開催地:宮城県仙台市
大会期日:2008年7月25日〜7月27日




エキシビションゲーム行われる(7月25日/金)


仙台市の中・高校生を対象にクリニックを実施上野の快速球にビックリ!
表敬訪問終了後、記者会見を行う
仙台市から贈呈された扇子に大喜び!
 先のカナダ遠征で2つの国際大会(トライネーションズカップ、カナダカップ)で優勝を飾り、順調な調整ぶりを見せている女子日本代表は、北京オリンピック前、「最後の国際試合」となる「北京オリンピック壮行試合 in 仙台」に出場するため、7月24日(木)、仙台市入りした。
 翌25日(金)、この日は日本の試合はなかったが、午前中、軽い調整練習を行い、午前10時30分から仙台市内の中・高校生を対象に、クリニック(ソフトボール教室/技術講習会)を実施。高校生1チーム、中学生10チームの181名(指導者16名・選手165名)の参加のもと、約1時間にわたるクリニックが行われた。
 クリニックは、全体でウォーミングアップを行った後、バッテリー、内野、外野のポジション別に分かれて指導が行われ、憧れの日本代表選手に直接指導を受けるという「貴重な体験」に参加者は皆、目を輝かせていた。
 クリニック終了後は、参加チームごとに記念撮影。少し緊張した面持ちの中にも、嬉しさが滲み、何ともいえない幸せそうな表情を浮かべる参加者の姿が印象に残った。記念撮影終了後は、「北京オリンピックでは必ず金メダルを獲ってきてください!」「金メダル信じています!!」と大きな声でエールを送りながら、各チームが球場を後にし、女子日本代表の選手・スタッフの面々も北京オリンピックでの金メダル獲得へ向け、気持ちを新たにしていた。
 午後は、仙台市役所に表敬訪問。仙台市・奥山恵美子副市長らと面談し、ここでも金メダル獲得へ「熱いエール」を贈られ、表敬訪問終了後は同市役所で記者会見。(財)日本ソフトボール協会・尾崎正則専務理事(兼選手強化本部長)が、「4年前のアテネオリンピックの際にも、ここ仙台市で壮行試合を行っていただいた。そのときは銅メダルに終わったが、今度こそは一番よい色のメダルを必ずや獲得したい」と力強く金メダル宣言。壮行試合、そして北京オリンピックへ向けて、「強い決意」を示した。
 記者会見に臨んだ選手たちは、2つの国際大会で、オーストラリア、カナダといった北京オリンピックでメダルを争うと見られる「ライバル」を撃破し、北京オリンピック出場権を持つ台湾、ベネズエラに快勝しての優勝にも、「そこで出た課題をこの壮行試合で確認・修正し、北京オリンピックにつながる試合がしたい」と、まったく気を緩めるそぶりもなく、むしろ気を引き締め直し、「絶対に金メダルを獲るんだ!」といった気迫・気合がほとばしっていた。
 日本は7月26日(土)、18時からオランダと、27日(日)、同じく18時からカナダと壮行試合を行い、いよいよ「決戦の舞台」北京オリンピックへと向かうことになる。
 また、この日はオランダ対カナダのエキシビションゲームが行われた。試合結果は下記の通り。


7月25日(金)/エキシビションゲーム

  
  1 2 3 4 5 6 7
 オランダ 0 0 0 0 0 0 0 0
 カナダ 3 0 1 0 1 0 5

オ)●カンペン−フェンカー
(カ)○レギュラ・マッキン−カンプストン
〔本塁打〕マックリーン、サリング(カ)






日本、オランダに快勝!(7月26日/土)

 7月26日(土)、宮城県仙台市・仙台市民球場を会場に、女子日本代表の北京オリンピック壮行試合が行われ、日本はオランダと対戦。坂井、江本、染谷の3投手の継投でオランダ打線を無得点に抑え、終盤5回裏、6回裏に6本の長短打を集中し、4−0で快勝。詰めかけた3000人を超える大観衆の熱い声援に応え、北京オリンピックでの金メダル獲得へ向け、「確かな一歩」を踏み出した。


7月26日(土)/北京オリンピック壮行試合I

  
  1 2 3 4 5 6 7
 オランダ 0 0 0 0 0 0 0 0
 日  本 0 0 0 0 2 2 4

(オ)●ソーメルー・カンペン−フェンカー
(日)○坂井・江本・染谷−乾・峰
〔二塁打〕西山、佐藤、廣瀬(日)

▲5回裏、1番・狩野の犠牲フライで日本が先制!
▲2番・西山の二塁打で2点目
▲オランダに快勝! だが……めざすべき「頂」は高い
 日本の先発は坂井。坂井は開発中の新球(スライドしながら落ちる球)を試投しながら、オランダ打線を完全に封じ、5イニングを被安打2・無失点に抑え、北京オリンピックへ向け、「大きな収穫」を手にした。
 一方、課題の打線はオランダの先発・ソーメルーをとらえられず、4回まで無得点。ようやく5回裏、7番・廣瀬がセンター前ヒット。8番・乾が確実に送り、一死二塁。9番・藤本がショート内野安打でつなぎ、一・三塁とチャンスを広げると、1番・狩野がキッチリとセンターへ犠牲フライを打ち上げ、まず1点を先取。続く2番・西山がライトオーバーのツーベースを放ち、この回2点を先制した。続く6回裏には、一死から5番・三科が四球を選び、6番・佐藤、7番・廣瀬の連続ツーベースで2点を追加。4点のリードを奪い、勝利を決定づけた。
 守っては、6回表を江本、7回表を染谷がオランダ打線に得点を許さず、3投手の継投で完封勝ち。危なげのない試合運びで快勝した。
 ただ、投手陣を含めた守りには、まったく問題はなかったが、攻撃面ではエンジンのかかりが遅く、最終的に4点を奪ったとはいえ、課題の残る内容だった。特に、初回、2回と先頭打者が安打を放ち、キッチリと犠打でスコアリングポジションに走者を進めながら決定打を奪えず、4回まで無得点という試合展開には不満が残る。
 オリンピックのような「大舞台」では、「先取点」の持つ意味は非常に大きなものがある。この壮行試合が「オリンピック本番」を想定したものであるならば、初回のチャンスにクリーンアップが、もっと貪欲に、もっとガムシャラに、もっと泥臭く、「最初の1点」を獲りに行く「姿勢」を見せてほしかった。オリンピックにおける「先取点」の持つ意味、この「1点」が持つ意味を、真に理解しているならば、この試合の初回の攻撃は大いに反省せねばならない。
 オランダと日本の力関係を考えれば、この「1点」は勝負を決める「1点」である。強者と弱者が戦うとき、強者が先手を取れば、その時点でほぼ勝負の趨勢は決してしまう。だからこそ、その「最初の1点」を死に物狂いで獲りに行く必要があるのだ。
 オリンピックという大舞台では何が起こるか分からない。「番狂わせ」は起こり得る。しかし……「番狂わせ」を起こされたチームが、「金メダル」を手にすることなどできるわけがない。「番狂わせ」の可能性を極力排除し、確実に勝利をモノにしていくためには、常に先手を取り、リードを奪い、試合の主導権を決して相手に渡すことなく、試合を進めていくしかない。
 日本が北京で「金メダル」を獲りに行くのなら、さらなる「勝負への厳しさ」が必要である。一瞬でも隙を見せてはならない。オリンピックとは、世界の強豪たちが死力を尽くしてぶつかり合い、「真の世界一」を決める場所であり、舞台である。文字通り、「食うか食われるか」「やるかやられるか」そういう世界だ。その覚悟のない者に……勝利の女神は微笑まない。
 オリンピック参加国に連勝を続け、勝ち続けている今だからこそ、北京での「金メダル」へ向け、なお万全を期す必要がある。「やり直し」はきかない。「次の機会」は早くても2016年。今ここにいる選手たちが現役選手として再び出場機会を得られる可能性は限りなく低い。事実上の「ラストチャンス」。だからこそ……ほんの微細な問題点にもこだわらなければならない。金メダルを獲ることだができるチームだからこそ、「もうこれ以上はできない」という準備を行って、「オリンピック本番」を迎えてほしい。これだけの大声援を受けるチームだからこそ……「金メダル」を現実のものにしなければならない。また、それができる選手たちだと信じている。



北京オリンピック壮行試合I オランダ戦スターティングラインアップ

1番・ライト    狩野亜由美(豊田自動織機)
2番・ショート   西山  麗(日立ソフトウェア)
3番・センター   山田 恵里(日立ソフトウェア)
4番・レフト    馬渕 智子(日立ソフトウェア)
5番・セカンド   三科 真澄(ルネサス高崎)
6番・ファースト  佐藤 理恵(レオパレス21)
7番・サード    廣瀬  芽(太陽誘電)
8番・キャッチャー 乾  絵美(ルネサス高崎)
9番・DP     藤本 索子(レオパレス21)
DEFO/ピッチャー  坂井 寛子(太陽誘電)

※選手交代
6回表 坂井OUT→江本 奈穂(豊田自動織機)IN ※投手交代
 〃  乾 OUT→峰  幸代(ルネサス高崎)IN ※キャッチャーの守備に入る
7回表 江本OUT→染谷 美佳(デンソー)IN ※投手交代






日本、カナダにも快勝!
 最高の仕上がりで北京へ!!
(7月27日/日)


 7月27日(日)、前日に引き続き、宮城県仙台市・仙台市民球場で、北京オリンピック壮行試合が行われ、日本はカナダと対戦。前日を超える3550人の大観衆の大声援にも後押しされ、北京オリンピックでメダル争いを演じると見られる「当面のライバル」を相手に、馬渕、佐藤の本塁打を含む10安打を浴びせ、4−0と完勝。オリンピック前、最後の国際試合も勝利で飾り、最高の仕上がりで「オリンピック本番」を迎えることになった。

7月27日(日)/北京オリンピック壮行試合 II

  
  1 2 3 4 5 6 7
 カナダ 0 0 0 0 0 0 0 0
 日 本 1 0 3 0 0 0 4

(カ)●マッキン・マイアー−ラフター
(日)上野・江本・○染谷・坂井−乾
〔本塁打〕馬渕、佐藤(日)
〔二塁打〕馬渕(日)マシューズ(カ)


▲この日はメダル争いの当面のライバル・カナダと対戦
▲日本の先発は「世界一の投手」上野
▲馬渕、佐藤の連続本塁打でベンチも沸きかえった
▲仙台市・奥山恵美子副市長から激励の花束を贈呈され、
「必ずや金メダルを!」と大観衆に決意表明を行う斎藤
ヘッドコーチ。最高の仕上がりを見せ、北京へ乗り込む

 日本の先発は上野。日本が誇る「世界一の投手」は、予定の3イニングを一人の走者も許さぬパーフェクトピッチング。奪三振は1個と上野にしては少なかったものの、1球1球に明確な意図を感じさせる35球でカナダ打線を封じ込み、北京オリンピックへ向け、順調な仕上がりを見せた。
 課題の打線も、この日は前日のオランダ戦の「反省」をキッチリと生かし、初回に鮮やかな先制攻撃を見せた。1番・狩野はショートゴロに倒れたものの、2番・西山、3番・山田、4番・馬渕がいずれもセンターに打ち返す3連打。あっさり先取点を挙げると、3回裏には、1番・狩野のセンター前ヒット、犠打、内野ゴロで二死三塁とし、4番・馬渕、5番・佐藤が連続本塁打。この回3点を追加し、4点のリードを奪った。
 守っては、上野、江本、染谷、坂井と4人の投手すべてをつぎ込む盤石の投手リレーでカナダ打線に最後まで得点を許さず、完封勝利を収めた。
 これで日本は国際試合14連勝。トライネーションズカップの初戦でオーストラリアに敗れたのを最後に「破竹の快進撃」を続けている。しかも、メダル争いの「当面のライバル」カナダに3連勝。試合内容的にも圧倒し、「日本、強し!」の印象を植え付けたことは大きな意味がある。さらには、アメリカ、中国を除く北京オリンピック参加国、オーストラリア、カナダ、ベネズエラ、台湾、オランダを次々と撃破し、すべてに勝利を収めたことも、オリンピックを戦う上で大きなアドバンテージを得たといっても過言ではないだろう。
 しかし、これらの勝利が、北京オリンピックでの「金メダル」を保証するものになるかといえば……そこまで楽観できる状況にはなく、「現実」は甘いものではない。
 まず「最大のライバル」アメリカの存在がある。この連勝には対アメリカ戦の勝利は含まれていない。「史上最強の王者」アメリカを倒さない限り、金メダルはない。この現実から目を背けるわけにはいかない。
 そして、この日勝利したカナダも「3本柱」の一人であるロビン・マッキンはカナダカップ、この壮行試合で攻略したものの、「右のエース」ダニエル・ローリー、日本戦に実績があり、日本が苦手とする左腕のローラン・ベイ・レギュラは直近の国際大会での日本戦の登板はほとんどなく、まだ手の内をすべて見せてしまったわけではない。
 4年前、アテネオリンピックでしたたかな戦略を見せ、日本を徹底的にマーク。「打倒・日本」に照準を絞り、その戦略を見事に実践。日本を破って銀メダルを獲得したオーストラリアにも4大会連続のオリンピック出場を果たした「歴戦の勇者」ターニャ・ハーディング、メラニー・ローチが健在。この2人は現在、日本リーグでプレーしているだけに、日本の選手のことは熟知している。それだけに不気味な存在といえよう。
 ホスト国・中国も虎視眈々とメダルを狙っている。日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアに比べると、戦力的にはやや劣るものの、「地元の利」ホームゲームの有利さがある。どこの国ともまた違った大声援、独特の雰囲気の中での試合は、決して楽なものにはならないだろう。
 もちろん、ベネズエラ、オランダ、台湾も侮れない。これらのチームに星を落とし、「番狂わせ」を起こされるようなことがあれば、それはメダル争いからの「脱落」を意味することになる。
 北京の過酷な環境の中、世界の強豪を相手に勝ち続け、「頂点」に立つことは容易なことではなく、悲願の「オリンピック金メダル獲得」までの道のりは、間違いなく、厳しく、険しいものになる。しかし、アテネからの4年間、「この日のために」努力を積み重ねてきたのだ。その道がどんなに厳しく、険しいものであっても、戦い、勝ち抜いていくことでしか、「金メダル」へ辿り着くことはできない。
 ここからは「内容」ではなく、「結果」が問われる。どんな試合内容であれ、勝つことができれば、確実に一歩ずつ「金メダル」へ近づくことになる。どれだけ勝つことにこだわり、どこまで勝利に執着することができるか、それが問われることになる。逆に、どんなにすばらしい試合を展開しても、負けてしまえばそれまでである。
 人々の記憶に残るのは「金メダリスト」だけである。「伝説」は「金メダル」からしか生まれない。ソフトボールの未来のために、オリンピック競技復帰のために……北京での「勝利」すなわち「金メダル」が必要である。「夢」をつないでいくために……勝つしかない!


北京オリンピック壮行試合 II カナダ戦スターティングラインアップ

1番・ライト    狩野亜由美(豊田自動織機)
2番・ショート   西山  麗(日立ソフトウェア)
3番・センター   山田 恵里(日立ソフトウェア)
4番・レフト    馬渕 智子(日立ソフトウェア)
5番・ファースト  佐藤 理恵(レオパレス21)
6番・サード    廣瀬  芽(太陽誘電)
7番・DP     伊藤 幸子(トヨタ自動車)
8番・キャッチャー 峰  幸代(ルネサス高崎)
9番・セカンド   藤本 索子(レオパレス21)
DEFO/ピッチャー  上野由岐子(ルネサス高崎)

※選手交代
4回表 上野OUT→江本 奈穂(豊田自動織機)IN ※投手交代
 〃  DPの伊藤がファーストの守備に入り、ファースト・佐藤が打撃のみを行う。
5回表 江本OUT→染谷 美佳(デンソー)IN ※投手交代
7回表 染谷OUT→坂井 寛子(太陽誘電)IN ※投手交代