守備を崩しにかかったが、要所でつかまえることができず、完封負け。この日トリプルヘッダーを戦い、王者・オーストラリアを再び撃破する等、まさに限界を超えた戦いを見せたが、あと一歩及ばず、準優勝という形で大会を終えた。
今大会、「世界一」に輝いたホスト国・アルゼンチンの勢いは実にすさまじいものがあった。アルゼンチン戦では、毎試合スタジアムが超満員の観客で埋め尽くされ、その数は常に4000人、5000人を数える。また、今大会に向けた選手の強化についても、熱の入れようはすさまじく、代表チームの選考会には200人〜300人の選手たちが参加。その中から選りすぐりの「精鋭」が選ばれたとも聞く。一つのイベントの成功に向けて、また目の前の目標に対して、燃えたぎるほどの情熱を注ぎ、一丸となれる姿。敗れはしたが、今大会のアルゼンチンの戦いぶりには、心から敬意を表したい。また、今大会を戦い抜いた日本代表の選手たちにも、この経験を必ずや、未来につなげてほしい。彼らは間違いなく、日本ソフトボール界の「宝」である。その「宝」を、我々は今後もしっかりと見守り続け、育てていかなくてはならない。彼らの“ソフトボール”は、この先もずっと、続いていくのだから……!
決勝トーナメント・セミファイナル
アルゼンチン戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
2B |
溝口 聖 |
早稲田大 |
14 |
2 |
SS |
藤原雄歩 |
中京学院大 |
21 |
3 |
DP |
下伊倉優斗 |
YKK |
3 |
4 |
1B |
朝長聖斗 |
Neo長崎 |
20 |
5 |
RF |
湯浅拓人 |
日本体育大 |
1 |
6 |
C |
山内直人 |
日本体育大 |
7 |
7 |
P |
河野拓郎 |
日本体育大 |
16 |
8 |
SF |
清水洸佑 |
デンソー |
22 |
9 |
LF |
西森圭祐 |
国士舘大 |
23 |
FP |
3B |
高野晃平 |
日本体育大 |
8 |
※選手交代 |
イニング |
|
3回裏 |
投手交代 |
河野OUT→奥永拳也(御調高)IN |
決勝トーナメント・ブロンズメダルゲーム
オーストラリア戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
2B |
溝口 聖 |
早稲田大 |
14 |
2 |
SS |
藤原雄歩 |
中京学院大 |
21 |
3 |
DP |
大串泰生 |
大村工業高 |
13 |
4 |
1B |
朝長聖斗 |
Neo長崎 |
20 |
5 |
C |
山内直人 |
日本体育大 |
7 |
6 |
RF |
湯浅拓人 |
日本体育大 |
1 |
7 |
SF |
清水洸佑 |
デンソー |
22 |
8 |
P |
岡崎建斗 |
明徳義塾高 |
17 |
9 |
LF |
西森圭祐 |
国士舘大 |
23 |
FP |
3B |
高野晃平 |
日本体育大 |
8 |
※選手交代 |
イニング |
|
6回表 |
代走 |
岡崎OUT→植田晋伍(環太平洋大)IN 6回裏、岡崎が再び投手の守備へ |
7回表 |
代打 |
湯浅OUT→奥永拳也(御調高)IN 出塁後、湯浅が再出場し、走者へ |
10回表 |
代打 |
清水OUT→下伊倉優斗(YKK)IN 10回裏、清水が再びセンターの守備へ |
決勝トーナメント・ゴールドメダルゲーム
アルゼンチン戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
2B |
溝口 聖 |
早稲田大 |
14 |
2 |
SS |
藤原雄歩 |
中京学院大 |
21 |
3 |
1B |
朝長聖斗 |
Neo長崎 |
20 |
4 |
P |
岡崎建斗 |
明徳義塾高 |
17 |
5 |
DP |
大串泰生 |
大村工業高 |
13 |
6 |
SF |
清水洸佑 |
デンソー |
22 |
7 |
C |
山内直人 |
日本体育大 |
7 |
8 |
RF |
湯浅拓人 |
日本体育大 |
1 |
9 |
LF |
西森圭祐 |
国士舘大 |
23 |
FP |
3B |
高野晃平 |
日本体育大 |
8 |
※選手交代 |
イニング |
|
4回表 |
投手交代 |
岡崎OUT→大串泰生(大村工業高)IN |
|