男子日本代表投手陣の「柱」飯田邦彦投手に
世界選手権への“意気込み”を
含め、話をうかがった

持ち味は“日本最速”を誇る速球
MAXは120km/h後半をたたき出す!

第10回世界選手権準優勝の実績を持ち
今回で3度目の世界選手権出場となる

2007年に開催された第1回ISFワールドカップでは
決勝でアメリカを下し、優勝投手に輝く
(画像中央)

パシフィックインターナショナル
メンズシリーズには3度出場

日本代表チームの「兄貴分」として信頼も厚い


日本代表では今回最年長の飯田投手
今大会にソフトボール人生のすべてをかける

その「右腕」が世界の舞台で唸りをあげる!

 

 

 


●男子日本代表・第12回世界選手権直前レポート
男子日本代表・飯田邦彦投手インタビュー

 今回、日本代表投手陣のエース、チームの「柱」として期待される飯田邦彦投手(いいだ くにひこ/日新製鋼)。今年で37歳を迎え、日本代表チームでは最年長となるが、今でもその右腕から繰り出される速球はアベレージで120km/h、MAXは120km/h後半をたたき出し、日本国内では“最速”を誇る。
 前回、2004年に開催された第11回世界選手権以降は、日本代表チームの頼れる“兄貴分”としてこれまでプレーを続けてきた。今大会が自身3度目の世界選手権出場となり、年齢的にも最後となるかもしれない「世界一を決める戦い」に、これまでのソフトボール人生“すべて”をかける覚悟だ。
 日本代表での経歴は、1998年に開催された第6回アジア選手権(フィリピン・マニラ)での優勝を皮切りに、2000年の第10回世界選手権(南アフリカ・イーストロンドン)では“準優勝”という快挙を成し遂げ、その後、2004年の第11回世界選手権(ニュージーランド・クライストチャーチ)に2大会連続で出場。2007年に開催されたISFワールドカップ(チェコ/プラハ)では、日本の“エース”として活躍。決勝でアメリカを下し、記念すべき第1回大会の優勝投手となり、ニュージーランド、オーストラリアら世界の強豪国が集うパシフィックインターナショナルメンズシリーズにも3度出場。日本代表での「経験」、「実績」を含め、今回の第12回世界選手権で、日本が悲願の「世界一」を勝ち取るための“絶対的存在”であり、その右腕に多くの人々の期待がかかっている。
 直前に迫った世界選手権に向けて、今回、日本代表の投手陣を引っ張る飯田邦彦投手は、その胸の内にどのような“熱い思い”を秘めているのか。今大会への意気込みも含め、聞いてみた。



Q1.いよいよ「決戦の時」が迫ってきました。まずは、今大会に向けての“意気込み”をお聞かせ下さい。

 今大会、日本代表として3度目の世界選手権出場となるのですが、“意気込み”というか、あまりそこまで気負いこんだ「思い」は正直言ってありません(笑)
 今まで自分が貫いてきたスタイル、すべてをソフトボールに捧げてきたという「思い」を信じて、今回もいつも通り、自分らしいプレーができればと思っています。

Q2.飯田投手は日本代表投手陣の「柱」として今大会に臨まれるわけですが、今、チームで置かれている立場を踏まえて今大会めざしていること、また、その役割をどのように感じていますでしょうか。

 日本代表の中では、年齢的にも今年で37歳を迎え、ベテランであることは自覚しています。本来なら周りに人一倍気を配り、年長者として様々な役割をこなさなければならないのかもしれませんが、私にとって、今回の世界選手権がおそらく最後になると考えています。
 そういったこともあり、今大会はやはり自分の「スタイル」にこだわっていきたいですね。まずは、自分のベストピッチングをし、チームに貢献する! あまりいろんなことを考えすぎて、自分を見失いたくないんです。やはりプレーで見せて、背中で見せて、他のメンバーを引っ張っていきたいと思います。
 「力で押す」自分のスタイルで、真っ向から世界に挑むつもりです。とにかく後悔だけはしたくないですね。

Q3.選手選考に関しては、5月に実施された第1次国内強化合宿を最終選考の場として、世界選手権代表選手17名が決定されたわけですが、今回の日本代表チームは、飯田投手から見てどのようなチームと感じていますか。

 これまで私が経験してきた日本代表チームの中で、最も選手間のコミュニケーションが図れているチームだと思います。
 これまでの日本代表は、どちらかというと年長者に絶対的なチームの柱がいて、若い世代の選手たちは上についていっているだけでしたから。チームのまとまりといった点では、今回のチームが一番かもしれません。そういった意味では、個々の選手がそれぞれに“力”を発揮しやすい環境が、日本代表の中に年々できてきたのかもしれません。

Q4.世界選手権4連覇を狙う王者・ニュージーランドをはじめ、前回準優勝のカナダ、成長著しい強豪・オーストラリアなど、今大会も日本の前には「強敵」が立ちはだかります。この強豪国を打ち破るための秘策は何かありますか。

 秘策はこれといってありません(笑)。ニュージーランドに関しては、緩球を使ったピッチングが有効だということを耳にしていますが、基本的なピッチングスタイルは自分の中で変えるつもりはありません。もちろん、いろんな情報を頭に入れた中で戦うつもりですが。やはり、自分の持ち味は「力」でどんどん押していくことだと思っているので、そのスタイルを最後まで貫きたいです。本来のピッチングで勝負しないと、どうしても悔いが残りますからね。

Q5.飯田投手は、これまで「日本代表」として数多くの国際大会・海外強化遠征を経験し、常に“世界トップレベルのソフトボール”を肌で感じてこられたと思います。今、男子の世界においての世界のソフトボールとは、どのようなものでしょうか。

 私が、これまで経験してきた多くの国際大会・海外強化遠征を通じて感じることは、世界の強打者たちは空振り(三振)が少ないということです。また、選球眼も良く、ボール球にはまず手を出してきません。また、どのコースにも対応し、強く振ってきます。投手にとってこれほど嫌なものはないですが……。
 とにかく、なかなか三振が取れないという印象が強く残っています。

Q6.飯田投手が思う「日本代表」とは、どのようなものですか。また、どうあるべきだとお考えでしょうか。

 日本リーグに所属していない私にとって、まさにこれまでのソフトボール人生を支えてきたモチベーションの一つというか、本当に「大きな支え」であったと思います。平成10年に、日本リーグから脱退した私の所属チーム(日新製鋼)は、現在日本リーグのチームに所属している他の選手たちに比べ、明らかに年間での試合数が少ないという現実があります。毎シーズンのメインの大会は、7月〜10月の間に開催される全日本実業団選手権、全日本総合選手権、国民体育大会の3つしかありませんから、トップレベルのモチベーションを保ち、コンディションを維持し、自分自身のパフォーマンスをさらに向上させていくという点では、正直厳しいものがありました。
 私にとって、「日本代表」とはトップレベルのソフトボールプレーヤーをめざしていくための最も大きな目標であり、自分自身のソフトボールに対する“情熱”をかき立ててくれる大切な場所でした。特に、前回の第11回世界選手権からともに切磋琢磨してきた浜口辰也投手(ホンダエンジニアリング)、村里和貴投手(デンソー)の存在は、私にとって本当に大きかったと思います。彼らとは、良きライバルでもあり、互いの考えをぶつけ合える仲間でもありますから。本当に日本代表での活動を通して、様々なことを経験しましたし、日本代表というものがなければ、今の自分はないと思っています。

Q7.最後に、ソフトボールを愛し、将来「日本代表」をめざす若い世代の選手たちへ、飯田投手からメッセージをお願いします。

 私自身、これまで「ソフトボール」という競技に正面から向き合ってきましたが、同時に自分自身の身体にも向き合ってきました。もちろん、ソフトボール選手としてのトップレベルの技術というものは必要不可欠なのですが、より上をうえをめざしていくとなった場合には、現在の自分をあらゆる面で「進化」させていかなければなりません。そういったことから、技術練習以外の日々のトレーニングにも力を入れてきましたし、そのトレーニングが今の自分のパフォーマンスを支える原動力になっていると思っています。
 私自身の中では、以前に日本代表でともにプレーした宮平永義投手(過去3度の世界選手権出場/琉球泡盛残波)に強く影響を受けました。自分自身を進化させていくために、いかに日頃の意識、日々のトレーニングの積み重ねが大切かということを学んだように思います。
 地道な鍛錬、努力は必ず結果に現われてきます。今、ソフトボールをしている若い世代の選手たち、日本代表の選手たちを含めて、やはり一人ひとりがもっと「自分と向き合う」という意識を持ち、自らを進化させ、日々限界へと挑戦してもらいたいと思います。

────今回はインタビューにご協力いただき、ありがとうございました!