第41回日本男子ソフトボール東日本リーグの最終節となる第3節が、10月13日(土)・14日(日)の両日、宮城県東松島市・鷹来の森運動公園において開催された。
最終節となった今節は、東日本リーグ制覇、そして決勝トーナメント進出をかけ、全8チームが2日間にわたり熱戦を展開。熾烈なサバイバルの結果、前節まで通算9勝1敗と単独首位に立っていたトヨタ自動車が、通算成績を11勝3敗まで伸ばし、初の東日本リーグ制覇を達成。昨年味わった最下位の「屈辱」をバネに、今シーズンは江口久雄新監督のもと、開幕からミラクルな戦いを続け、一気に頂点へと上り詰めた。
前節(第2節)終了時点で通算9勝1敗。ここまで圧倒的な強さを発揮し、初の「東日本リーグ制覇」に向け、絶好な位置につけるトヨタ自動車は、今節初戦となったデンソー戦にいきなり苦戦。初回、中嶋洋章のタイムリーと、押し出しで2点を先制し、幸先の良いスタートを切ったかと思われたが、その裏、先発・木原道哲があっさりとデンソー打線につかまり、3失点。あっという間に逆転を許すと、2回裏にも自らの制球の乱れからリズムを崩し、タイムリーを浴びる悪い流れに陥り、立て続けに失点。5回裏にもダメ押しとなる2点を奪われ、2−8で完敗。第1節、第2節と躍進するチームを引っ張ってきた左腕に、なかなかエンジンがかからず、次戦の埼玉県庁クラブ戦でも木原道哲が序盤から力投を続けながら、終盤相手打線につかまり、0−5の完封負け。前節までの戦いから一転して、初日は連敗を喫し、一時は優勝に黄色信号が灯る展開となった。しかし、このままズルズルといかないのが今シーズンのトヨタ自動車。2日目、まず豊田自動織機戦に、先制点を奪われながらも、濱口寿二の2打席連続本塁打などで逆転に成功。6回表に同点に追いつかれはしたが、土壇場の7回裏、「切り込み隊長」山本淳がライト線へサヨナラタイムリーを放ち、5−4で打撃戦に勝利。最終戦となったYKK戦でも、二転三転の激しい打撃戦となり、終盤5回裏、江口真史のタイムリーなどで勝ち越し、7−4で勝利。今節を2勝2敗で終え、最終成績を11勝3敗まで伸ばし、2位・岐阜エコデンSCのこの日の試合結果を待たずして(2位・岐阜エコデンSCが最終日に連勝し、同率で並ばれたとしても、直接対決でトヨタ自動車が連勝しているため、リーグ規定によりトヨタ自動車の順位が上になる)、優勝を決めた。
2004年に東西に分かれてのリーグ制となって以来、はじめて東日本リーグを制したトヨタ自動車。今シーズンは昨年最下位に終わった悔しさをバネに、指導体制も一新され、かつて日本代表にも名を連ねた江口久雄新監督のもと溌剌としたプレーを展開。開幕から最終節まで、チーム一丸となり、「勝利への執念」を見せ続けた。その中でも、2年目となる左腕・木原道哲が大きく成長。2009年、岡豊高校(高知)時代にインターハイを制し、早くから活躍を期待されていた若手のホープが、今シーズンは第1節でいきなりノーヒット・ノーランをやってのけるなど、躍動。右腕・濱口寿二とともに、“二枚看板”としてしっかりと試合を作り、任された試合では完投。投手陣の柱として「1本立ち」するまでに飛躍した。また、今年度ルール改正された投球規定をうまくピッチングフォームに活用。投手板からの蹴り出し、前方への踏み込みがより大きく、大胆になり、球速が大きくアップ。ライズ・ドロップの切れも鋭さを増し、その球には、打者の手元からさらに押し込んでくるような「力強さ」が加わっている。この木原道哲の成長、「投手力」の安定こそが、今シーズンのトヨタ自動車躍進につながった大きな要素であったといえるだろう。決勝トーナメントでは、破壊力のある打線を売りにする西日本リーグの強豪を相手に、木原道哲がどのようなピッチングを展開するのか。トヨタ自動車の決勝トーナメントでの戦いが注目される。
前節終了時点で通算7勝3敗。星2つ差で首位・トヨタ自動車を追いかける岐阜エコデンSCは、今節初戦のデンソー戦に、延長9回タイブレーカーにもつれ込む熱戦の末、8−6で勝利。白星スタートを飾ると、次戦の埼玉県庁クラブ戦でも、初回に鈴村和正のタイムリーと、嶋田智希のスリーランでいきなり4点を先制するなど、5−1で快勝し、連勝。最終日も、逆転優勝を信じて豊田自動織機に8−0、YKKに8−4と連勝し、今節4連勝と猛チャージをかけたが、追いかける首位・トヨタ自動車がこの日の2試合に連勝したため(岐阜エコデンSCが通算11勝3敗で並んでも、直接対決でトヨタ自動車に連敗しているため、リーグ規定によりトヨタ自動車の順位が上となる)、最終的に「あと一歩」及ばず、2年連続東日本リーグ2位で、決勝トーナメントへ進出することになった。現役日本代表の横山拓、元日本代表の枦山竜児、鈴木周平を擁する強力打線は、今節も4試合で計29点を叩き出すなど破壊力抜群。決勝トーナメントでは、坂本俊行、嶋田智希の「二枚看板」がどこまで安定したピッチングを展開できるか。2年連続東日本リーグ2位という結果にも示された通り、チーム力は年々着実に上がっている。投手陣の奮起次第では、決勝トーナメントでの優勝も決して夢ではないだろう。
決勝トーナメント進出をかけた3位、4位争いは、ホンダエンジニアリング、デンソー、埼玉県庁クラブがともに通算8勝6敗で並び、三つ巴となる展開となり、最後まで熾烈を極めた。ともに通算6勝4敗で最終節を迎えたホンダエンジニアリングとデンソーは、今節初日を同じく1勝1敗で終え、2日目に激突。決勝トーナメント進出に向け、「生き残り」をかけた両者の直接対決では、デンソーが初回、2回表に1点ずつを挙げ、立ち上がりに2点をリード。しかし、ホンダエンジニアリングが3回裏、黒田友也のツーランで一気に同点に追いつくと、続く4回裏にも大類恭平がレフトへソロ本塁打を叩き込み、勝ち越しに成功。この1点のリードを先発・浅野公太が最後まで守り抜き、ホンダエンジニアリングが、まず4強生き残りをかけた大一番を制した。
4強入りを争うライバルとの直接対決に敗れ、痛い1敗を喫したデンソーを横目に、さらにこの順位争いに割って入ったのは、埼玉県庁クラブ。前節終了時点で通算5勝5敗と、今節の戦い次第で「4強滑り込み」の可能性を残していた埼玉県庁クラブは、初日、まず首位を走るトヨタ自動車と対戦。0−0で迎えた5回表、一死満塁のチャンスで祝弘樹がセンターへ特大の満塁アーチを放つなど、5−0で快勝。次戦の岐阜エコデンSC戦には1−5で敗れたものの、2日目、まず大阪グローバル戦に、横田将和の2打席連続本塁打を含む計5本の本塁打を浴びせる猛攻をしかけ、11−4の圧勝。2年連続の決勝トーナメント進出を果たすために、次戦での勝利が「絶対条件」とされる状況の中、最終戦となったホンダエンジリングとの対戦に臨んだ。勝てば決勝トーナメント進出が決定。負ければ決勝トーナメント進出を逃す運命の一戦となったホンダエンジニアリング戦では、2回表にまず1点を先制。4回表には、佐々木康仁、祝弘樹のタイムリーなど5安打を集中し、一挙5点を追加。リードを広げると、終盤6回表、最終回の7回表にも、着々と追加点を挙げ、11−6で勝利。最終的に今節3勝1敗、通算8勝6敗まで星を伸ばし、ホンダエンジニアリング、デンソーと同率で並ぶ位置に浮上し、この同率3チームで順位が争われた結果(ホンダエンジニアリング、デンソー、埼玉県庁クラブが、3チームともに通算8勝6敗の同率で並んだため、リーグ規定により、該当チーム同士の直接対決の結果で順位を決定。それぞれ各チームとの対戦成績を総計すると、ホンダエンジリングが3勝1敗、埼玉県庁クラブが2勝2敗、デンソーが1勝3敗となる)、ホンダエンジニアリングの3位、埼玉県庁クラブの4位が決定。デンソーは、最終戦となったホンダエンジニアリング戦での黒星が結局大きく響く形となり、5位に終わり、2004年に東西に分かれてのリーグ制となって以来、はじめて決勝トーナメント進出を逃すことになった。
この他、最終節では、豊田自動織機が初日にホンダエンジニアリングを5−2で破るなど、連勝を飾り、最終日へ何とか4強入りの可能性を残したものの、その後連敗を喫し、2勝2敗。通算5勝9敗の6位で今シーズンを終了し、2年連続で決勝トーナメント進出を逃した。YKKは、最終節を1勝3敗で終え、通算3勝11敗。トヨタ自動車、岐阜エコデンSCら上位チームと互角の戦いを見せたが、結局、シーズン全体の流れを変えるような「金星」を挙げることができず、7位に終わった。今シーズンから、東日本リーグ参入でのリーグ復帰を果たした大阪グローバルは、最終節では元気なく、無念の4連敗。“切り札”として呼び寄せ、前節2勝を挙げた「助っ人」ターニー・リチャードソンが、またしてもシーズン途中で帰国、戦線離脱するというアクシデントも重なり、大敗の連続を避けられず、通算2勝12敗の最下位で今シーズンを終えることになった。
第41回日本男子ソフトボール東日本リーグ、各チームの最終成績は下記の通り。西日本リーグの上位4チームとともに「真の日本リーグチャンピオン」の座が争われる第41回日本男子ソフトボールリーグ決勝トーナメントは、11月17日(土)・18日(日)の両日、愛知県豊田市・豊田市運動公園ソフトボール場において開催される。
今シーズンの決勝トーナメントでは、東西両リーグの8強がどのような戦いを繰り広げてくれるのか。男たちの「最後の決戦」に注目したい。
第41回 日本男子ソフトボール東日本リーグ 最終成績 |
順位 |
チーム名 |
勝 |
敗 |
優勝 |
トヨタ自動車 |
11 |
3 |
準優勝 |
岐阜エコデンSC |
11 |
3 |
3位 |
ホンダエンジニアリング |
8 |
6 |
4位 |
埼玉県庁クラブ |
8 |
6 |
5位 |
デンソー |
8 |
6 |
6位 |
豊田自動織機 |
5 |
9 |
7位 |
YKK |
3 |
11 |
8位 |
大阪グローバル |
2 |
12 |
※※優勝・準優勝、また3位・4位・5位は、同率のため、リーグ規定により、該当するチーム同士の直接対決の結果で順位を決定
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